2040年には約1100万人の労働力不足 地方では供給自体が枯渇する見込み
小山田隆氏(以下、小山田) 本日は、私が座長として取りまとめた日本商工会議所・東京商工会議所の「これからの労働政策に関する懇談会(以下、懇談会)」のレポート『「少数精鋭」×「地域共創」で人手不足を乗り越える』をご紹介しつつ、深刻化する人手不足の中で、「大企業と中小企業がどのようにパートナーシップを組み、難局を乗り越えていくべきか」に焦点を当ててお話しします。
小山田 隆(おやまだ たかし)氏
⽇本商⼯会議所・東京商⼯会議所 労働委員⻑/株式会社三菱UFJ銀行 特別顧問
1979年、東京大学経済学部卒業後、株式会社三菱銀行入行。三菱東京UFJ銀行(現・三菱UFJ銀行)の専務、副頭取を歴任し、2016年に頭取に就任。また、三菱UFJフィナンシャル・グループの代表執行役副社長兼グループCOOとして、メガバンクの経営舵取りを担った。金融界のトップとして培った卓越した経営視点を活かし、現在は日本・東京商工会議所の労働委員長として、日本の労働政策のグランドデザイン策定をリード。2025年4⽉からは厚生労働大臣の諮問機関である労働政策審議会の委員も務める。同年9月には「地域共創」による、深刻な人手不足などの人的課題解決を提言したレポートを取りまとめるなど、大企業と中小企業の共創による日本経済の活性化に尽力している。
小山田 まず、私たちの現状認識からお話しします。中小企業は日本の企業数の99.7%を占め、労働者数の約7割を抱えています。特に地方においては、医療・福祉、運輸、建設といった、いわゆるエッセンシャル産業を中小企業が担っており、地域経済の基盤です。しかし、その基盤がいま、人口構造の変化によって揺らいでいます。
日本の人口は2100年には現在の半減近い6200万人、低位推計では5000万人を割るとも予測されています。これは明治時代の人口規模に近いですが、人口ピラミッドの形は全く異なり、高齢化率は4割に達する「逆ピラミッド」社会です。さらに、「人口戦略会議」の分析によれば、自治体の約4割が「消滅可能性自治体」に分類されています。
松岡佐知氏(以下、松岡) 衝撃的なデータですね。
小山田 そうなのです。ここで重要なのは、単なる自然減だけでなく、若年層、特に若い女性が地方から東京圏へ流出し続けている点です。しかし、その東京も出生率は0.96%(2024年東京都人口動態統計年報)と低く、人を集めても次世代が増えない「ブラックホール型」の構造になっています。
野村総合研究所の推計によれば、2040年には約1100万人の労働力不足が発生します。大都市圏では需要過多による人手不足ですが、地方では供給自体が枯渇していく深刻な状況です。
求められる「中小企業の変革」と「地域共創人材プラットフォーム」
小山田 こうした中で、中小企業の3社に2社が人手不足を感じており、賃上げも約6割が「防衛的賃上げ」にならざるを得ない厳しい現状があります。
私たちはこの状況に対し、まずは中小企業自身が「少数精鋭成長モデル」へ自己変革すべきだと提言しました。具体的には、徹底した「省力化(コア業務への集中、デジタル化の積極推進)」「育成(経営の見える化・マルチタスク化)」「多様性(多様な人材の活躍と多様な働き方)」の3つのチャレンジです。
しかし、中小企業には専任の人事担当者がいないことも多く、個社の努力だけでは限界があります。そこで提言したのが、地域全体で課題解決を図る「地域共創人材プラットフォーム」という枠組みです。
地域の企業、商工会議所、行政、教育機関などが連携し、さらにDXを掛け合わせることで、人材の採用・育成・定着を地域ぐるみで支援しようという構想です。
松岡 懇談会での議論を通じて感じられた、中小企業のみなさまの「人手不足」に対する空気感はいかがでしたか。
小山田 やはり非常に危機感は強いですね。人が採れない中で、長く働いてもらう工夫やDX、採用ルートの多様化など、皆さん必死に知恵を絞っていらっしゃいます。
一方で、働き方改革による労働規制への対応の難しさや、アンコンシャスバイアスによって女性やシニアの活躍が十分に進んでいないもどかしさも感じました。
ただ、議論を通じて強く感じたのは、「競争」だけでなく「協調・共同」の機運です。たとえば介護業界などで、企業同士がリソースを補完し合うような動きも出てきています。こうした現場のモードチェンジを、しっかりとした「仕組み」として昇華させるのが、地域共創人材プラットフォームの狙いです。

