コーン・フェリーとグロービスは、日本の大手上場企業を対象に「経営幹部のサクセッションに関する実態調査」を実施した。
調査結果のサマリーは次のとおり。
- 経営幹部のサクセッションについて、6割は指名(諮問)委員会、もしくは経営会議の公式アジェンダとして採用し、ガバナンス・経営上の優先課題として取り組んでいることが分かった。ただし、現任者に後継者候補をリスト化させることにとどまる企業も多く、後継者の確保に課題感を持っているようだ。92%の企業が、今後取り組みを強化すると回答した
- サクセッションの前提となる、経営チーム体制と機能の設計に関する課題感も多く聞かれた。深い議論とスピード感を伴う意思決定がしやすいよう、経営チームのポジション数を絞る動きが見られる。一方、資本市場からの事業ポートフォリオ改革に対する要請に応えることを優先し、CxO体制に移行する企業も増えるだろうと同社は予想している
- 約半数の企業が、経営幹部サクセッションに共通の人材要件を適用するが、ポジション毎ごとの要件を用意する企業も増えている。ただし、役割・職務にとどまることが多く、求められる能力・経験・資質まで定義している企業は限定的であった。特に、これまでは事業責任者ポジションのサクセッションを優先してきた企業が多く、CxO・機能トップの後継者育成や採用に活用できるポジション要件の整備は進んでいないようだ
- 全てのCxO・機能トップポジションに共通する必須要件は、「高い専門性」「ビジネス感覚・経営感覚」「グローバルの視野」「変革推進力」だという。加えて、学びの俊敏性(ラーニングアジリティ)は、時代が経営幹部に求める資質と認識されているようだ
- 後継候補者の育成手法として、最も活用されているのは「修羅場経験の付与」で、次いで「社外のリーダーシップ研修への派遣」が続く。同調査では、「社外の専門家によるコーチング」と「外部専門家によるアセスメント」を活用する企業はそれぞれ4割弱にとどまった。一方、採用する企業からは、候補者の内省・成長メカニズムの埋め込みと、外部水準を意識した育成の両面における効果性が語られたという
- CxO・機能トップの育成方針として、半数以上の企業が「損益責任を伴う事業経営まで積ませたい」と回答した。大手欧米企業20社において、P&L責任を伴う事業責任経験を持つCxOは14%にとどまるため、大きな乖離が見られた。資本市場からの期待と社会的要請がさらに高まり、投資家・株主に直接対応する機会が増えることを想定すると、市場水準を超えた専門性と経営感覚を持つ候補者確保の重要性は増していくと同社は述べている
- また、「経営幹部ポジションへの外部採用を検討しない」と回答したのは13%にとどまり、生え抜き以外の経営幹部を持つことへの抵抗感は薄れている。しかし、60%は「社内に次期後継者が見当たらない場合のみの活用」と回答した。経営人材を社外から取り込み議論の質と意思決定の精度を高めた企業では、アシミレーション(相互理解の深化)や外部専門家によるワークショップなど、多様性を強みに変換するための追加の努力をしていることが確認されたという
なお、同調査の詳細は同社が発表したPDFで確認できる。
Webアンケート調査概要
- 調査対象:代表取締役、取締役、CHRO・人事機能長、経営幹部サクセッション業務担当者など
- 調査期間:2023年11月~12月
- 有効回答数:105
追加ヒアリング調査概要
- 調査対象:代表取締役、取締役、CHRO・人事機能長、経営幹部サクセッション業務担当者
- 調査期間:2024年1月~3月
- 回答企業:17社
-
参加企業:開示を許諾企業のみ掲載(五十音順)
- アサヒグループホールディングス
- 味の素
- 江崎グリコ
- SMBC日興証券
- オムロン
- オリンパス
- キヤノン
- 日本たばこ産業(JT)
- 住友重機械工業
- セガサミーホールディングス
- 日本電気(NEC)
- PHCホールディングス
- 富士通
- 村田機械
- レゾナックホールディングス
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