日本が「スキル基盤」整備を成功させるために
松岡 一方で、期待だけでなくリスクや課題も気になります。今里さん、いかがでしょう。
今里 ポジティブ面でいうと、日本でスキルの議論が広がらなかった理由の1つは、マーケットで語られるスキルと、企業ごとのスキルの“言語が違う”ことでした。接続していないので横に広がらず、ネットワーク効果が出なかった。
国がすべてのスキルを定義する、というのは不可能ですし、やる必要もないと思っています。アメリカには「O*NET」のように大まかなスキルを定義する土台があり、周辺にスタートアップがいて、企業人事に使う情報との間を仲介し、現場に持っていっています。
日本も、大きなフレームは国が整理しつつ、現場は必要に応じてカスタマイズする。その間を生成AIでつなげることができれば、コスト最適化もしながら進められる、という期待があります。
リスク面では、人材が活躍する場所がほとんどなくなるのでは、という議論です。現在、生成AIがもっと進んだ社会を、追加分析・シミュレーションしています。人事は人の話なので、正しくステップを踏んで生成AIを使い、現場に受け入れてもらうことが大事だと思います。

2040年はすぐにやってくる——政府も“スキルベース”を重要視
松岡 最後に今里さん、締めの一言をお願いします。
今里 2040年はすぐです。ここに向けて産業構造を変えていかないと、個々の企業も生き残れない。企業はスキルをベースに戦略を立てる必要があります。
政府全体としても、日本経済の価値創出をつくっていくうえで、人材領域の取り組みは非常に大事だと位置付けています。会議の重点事項の中にも、スキルベースの話が多く書いてあります。
肝は、企業がどう使えるのか、使いやすいのか、競争力を高められるのか、そこが根っこです。今日お話ししたようなことをごいっしょしながら、各社のグローバルな活躍ひいては日本の競争力強化につなげていければと思います。ありがとうございました。

モデレーターから一言(編集後記)
11日夜のレセプションで、今里さんが「参加者がつくり上げた文化祭の熱気」についてあらためて語ってくださり、会場がいっそう盛り上がったことが印象に残っています。協会に集い、自ら考え、変化を起こすために取り組む参加者の思いを、温かく認めていただいた気がしました。
「人的資本経営 Executive Deep Dive」の初のリアルイベントに、たくさんの方にお越しいただきありがとうございました。お三方ともたいへん話し上手で、あっという間に時間が過ぎました。

