リーダーシップのあり方の変遷とその背景
今回は、リーダーシップについて考えていきたいと思います。
集団や組織にとって有効とされるリーダーシップのあり方は、時代と共に変遷してきました。かつてのリーダー像は、絶対的な権力で組織を牽引する英雄として存在し、そのカリスマ性は組織に一体感と目標意識を与えました。ただし同時に、個人の主体性を阻害する要因ともなりました。
産業革命以降、組織の規模が拡大すると、効率的な組織運営が求められるようになり、いわゆる「管理型のリーダーシップ」がうまれます。管理型リーダーシップでは指示命令、計画立案、組織統制といった管理的要素が重視されるようになり、リーダーは組織の歯車を効率的に回す管理者としての役割を担いました。しかし、画一的な管理手法は、組織の硬直化を招き、創造性を損なうことにもつながったのです。
工業化社会が成熟すると、情報化社会とグローバル化の大波が押し寄せ、組織を取り巻く環境が激変します。この時代には従来のトップダウン型のリーダーシップでは、変化の激しい産業や社会の状況に対応しきれなくなってきました。そこで注目されるようになったのが、「変革型リーダーシップ」です。このような環境下におけるリーダーは、自ら明確なビジョンを示し、組織を鼓舞し、変革を推進する役割を担うようになりました。しかし、変革型リーダーシップも、リーダー個人に過度な負担をかけるうえ、属人性への依存度が強いため、組織全体としての柔軟性や自律性を十分に引き出すには至りませんでした。
そして、現代はVUCA(変動性・不確実性・複雑性・曖昧性)の時代を迎えています。予測不可能な変化に対応するには、特定の個人に依存するリーダー像ではなく、組織を構成する1人ひとりがそれぞれのリーダーシップを発揮し、自律的に行動することで、組織が柔軟性と創造性を高められる「自律・分散型リーダーシップ」が注目されるようになりました。
このようなリーダーシップの変遷の背景には、社会構造の変化、技術革新、そして人々の価値観の変化が複雑に絡み合っています。かつてのリーダーシップは、安定した社会と予測可能な未来を前提としていました。しかし、現代社会は、常に変化し、予測不可能です。だからこそ、組織全体が変化に対応できる柔軟性と自律性が求められるのです。