ミスマッチを防ぐためハード・ソフトの両スキルを見極める
では、ITエンジニアの選考は具体的にどう進めるとよいのか。まず書類選考の段階では「職務要件の適合性」のみを見て判断する。人柄や雰囲気などはひとまず置いておき、職務だけにフォーカスすることが重要だ。
それから、「実務をシミュレートした面接」でハードスキルとソフトスキルの両面について見ていく。ハードスキルについてはデータ構造とアルゴリズム、コンピュータサイエンスの知識などを確認。ソフトスキルについてはコミュニケーション力や論理的思考、言語化、問題解決の能力などを見る。
そして、最後の「行動面接」で、候補者の過去の経験や行動が自社のバリューや行動指針と合うか、いわばカルチャーフィットをしっかり見定める。
以上の3ステップで合格となった候補者だけにオファリングをする。

逆に、悪い選考プロセスとしてよくあるのは、学歴や職歴を見て選考に進めるかどうか判断したり、面接での合否を面接官の属人的な判断に委ねたりするものだ。後者については「よく話すからいい感じ」「営業がうまそうなので」というように評価基準が面接官によってバラバラではいけない。さらに、現職の年収を基準にオファーすることも後のトラブルのもととなる。こうした面接を行っている企業は、高柴氏の肌感覚で約4割にも上るという。
選考が及第点であるかどうかのポイントには4つある。評価項目が整理され、課題を出してスキルをチェックできていること。複数の面接官の目を通したうえでフィードバックし、それをもとに総合的に判断すること。オファリングに関しても前職の年収を考慮しつつ、入社後の人事評価に関連付けができていること。そして、候補者を見極めるだけではなく、会社の魅力を訴求する効果も考慮されており、候補者にとっても良い経験となることだ。
さらに良くする方法として、スキルをチェックするための「コーディング試験」を、生成AIを意識したものに変更することが挙げられる。たとえば、自社で作問して出題する場合、数時間・数日かけて解くような大きな問題が多く、候補者の負担になりがちだ。それでは入社の優先順位が下がってしまう可能性が高い。一方、外部サービスを利用する場合、ライトで汎用的なものになるが、それだけで合否を決めてしまうことにはリスクが伴う。さらに、いずれについても評価者によって差が生じやすく、そもそも生成AIの影響で実力が見極めにくいという問題点がある。