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労働基準法大改正 | 本質と論点、求められる企業の対応

労働基準法大改正 解説【前編】——2027年改正が示す「働き方」の転換と人的資本経営の進化

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 労働法制の性質が根本的に変わりつつあります。かつて「規制」として機能していた法令が、今や「戦略に活用すべきツール」としての性格を強めています。2027年に予定されている労働基準法の大改正は、この変化を象徴する出来事です。法令の性質が変われば、企業の向き合い方も当然変わります。そこで今回と次回の2回で、労働基準法の大改正の本質と論点、求められる企業の対応について解説します。

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法令の性質が変わった——規制から戦略構築へ

 労働法の基盤となる重要法令、労働基準法(以下、労基法)は、長らく「最低基準を定め、違反を取り締まる」規制として機能してきました。労働基準監督官が企業を監督し、違反があれば是正勧告や罰則が科される。企業は法令を「守らなければならないもの」として捉え、人事部門や法務部門がコンプライアンス対応を担ってきました。

 現在、2027年を目指して労基法の大改正が検討されています。「守らなければならない」最低基準を定める性質は今後も変わらない部分は多くありますが、法改正の具体的な予定内容を見ると大きな変化が見られます。それは「各企業での、戦略的な働き方の独自の設計を行うことが前提となっている内容が多く含まれている」ということです。

 2027年の労基法改正については、「連続勤務の禁止」「副業兼業の通算方法の改定」など、一部の論点がメディアで採り上げられる形でしばしば報道がされるのですが、こうしたものは多様な改正法令の一部に過ぎず、改正の本質や基盤は別のところにあるものだといえます。

「労基法大改正 戦略レポート」(iU組織研究機構 松井勇策)より
労基法大改正 戦略レポート」(iU組織研究機構 松井勇策)より
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 なお本稿の前提として、「労基法改正以外の分野でも、雇用関連の法令の性質が変わってきている」ということをまず理解する必要があります。2021年頃までの働き方改革の時期、法改正は労働時間の上限規制のような過重労働を抑えるための「規制」的なルールが中心でした。しかし現在は、育児・介護と仕事の両立を支援する制度、フリーランスとの協働を円滑にする枠組み、副業・兼業を促進する仕組みなど、多様な働き方を積極的に支援し、その実現を後押しする政策へと性質が変化しています。

 この変化は、人的資本経営の進展とも密接に関連しています。人的資本経営とは、従業員を企業の成長を支える「資本」と位置付け、そのスキル、健康、モチベーションを経営に活かすアプローチです。現代の労働市場では、給与や安定性だけでなく、柔軟な働き方やキャリア成長の機会を重視する人が増えています。

 また、少子高齢化による労働力不足が深刻化するいま、企業は育児中や介護中の人材、高齢者、フリーランスなど、多様な人材を活用せざるを得ません。こうした中で、雇用関連の法令は、「各社ごとの多様な働き方を促進する戦略を推し進めるもの」になっています。こうした観点に立って、HRzineの連載「法改正は人的資本経営の推進力」では、これまで育児介護休業法などさまざまな法令について解説してきました。労基法改正についても全く同じ観点が重要であり、かつ、戦略的な活用の観点、「法令を人的資本経営推進のツールとして活用する」観点はいっそう重要であるといえます。

改正の全体構造を理解するための視点

 労基法改正については、2023年12月の「新しい時代の働き方に関する研究会 報告書」と2024年の「労働基準関係法制研究会報告書」という2つの重要な報告書に基づき、労働政策審議会で具体的な制度設計が進められています。

「労基法大改正 戦略レポート」(iU組織研究機構 松井勇策)より
労基法大改正 戦略レポート」(iU組織研究機構 松井勇策)より
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 この2つの報告書には視点の大きな相違があります。前者は個人の自律や活躍、経営戦略との連動といった「働き方を変革する理念」を中心に論じています。また、労基法改正の活用において、人的資本経営の人材戦略と一体的な視点が必要であることが自明のものだとよく分かる内容です。

 それに対し後者は理念的な記載は少なく、事業概念や労働者概念の見直しなどといった根本的な労働法の規範や多様な判例の議論が多く採り上げられています。つまり、労働基準関係法制研究会報告書は、改正理念を当然の前提としつつ、それを実現するための「労働法制の具体的論点」に絞り込んで扱っています。

 それぞれの文書をただ読むだけでは統一した読み解きを行うのが難しいのですが、逆にそれぞれを単独で扱ってしまうと、改正の趣旨や各論から離れた理解になってしまうことになりかねません。特に、後者の報告書についての各論のみを採り上げると、「何を目指している枠組みで、企業はどのように本質的な対応を行えばよいか」が非常に見えにくくなってしまいます。

 こうした複数の視点を統合し、行政資料の当然の読み解きから離れないようによく留意したうえで、企業の実務対応を整理したのが、産学連携シンクタンクiU組織研究機機構で公表し、本稿で引用している「労基法大改正 戦略レポート」です。このレポートを引用し、改正の全体像と企業が取るべき対応を解説します。

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この記事の著者

松井 勇策(マツイ ユウサク)

産学連携シンクタンク iU組織研究機構 代表理事・社労士。情報経営イノベーション専門職大学 客員教授(人的資本経営・雇用政策)。社労士・公認心理師・AIジェネラリスト。
時代に応じた先進的な雇用環境整備について、雇用関係の制度や実務知識、特に国内法や制度への知見を基本として、人的資本経営の推進・AIやICT関係の知見を融合した対...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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