社員がキャリアに夢を持てなくなった理由
近年、多くの企業で「社員が将来のキャリアにワクワクできなくなっている」という声を耳にします。その背景には、かつては用意されていた「キャリアのレール」が、今や存在しなくなったという現実があります。
そのうえ、「仕事が忙しすぎる」「希望を出してもどうせ通らない」「会社が自分に何を求めているのかよく分からない」などを理由に社員がキャリアについて考える時間、動機がどんどん減っているのです。
社員がキャリアに夢を持てなくなった理由を整理すると、次のような原因が考えられます。
社会・経済の変化
- 将来の不透明性
- グローバル化(国境を越えた競争の激化)や技術革新、産業構造の急速な変化により、業績や雇用の安定が揺らいでいます。事業再編やM&A(企業の合併・買収)が相次ぎ、「今ある職場や仕事が将来も存在するのか分からない」という不安が広がっています。
- 従来モデルの限界
- かつては終身雇用や年功序列(勤続年数に応じて昇進・昇給する仕組み)が「安心」を支えていました。しかし現在はそうした仕組みが機能しづらく、代わりとなる明確な新モデルも提示されていません。そのため、社員は「何を目指せばいいのか」が見えず、不安を抱えています。
社内の要因
- 日常業務に追われ、キャリアを考える余裕がない
- 短期的な成果の追求や人員不足により、社員は目の前の仕事で手一杯です。キャリアを考えることは、アイゼンハワーマトリックス(仕事を「重要度」と「緊急度」で分ける整理法)でいえば「重要だが緊急ではない領域」に属します。しかし実際には、緊急度の高い仕事に押し流され、この領域に十分な時間を割けません。本来ここに投資できれば将来の成長につながるのに、後回しにされやすいのが現状です。
- 上司・組織からの期待が見えにくい
- 「自分は何を期待されているのか」「どの基準で評価されているのか」が分からなければ、キャリアの方向性を描くことはできません。評価制度や人事方針があいまいでは、努力がどこにつながるのか不透明になり、意欲を奪います。
- 希望が通らない経験の積み重ね
- 異動や新しい挑戦を希望しても、リソース不足や会社事情で却下されることがあります。それが続くと「どうせ言っても変わらない」と諦めにつながり、夢を持つ気持ち自体が弱まります。
- リスクを避ける文化
- 失敗が許されにくい職場では、新しい挑戦よりも現状維持を選ぶのが合理的に見えてしまいます。その結果、社員は「夢を語るより安全策を取る」傾向を強め、キャリアへの期待感を失います。