前編では、女性活躍推進が求められている背景を解説しています。ぜひご覧ください!
①must(やらねば)——女性社員は「昇進を期待されていない」と感じている
当社では、「must(やらねば)」「will(やりたい)」「can(できそう)」の3つの要素がかみ合ったときに、人の意欲が最大化されると考えています。これらの要素に対し、「女性社員本人はどのように考えているのか」「上司はどのようにコミュニケーションを図るべきか」「人事はどのように上司を支援するべきか」の3つの切り口で、女性社員の昇進意欲を育てるアプローチを考えていきましょう。
まず1つ目の要素は、「must(やらねば)」です。
テーマ1. 女性社員本人はどのように考えているのか
そもそも、「自分は昇進を期待されていない」と考えている女性社員は少なくありません。パーソル総合研究所の調査では、上司が「将来の幹部候補として期待をかけてくれる」と答えた女性部下は23.2%で、男性部下よりも低い割合でした[1]。女性社員の多くは、「現場の戦力として職責に見合った期待はされているが、将来の幹部候補としては期待されていないと感じている」と捉えており、それでは昇進意欲が湧かないのも無理はありません。
注
[1]: パーソル総合研究所シンクタンク本部「女性活躍推進に関する定量調査」
ではなぜ、多くの女性社員は「期待されていない」と感じているのでしょうか。大きく3つの原因が考えられます。
- 原因① 会社は女性管理職比率の向上を重視しているが、上司が女性管理職を育成しようと思っていない
- 原因② 上司が、自分の部下の女性社員は管理職にはなれないだろうと考えている
- 原因③ 上司は管理職になってほしいと期待しているが、そのことを女性社員に伝えられていない
テーマ2. 上司はどのようにコミュニケーションを図るべきか
では、これら3つの原因に対し、上司はどのようなコミュニケーションへと変化すればよいのでしょうか。原因①②に関しては、上司自身の意識を変える必要があるため、後述する「人事はどのように上司を支援するべきか」で対策をお伝えします。原因③に関しては、「上司が期待をかけること躊躇しているパターン」と「上司が期待を伝える機会がないパターン」の2つが考えられるでしょう。
- 「上司が期待をかけること躊躇しているパターン」の場合
- 上司に「女性社員に期待を伝えると、逆にプレッシャーになるのではないか」というアンコンシャス・バイアス(無意識の思い込み)がかかっている可能性があります。本当に管理職になることを期待しているのであれば、現状より一段階上の期待をかけるべきであり、むしろそうしたほうが、女性社員の成長がより促されます。上司としては、アンコンシャス・バイアスに陥っていないか自問しながら、意識的に高い期待をかけることが大切です。
- 「上司が期待を伝える機会がないパターン」の場合
- 評価面談や1on1などの機会を積極的に活用することが重要です。とくに、評価面談は比較的多くの会社で実施されているので、活用しやすいのではないでしょうか。たとえば、評価面談では単に評価を伝えるだけでなく、「具体的にどのような役割を担ってほしいのか」「なぜ他の人ではなく、あなたに期待しているのか」といったことを明確に伝えるようにしましょう。
現在管理職に就いている人の中には、「最初はリーダーになろうと思っていなかったが、周囲からお願いされたのでやってみたら、結果的にできた」という経験がある人は少なくありません。キャリアは周囲からの期待をきっかけにつくられることも多いため、一段階上の期待を意識的に伝えてほしいと思います。
テーマ3. 人事はどのように上司を支援するべきか
では、人事ができることを考えていきましょう。
原因①で示した「会社は女性管理職比率の向上を重視しているが、上司が女性管理職を育成しようと思っていない」場合、人事には何ができるでしょうか。まずは会社として、対外的に女性管理職比率の目標を掲げるだけでなく、社内にも同じ目標を共有し、号令をかけることが重要です。そのために人事は、各部門の上司と積極的にコミュニケーションを図り、目標や意義を伝えていく必要があります。
原因②で示した「上司が、自分の部下の女性社員は管理職にはなれないだろうと考えている」場合は、上司の決めつけを解かなければいけません。このような上司は、たとえば「管理職は最後に帰るものだ」「管理職には厳しさが必要だ」といった固定観念を持っており、「だから女性社員に管理職は難しいだろう」などと考えていることがあります。人事としては、マネジメントにはさまざまなスタイルがあることを伝え、多様な管理職像を描けるようにすることが重要です。
原因③で示した「上司は管理職になってほしいと期待しているが、そのことを女性社員に伝えられていない」場合も、人事として支援できることがあります。たとえば、360度サーベイを実施し、上司や周囲からの期待を可視化することで、本人に期待が伝わりやすくなります。ある会社では、360度サーベイ実施後のフィードバックで、「私はこんなに期待されていたのだ」といううれしさで涙を流す女性社員が見られました。期待の可視化は効果のある取り組みだといえるでしょう。