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法改正は人的資本経営の推進力 | 第4回

2025年10月の育児・介護休業法改正③~組織を巻き込んだ対応と組織変革の機会としての活用

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法改正の実効性の鍵となる管理職の対応と育成

 2025年10月改正の核心である選択的措置と配慮義務の導入は、単なる制度設計の問題にとどまりません。実際に現場で運用するためには、現場の理解と推進の体制、特に管理職の理解と適切なマネジメントが不可欠です。ここでは、その理由と必要な対応について解説します。項目は次に挙げる4つです。

  1. 制度の理解
  2. 組織間調整とマネジメント
  3. 業務設計と組織風土への配慮
  4. コミュニケーションと社内調整

(1)制度の理解

 まず選択的措置の面談は、単に「弊社では時差出勤、テレワーク、目的休暇の3つを提示するので1つ選択してください」と伝え、「私は時差出勤を選択します」という回答を受けるだけでは不十分です。配慮義務を満たすためには、「仕事と育児の両立に関し、今後の働き方で何か気になることはありますか」といった質問を通じて意向聴取を行い、その回答に対して適切に対応することが必要です。

 この適切な対応のために欠かせないのが事前の準備です。たとえば、あるメンバーに意向聴取をしたところ、「時差出勤が始まりますが、長時間労働が多い部署なので、周りの目が気になります。迷惑をかけないようにしっかり職務を果たすつもりですが、他のメンバーへの周知徹底などをお願いしたいです」という要望が出たとしましょう。事前の準備がないと、「この要望にどう応えたらよいのか」「いったん持ち帰るべきか」などと判断に迷い、適切な対応ができない恐れがあります。

(2)組織間調整とマネジメント

 より根本的な問題として、支援的マネジメント[2]の基本ができていなければ、配慮義務への対応自体が困難になります。たとえば、「短時間勤務制度を利用しますが、現在の評価制度だと短時間勤務者は評価がC以上にならないので、これは公正ではないと思います。平等にしてください」という要望が出た場合、管理職はどう対応すべきでしょうか。単純に「検討します」と回答するだけでは不十分ですし、かといって評価制度を即座に変更することも現実的ではありません。

[2]: 支援的マネジメントとは、近年重視されている部下を支援し自律性を促すタイプのマネジメント手法を要約したもの。多様な働き方の進展の中で、従来のトップダウン型とは異なり、ボトムアップ型のアプローチで、組織全体の活性化を促すことが目的となります。

 このような難しい問題に対応するためには、現場と経営の間を調整しつつ、支援的マネジメントを行う能力が必要です。まさに次世代的なマネジメントの考え方を踏まえた対応が求められる部分といえるでしょう。

(3)業務設計と組織風土への配慮

 選択的措置と配慮義務の対象は女性社員だけでなく、配偶者が出産した男性社員も当然含まれます。この点は多くの企業で認識が薄い傾向がありますが、男性社員に対しても同様に面談を実施し、配慮義務を果たす必要があります。相当数の社員が対象となる可能性があり、そのすべてに適切な面談と配慮を行うためには、管理職全体のマネジメント能力の底上げが必要です。また、それぞれの社員の状況に応じた配慮を行いながら措置を提供し、支援的な面談を標準的に実施する体制を整えることも重要です。

 これは、単に法令の最低限の義務を満たすという発想ではなく、公平で支援的な組織風土を醸成するという観点から必要な取り組みです。体制の構築には、管理職のマネジメント能力の向上だけでなく、全社的な意識改革も不可欠です。

(4)コミュニケーションと社内調整

 管理職に求められる能力としては、まず傾聴力が挙げられます。従業員の本音や悩みを引き出すためには、単に話を聞くだけでなく、言外の意味や本当の課題を理解する能力が必要です。

 次に質問力です。適切な質問を通じて、従業員の状況や要望を明確にする能力、特にオープンクエスチョンを効果的に活用する力が求められます。

 さらに応答力も重要です。従業員の要望に対して、その場で適切に応答する能力、すぐに答えられない場合でも、次のステップを明確に示す力が必要となります。

 また、面談後も継続的に状況を確認し、必要に応じて追加の支援を行う能力が必要です。

 このようなコミュニケーション能力は、生まれ持った才能というわけではありません。適切な研修と実践を通じて育成可能です。

管理職の育成に有効な研修

 以上が管理職に求められる4つの対応ですが、これらを管理職が行えるようになるには、座学だけでなく、実践的なワークショップやケーススタディを含む体系的な研修が有効です。具体的には次のような研修を実施します。

  • 選択的措置と配慮義務の法的要件と、その遵守の重要性を理解する研修
  • 傾聴力、質問力、応答力などの基本的なコミュニケーションスキルを習得する研修
  • 多様な働き方を前提としたチームマネジメントの考え方とスキルを習得する研修

 また、スムーズに面談を実施できるよう、面談の目的、進め方、よくある質問とその回答例などをまとめた面談マニュアルや、フォローアップの方法、進捗管理の仕組みをまとめた面談ガイドラインを用意します。これらのツールを活用することで、管理職の負担を軽減しつつ、質の高い面談を実現できます。

 しかし、研修やツールを整備しただけでは十分ではありません。これらの取り組みが現場で真に機能し、持続的な効果を生み出すためには、組織全体を巻き込んだ包括的な推進体制の構築が求められます。そのために、経営層と人事部門の積極的な関与が不可欠です。

次のページ
管理職・人事・経営層の連携体制の構築と「法改正をきっかけとして生かす」意識の醸成

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この記事の著者

松井 勇策(マツイ ユウサク)

産学連携シンクタンク iU組織研究機構 代表理事・社労士。情報経営イノベーション専門職大学 客員教授(人的資本経営・雇用政策)。社労士・公認心理師・AIジェネラリスト。時代に応じた先進的な雇用環境整備について、雇用関係の制度や実務知識、特に国内法や制度への知見を基本として、人的資本経営の推進・AIやICT関...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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