世界的に求められる女性活躍推進、日本の現状は?
前提として、「ジェンダー平等」は世界共通の目標です。SDGsの目標5である「ジェンダー平等を実現しよう」では、ターゲットの1つとして「政治、経済、公共分野でのあらゆるレベルの意思決定において、完全かつ効果的な女性の参画および平等なリーダーシップの機会を確保する」ことが掲げられています。
SDGsが発表された「国連持続可能な開発サミット」の成果文書では、SDGsについて、「これらは、すべての人々の人権を実現し、ジェンダー平等とすべての女性と女児のエンパワーメントを達成することを目指す」[1]と説明されており、ジェンダー平等は重要な目標の1つとして位置付けられています。
では、日本の現状はどうでしょうか。スイスの非営利財団「世界経済フォーラム」が発表した「ジェンダー・ギャップ指数」では、2023年の日本の総合順位は146ヵ国中125位でした。また、企業における管理的職業従事者の男女比、言い換えるなら「女性管理職比率」は133位ととくに低い順位になっています[2]。
これらの背景を踏まえると、ジェンダー平等は日本にとって重要なテーマであることが分かります。
女性活躍推進を求める、企業を取り巻く3つの市場
では、日本企業に女性活躍推進が求められる背景を、企業を取り巻く3つの市場(資本市場、商品市場、労働市場)の観点から考えてみましょう。
1. 資本市場(投資家との関係性)
近年、企業は女性活躍に関する目標や実績を公表することが求められるようになりました。たとえば、コーポレートガバナンス・コード[3]では、次の原則が示されています。
原則2-4「女性の活躍促進を含む社内の多様性の確保」
上場会社は、社内に異なる経験・技能・属性を反映した多様な視点や価値観が存在することは、会社の持続的な成長を確保する上での強みとなり得る、との認識に立ち、社内における女性の活躍促進を含む多様性の確保を推進すべきである。
また、2023年の3月期決算より、有価証券報告書における人的資本開示が義務付けられ、「従業員の状況」項目において、「女性管理職比率」「男性の育児休業取得率」「男女間賃金格差」の記載が求められるようになりました[4]。さらに、政府が発表した「女性版骨太の方針2023」では、プライム市場上場企業を対象に、「2030年までに、女性役員の比率を30%以上とすることを目指す」という方針が定められています[5]。
以上の背景から、投資家をはじめとするステークホルダーも、ガバナンスの観点として企業の女性活躍推進に目を向けています。
注
[3]: 株式会社東京証券取引所「コーポレートガバナンス・コード ~会社の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上のために~(2021)」
2. 商品市場(消費者との関係性)
昨今の消費者ニーズは、非常に速いスピードで複雑に変化しています。企業は多様化する消費者ニーズを捉え、それに合わせた商品・サービスを生み出し続けることが求められるようになりました。その実現のために、企業内にダイバーシティが必要ではないかと考えられています。
性別や国籍、年齢など表層的属性の多様性を指す「デモグラフィック・ダイバーシティ(人口統計学的多様性)」はもちろん、最近では、思考特性や職務経験、ワークスタイルといった認知的な多様性を指す「コグニティブ・ダイバーシティ」にも注目が集まっています。デロイトの研究では、「コグニティブ・ダイバーシティが進んだインクルーシブな組織は、イノベーションが20%高まり、リスクが30%下がる」ことが示唆されています[6]。
注
[6]: Juliet Bourke「Which Two Heads Are Better Than One? How Diverse Teams Create Breakthrough Ideas and Make Smarter Decisions」
つまり、これからの商品市場で顧客に選ばれ持続的に成長していくためには、ダイバーシティが必要と考えられており、その一環として女性活躍推進も注目されるようになりました。
3. 労働市場(従業員や求職者との関係性)
少子高齢化が進む日本では、労働人口が減少しています。その中で、企業が競争力を発揮し続けていくためには、従業員や求職者から選ばれ続ける必要があります。
人材の獲得・確保が難しい時代だからこそ、「結婚や出産などのライフイベントがあっても、女性社員に働き続けてほしい」「性別にかかわらず、ポテンシャルがある人材に管理職に就いてほしい」「活き活きと、生産性高く働いてほしい」と考える企業が増えています。