カルチャーを「メンバーの成果にまでつなげる」仕組みとは
——ここまで、行動指針(RLP)や思考(ユニークネス)についてお話しいただきました。それらを最終的に、どうやってメンバーの行動や成果につなげているのでしょうか。
前述のとおり、弊社ではユニークネスとして、「ゴールオリエンテッド」「着実な継続」「誠実な合理性」「不確実性の排除」を掲げています。ユニークネスを踏まえ、ゴールを継続的に達成し続けるための要素、コンピテンシー(思考力、行動力、人間関係力、組織推進力)を規定しています。等級ごとに求められるコンピテンシーの高さは異なりますが、これらに基づいて評価をしています。
こうした基準をもとに、上長との定期的な1on1や目標管理面談を通して、社員の誰もがカルチャーを理解し実践できるようにしています。もちろん評価結果は給与や昇降格に反映されますが、それよりも大事なのは、会社が求める行動と、現状の自分との間にどの程度のギャップがあるのかを把握し、そのギャップに対して的確なアクションを取れるようにすることです。私は、評価面談は“差を埋めるための機会”だと考えています。上長からのフィードバックを通じて、本人が自らの成長課題を認識し、できるだけ早くそれらを埋められるように支援することが、マネジメントの重要な役割だと思っています。
——カルチャーを醸成・浸透するうえでは、採用も非常に重要なのではないでしょうか。自社のカルチャーを体現できる人材を採用するために、どのような点を意識していますか。
定量・定性のいずれにしても、実績だけを見て採用することはありません。大事なのはプロセスです。どのような考え方で、どのような行動をしてきたのか。その結果として、組織の中でどのような貢献をしてくれる人物なのかを重視して見るようにしています。
面接でも、その人がこれまでにどの程度、当社でいうところのコンピテンシーを発揮してきたのか、あるいはユニークネスを体現しているかをていねいに確認するようにしています。そうすることで、入社後のミスマッチの回避にもなり、カルチャーを浸透させていけるのです。

“老舗の味”を守るだけが正解じゃない 事業成長が最優先
——では最後に、次の中期経営計画を見据えたうえで、これからの組織づくりについての展望を教えてください。
どのスタートアップもそうだと思いますが、当社でも創業以来「限られた資源で、最小の投資から最大の効果を生む」という考えを大切にしてきました。効率化を徹底して成果を出すという価値観は、創業当初から私たちのカルチャーの根底にあります。
その一方で、事業環境が変化する中では、これまでうまくいっていたやり方が必ずしも通用するとは限りません。過去の成功にとらわれすぎると、適応できず市場から取り残されてしまうリスクがあります。
優先順位としては、あくまでも事業の成長が最優先です。そのうえで、自分たちのカルチャーが事業環境に合っているかどうかを常に問い直し、必要に応じて手を打って進化させていくことが重要だと考えています。
老舗の味を守ることももちろん大切ですが、私たちのSaaSビジネスは“同じ味を出し続ける”だけでは通用しません。時代に合わせて進化し続けることこそが求められます。次の中期経営計画でも、変化に柔軟に対応しながら、組織として成長し続けていきたいと思います。