企業も利用に積極的なデジタルギフト
感謝やお祝いなどを伝えるのに欠かせない「ギフト(贈り物)」。皆さんの周りでも、さまざまな機会でギフトが贈り・贈られているのではないだろうか。
お店やECサイトを訪れ、何を贈るか吟味するのはギフトの醍醐味の1つ。進学や就職、結婚、出産など人生の大きなイベントを迎えた人へのギフトを贈るときには、そうした手間も楽しいものだ。一方で、もっと手軽にギフトを贈りたい場合もある。物を貸してもらったり仕事を手伝ってもらったりしたことのお礼などはそうだろう。
そうした手軽にギフトを贈りたいというニーズに応えてきたのが、ギフティが2011年にサービスを開始した、個人間でデジタルギフトを贈り合えるWebサービス「giftee」だ。そして、次なる事業戦略として2016年に開始したサービスが、デジタルギフトを活用した法人向けサービス「giftee for Business」である。
デジタルギフトとは、店頭やECサイトで商品と引き換えられるチケットをURLで贈るもの。贈られたURLや2次元コード(gifteeのサーバーにアクセス)をスマートフォンなどで開くとチケットが表示される仕組みだ。
デジタルギフトのメリットは何といっても、URLさえ伝えられればギフトを贈ることができる点である。メールでもSMSでもLINEなどでもよい。物と違い、渡すための手間やコストは考えずに済み、相手の住所を知らなくても贈ることができる。「120円のコンビニコーヒー引換券を1万人に配る」といったことも現実的に可能だ。
この仕組みやメリットは、個人間だけでなく企業においてもあらゆるシーンで活用可能だ。2016年にBtoC(企業から個人)でデジタルギフトを贈るサービスとしてgiftee for Businessを開始して以降、キャンペーンの景品やアンケートの謝礼を配布するといった目的で利用する企業が増加。その後、ギフトの種類(コンテンツやフォーマット)を広げ、配送方法の拡充を行ってきたほか、2022年10月にはギフトの提供領域を拡充し、BtoB(企業間)/BtoE(会社から従業員)を対象としたサービスも開始した。導入案件数も順調に伸び、2024年6月時点までに累計4万8000件を突破。売上の面でも、同社の売上の60~70%を占めるまでになったという。
現在のgiftee for Businessの全体像は次図のとおりである。BtoBとBtoEの領域は特に「Corporate Gift」と呼ばれ、急速に成長をしているという。
続いては、giftee for Businessで贈れるもの(コンテンツ)を詳しく見ていこう。
BtoEでギフトを贈る意義
米Snappyの調査によれば、「雇用主から有意義なギフトを受け取った後、仕事への満足度が高まったと回答した割合は78%に上り、感謝やねぎらいの気持ち、良好なビジネス関係を育むうえでギフトが重要な役割を果たしている」という。人的資本経営で従業員エンゲージメントの向上などを掲げる企業が増えている昨今、会社から従業員へのギフトは、その有効な手段として検討する価値があるといえよう。
ギフトを贈るシーンには、新入社員向けのウェルカムギフトや誕生日ギフト、周年記念、営業報奨、健康経営の施策などがある。ただ、これらのシーンで有意義な(記憶に残るような)ギフトを贈るのは案外難しいもの。そこでギフティではそれをサポートするサービスを提供している(次ページで紹介)。
また、さらに踏み込んで、ギフティは福利厚生に特化したポイントプログラム基盤「giftee Benefit」を新しくリリース。福利厚生の一環として、会社から贈られるポイントを従業員が好きなデジタルギフトと交換できる仕組みだ。従業員エンゲージメントだけでなく、求職者の入社意向の向上にも寄与する(本記事3ページを参照)。
giftee for Businessで贈れるもの
giftee for Businessで贈れるものには、大きく分けて次の5種類がある。
- えらべるギフト(giftee Box、えらべるPay)
- giftee eGiftカード(カードタイプのデジタルギフト)
- 体験ギフト
- 良質なモノ
- Swag
えらべるギフト(giftee Box、えらべるPay)
ギフティのえらべるギフトは、ギフトを受け取った側が欲しい商品を選べる選択型のデジタルギフト。「giftee Box」と「えらべるPay」の2つがある。
giftee Boxでは、贈られた人が最大1000種類のバラエティ豊かなラインナップから好きなものを選べる。コーヒーやスイーツなどテーマ別に商品を集めたBoxも複数提供しており、「仕事の合間に一服してください」といったメッセージをギフトに込められる。
また、giftee Boxでは交換されたデジタルギフトを可視化できる。企業はギフトの振り返りを行う材料を得られるわけだ。興味深い事象として、ギフティ 執行役員 giftee for Business事業部 本部長の篠塚大樹氏によれば、40~50代ではコンビニのギフト券がランキングの1位になり、よくキャンペーンの景品などとして使用されるAmazonギフト券が上位に入らないこともあるそうだ。
一方、えらべるPayでは、QRコード決済で利用できるポイントや、ECサイトで使えるギフトコードを贈れる。受け取った人は好きなスマホ決済サービスを選べる。贈る側にとっては、銀行口座といった個人情報を扱うことなく、現金に近い価値を付与できる点が魅力だ。
giftee eGiftカード(カードタイプのデジタルギフト)
