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人的資本経営 Executive Deep Diveレポート | #5

日商・小山田委員長が語る「大企業×中小企業の地域共創」——2040年、1100万人の労働不足にどう挑むか

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大企業と中小企業は「運命共同体」である

松岡 次に、「大企業と中小企業のパートナーシップ」について伺います。大企業の経営トップも歴任された小山田さまのお立場から、この連携の現実性や可能性をどうご覧になっていますか。

小山田 私は、大企業と中小企業は「運命共同体」だと思っています。

 パートナーシップというと、どうしても購買部による「価格転嫁」の話に終始しがちです。もちろんそれは重要ですが、もっと本質的な「広義のパートナーシップ」が必要だと思っています。

 サプライチェーンにおいて、大企業と中小企業は相互依存の関係にあります。大企業の製品は、多くの中小企業の高い技術力や部品供給によって支えられています。地政学リスクの高まりで国内回帰の重要性が増す中、受け皿となる地方・中小企業の産業基盤の育成に大企業が積極的に関与し、サプライチェーン全体を強化する必要があります。

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 新しいイノベーションや製品開発のためには、製造部門やR&D部門、そして人事部門も含めた全社的な連携が不可欠です。

 また、BCP(事業継続計画)の観点も重要です。首都直下地震などのリスクを考えた際、地方が「セーフハーバー(安全な港)」としての機能を果たせるかどうか。地方が衰退しきってしまえば、大企業も共倒れになりかねません。

 そうした長い時間軸と広い視野で、地方や中小企業への投資、人材の還流を捉え直すべき時期に来ていると思います。

 さらに踏み込めば、大都市と地方、大企業と中小企業の間で「恒常的な人材循環」を実現すべきです。たとえば、本社機能の一部移転や、リモートワークを活用した二拠点居住の推進。そして、松岡さんが提唱されている「人事DX 3.0」の世界観——内部労働市場と外部労働市場をシームレスに接続し、社会課題解決まで視野に入れた人材戦略——が、今まさに求められているのです。

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松岡 おっしゃるとおりですね。私も講演などで、企業単体ではなく社会全体で人材リソースを考える必要性を訴えてきましたが、商工会議所のような公的なお立場で、このコンセプトを前向きに取り入れてくださったことに大変勇気づけられました。

「地域の人事部」がいる長野県塩尻市

松岡 地域共創人材プラットフォームという構想に関連して、すでにモデルとなるような動きはあるのでしょうか。

小山田 はい、1つの先進事例として、長野県塩尻市での取り組みが挙げられます。「地域の人事部」として活動されているNPO法人MEGURUさんの事例です。

 MEGURUさんは、地域の企業に対して人事戦略の伴走支援を行ったり、副業・兼業人材のマッチング、あるいは地元の学生へのキャリア教育などを行ったりしています。

 単なるマッチング業者ではなく、地域の多様なステークホルダーと連携しながら、地域企業の人的課題を包括的に解決しようとしている。まさに、一種の「社会インフラ」としてのプラットフォームを構築しつつあるといえます。

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 さらに興味深いのは、都市部の大手企業の社員を呼び込み、地域の課題について共に考え、学ぶプログラムを実施している点です。お互いが成長し合える関係をつくっており、これは今後のモデルケースになると思います。

松岡  まさに「地域共創」の実践ですね。サプライチェーンという観点では、どのような事例がありますか。

小山田 広島県では、マツダが全面的に協力し、地域の部品メーカーなど中小製造業者の生産性向上を支援する取り組みが行われています。

 これは単なる支援ではありません。中小企業のデジタル化が進み、技術レベルが上がれば、結果としてマツダ自身のサプライチェーン全体の効率性が高まります。

 つまり、中小企業が強くなることは、大企業自身の成長に直結する「Win-Win」の関係なのです。こうした「運命共同体」としての意識を持ち、率先して中小企業のデジタル化や生産性向上に汗をかく大企業が増えてきています。

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松岡  大企業が自社のリソースを投じて中小企業を強くし、それが巡り巡って自社に返ってくる。この好循環をつくっているんですね。

次のページ
熱量の高い「人的ネットワーク」をデジタルの力で持続可能な仕組みに

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この記事の著者

松岡 佐知(マツオカ サチ)

ピープルアナリティクス&HRテクノロジー協会 上席研究員
野村総合研究所 コンサルティング事業本部 人的資本経営ドメイン シニアプリンシパル

京都大学法学部卒業、London School of Economics and Political Science修士課程修了(MSC in Internationa...

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