AIエージェントがさらに業務効率化を促進する

松井 最後に、AI活用において勧めたいことや注目していることを教えていただけますか。
中村 直近でいうと、会社が許すならば、マイクロツールをどんどん使ってみるのが一番良いと思います。情報セキュリティの知識を付けたうえでの好奇心が非常に大事で、さまざまなサービスに触れることにより、徐々にツール・サービスの目利きができるようになります。そうしたチャレンジができるような土台や特区的な組織をつくると効果を感じやすいでしょう。
AIエージェントが次々と出てくる点にも注目です。特にRAG[2]を使ったAIエージェントが多く登場してくると思いますが、これには「人事データのバラバラ問題」という、以前からいわれている課題を解決する可能性があると考えています。世界中の人事がExcelを使ってずっと行っているデータのつなぎ合わせにようやく終止符が打たれ、企画や戦略の立案などのためのデータ活用を推し進められるでしょう。
注
[2]: Retrieval-Augmented Generation(検索拡張生成)の略で、社内のデータなど外部データを組み合わせて回答を生成する技術のこと。
弊社の例ですが、新しいプロダクトとして、人事にとって「最強の相棒」となりえるAIプロダクトを開発しています。これには自社のさまざまな情報、たとえば中期計画やIR資料、評価データ、サーベイ結果などを学習させており、データに基づいた活躍人材の分析や組織の実態把握はもちろん、「中期計画達成のために、どのような人事施策を打つべきか」といった経営視点の問いや相談も可能になっており、戦略的意思決定をサポートしてくれます。 また、「このような層を育成したいのだが、どういうプログラムがよいか」といった各論施策の相談も可能になっています。
また、ブラウザを操作してくれるAIエージェントが少しずつ出始めており、今後さらに進化していくでしょう。現在、人事業務ではブラウザから多くのSaaSを使っています。ここにAIエージェントが入ることで、毎日手で行っている入力などが大幅に削減されます。業務効率の面でかなりのインパクトがあると思います。
松井 業務効率化が期待できる領域でさまざまなAIツール・サービスを試し、成果を得られれば、さらに別のツール・サービスの利用につながり、生産性をどんどん高めていけます。
中村 そうですね。いま弊社では人事組織の全社員がAIをつくり、使えるように教育しているのですが、特にワークフロー型のAIエージェントを皆でつくれるようになることを進めています。社員が自身の業務プロセスを分解し、その中でAIにより業務効率化が見込めるものを見定めて、実際にAIエージェントをつくってみるところまでトライしてみるのです。すると、想像以上に使える点を社員が発見することがあります。こうしたアプローチが、今後のAI×人事の目指すところだと考えています。
松井 なるほど。本日は貴重なお話をありがとうございました。