ここまでに紹介したギフト(URL)の送付には、メールなどによる通知という方法が採られるが、これを物理的なカードで提供できるサービス「giftee eGiftカード」もある。このサービスを利用すると、デジタルギフトをカード化して手渡しで贈ることができる。少額のギフトカードは、ちょっとしたお礼やねぎらいの気持ちを表すときに使いやすい。比較的高額なギフトカードは、永年勤続表彰など特別なシーンで有効だろう。
体験ギフト
えらべるギフト「giftee Box」や「えらべるPay」は受け取った人が好きなデジタルギフトを選べるものだが、贈る側(企業側)が商品を選定して贈る定番の形式もある。そのうち、比較的高価格帯のギフトを贈ったり、企業がギフトに込めたコンテクストを伝えたりするのに最適なのが「体験ギフト」だ。これはSOW EXPERIENCEが提供する体験ギフトを贈れるというもの。クラフトカレーやハンドコスメのお取り寄せから、メモリアルフォトの撮影、贅沢な宿泊付きゴルフ、野外アクティビティまで、日常生活ではあまりできない体験を提供する。特別なタイミングで従業員に贈るとより効果的だろう。
良質なモノ
体験ギフトの他にも、物理的に良質な「モノ」を贈ることもできる。贈る側が届けたい気持ちに合わせてコンセプトを設定し、たとえばゆったりした時間を過ごしてほしいときには、上質なタンブラーとスペシャリティコーヒーのセットを。アフターファイブにリフレッシュしてほしいときには、こだわりのおつまみとクラフトビールやグラスのセットを、というように複数ブランドの商品を詰め合わせたボックスもつくれる。贈り方もさまざまで、手渡しのほか、URLを贈る方法がある。URLを贈られた人は、住所を入力するなどして商品を受け取る。そのため、贈る側は自身で商品や個人情報を管理しなくて済むし、送付もお任せにできる。
Swag
「Swag(スワッグ)」とは企業やサービスと受け取り手の想いを反映し、モノ自体の質や「ギフトのストーリー」にこだわりが詰まったオリジナルグッズだ。企業の周年記念の品や、新入社員のウェルカムギフト、顧客へのシーズナルギフトといった使い方ができる。
ただ、本当に喜ばれ、記憶にも残るオリジナルグッズを考え出すと、かなり悩むものだ。そこでギフティは、ギフトプランニングのプロフェッショナルチーム「STUDIO GIFTEE」を立ち上げた。STUDIO GIFTEEはギフトの企画・制作サービスを提供し、企業のブランディングや企業と顧客・従業員とのより良い関係づくりのためのギフト体験を支援してくれる。福利厚生としてSwagのギフトを検討する際にも、相談してみるとよいだろう。
次ページでは、従業員への福利厚生に特化したギフティの新たなポイントプログラム基盤を紹介したい。
福利厚生に特化した新たなポイントプログラム基盤「giftee Benefit」
産業能率大学が行った調査によれば、新入社員に「就職先を選ぶ際に重視した点は何ですか?(5つまで選択可)」と尋ねたところ、2024年度で1位になったのは「福利厚生」であった(2023年度の「業種」を逆転)。それだけ、いま福利厚生が働く先の条件として重視されてきているのだ。
このようなニーズを受けてギフティは、新たに福利厚生のためのポイントプログラム基盤「giftee Benefit」を2024年9月にリリースした。
giftee Benefitは、会社が福利厚生として従業員各自のマイページに「ポイント」を付与し、従業員はポイントをギフトに交換できる仕組み。マイページやポイント付与・管理・交換のシステムはギフティ側が(SaaSとして)用意しており、ユーザー企業でのシステム開発は不要だ。
企業は、従業員がギフトに交換したポイント分を精算する。ポイントを付与したときではなく、交換したときに精算するので、いわゆる「掛け捨て」にならない。
ポイントを付与するタイミングは、各ユーザー企業が制度によって決められる。ポイントと交換できるギフトも、1000種類以上から企業側でカスタマイズできる。
では、このgiftee Benefitはどのような企業が導入に前向きなのだろうか。ギフティ Gift Distribution Corporate Gift Director 熊谷優作氏は、福利厚生の利用が高まらないことに悩んでいる企業をその1つに挙げる。原因はさまざまだが、制度を知らない・使いにくいといったことが一般に考えられるだろう。
また熊谷氏は、今時の福利厚生のあり方について、「勤続20年をたたえて休暇と温泉旅行を進呈する、といった制度もすてきですが、それだと20年経たないともらえません。働き方が変わっている中で、従業員が日常的に『会社は自分たちのことを大切に思っているんだ』と感じるように制度を設計することも併せて重要だと思います」と指摘する。
その点、会社から折に触れてポイントが付与され、それをマイページでポイントを確認し、簡単にギフトに交換できるgiftee Benefitは有効なソリューションといえる。
なお、giftee Benefitのポイントは貯めておけるので、従業員はいつでも使えるというだけでなく、一気に大きなポイントを使って高価格帯のギフトと交換するといったことも可能になっている。
giftee Benefitには今後、デジタルチケットやモノなどを割引購入できるストア機能やクーポン機能が追加される予定だ。さらに、従業員間でポイントをやりとりする機能も検討されている。この機能が実装されれば、従業員同士のコミュニケーションも密になり、チームワークや従業員エンゲージメントも高まるに違いない。
いまは人材1人ひとりの活躍が企業の成長に大きく影響する時代である。その活躍を後押しするために人事は、心の底からこの会社で働きたいと感じられる環境をつくる必要があるだろう。人事制度などのハード面と併せて、福利厚生というソフト面の充実も図りたい。