人と環境にしっかり投資したい
アドテクスタジオのオフィスリニューアルプロジェクトは、担当役員からの「人と環境にしっかり投資したい」というオーダーから始まりました。サイバーエージェントのようなWeb系企業は在庫を保有しないので、利益の還元先は「人材と環境」になります。当時は部署単体の利益が伸びてきたタイミングであり、それを社員に還元したいという意向から、オフィスのリニューアルプロジェクトが決まりました。
近年、Web系企業ではオシャレなオフィス空間を構えるところが増え、メディアにもよく取り上げられています。Web系企業は若いメンバーが多く、オフィスへの投資は海外含め業界のトレンドであることに加え、前述したように在庫を保有しないため、人と環境といった働きやすさの改善に投資できるためだと考えられます。
私は経営管理を主務としているため、オフィスの企画設計は未経験でしたが、「せっかく担当するのならばかっこいいだけじゃなくて、経営や開発スピードに確かな効果が出るオフィスを作りたい」と考え、当時、組織の強化ポイントであった「エンジニア同士の横のつながり強化」「最新技術・テクノロジーへの挑戦」「アドテクマーケットの知識強化」にもアプローチすることにしました。
かっこいいだけのオフィスはエンジニアにとって意味がない
オフィスプロジェクトチームには、現場のエンジニアにも参加を呼びかけました。集まったエンジニアは、最高技術責任者、女性のテックリードエンジニア、若手、事業責任者、エンジニアリングマネージャーの5名。同じエンジニアでも職種や働き方が違えば気づく点も違うため、異なる役割を担うメンバーに声をかけました。
オフィスプロジェクトに参加してくれたエンジニアは、みな口を揃えてこう言いました。
「かっこいいオフィスはうれしい。でも、ただオシャレとか、奇をてらっただけのオフィスって、実はエンジニアは求めてない。本当に使えるオフィスじゃないとやっぱり意味がない。ただ、オフィス環境が開発効率やチームのコミュニケーションに影響することは確実だと思っているから、プロジェクトチームに参加したい」
本当に使えるオフィスをつくろう。内装デザインは最後に詰めればいい。開発シーンを繰り返しイメージしながら、次のような点を議論していきました。
- 開発メンバー本当に必要なエリアは?
- どういったエリアで、どういう風にどのようにメンバーが働いている状態がよいのか?
- 各エリアでどのようなコミュニケーションが生まれたらよいのか?
新オフィスの設計〜クリエイティビティが復活する空間に
議論の結果、通常業務を行うデスクが並ぶ「執務エリア」のすぐ横、自席から歩いて30秒とかからない場所に、開発に集中できる「クリエイティブスペース」を作ることにしました。オフィスフロア面積の3分の1、約330平方メートルの広さです。とにかく移動は面倒くさい。「すぐ行ける」ようにすることで、ミーティングなどへ移動することへの心理的障壁が省かれ、クリエイティブスペースの活用が促進されると考えました。
クリエイティブスペースを執務エリアのすぐ隣に作ることでまず意識したのは「環境がガラっと変わる空間づくり」です。執務エリアからクリエイティブスペースに来ると気持ちがリフレッシュされて、クリエイティビティが復活する。そういう場所がすぐ隣にあることが大事ではないかと考えていました。
また、クリエイティブスペース内には機能別・目的別にいくつかの「エリア」を設置しました。そうして決定したのが、次図に示すフロアレイアウトです。各エリアの用途は図の下にある表のとおりです。
実際にできあがった各エリアの様子は、以下のYouTube動画「adtech studio バーチャルオフィスツアー」でご覧いただけます。写真で見たい方は、動画の画面下にある写真をご覧ください。次ページでは、クリエイティブスペースの設計で行った工夫や、その成果をご紹介します。