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インタビュー | 一般社団法人日本ディープラーニング協会 事務局長 岡田隆太朗氏

技術・活用両面での人材育成を柱にディープラーニングの正しい理解と利用を推進、日本の産業競争力向上が協会の目標


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 10月4日、千葉・幕張メッセで開催された最新テクノロジーの展示会「CEATEC 2017」において、「一般社団法人日本ディープラーニング協会」設立が発表された。理事長には、松尾豊 東京大学大学院工学系研究科 特任教授が就任。「ディープラーニングを中心とする技術による日本の産業競争力の向上」を目標に、ディープラーニングに対する企業の理解を深めていくほか、事業活用から実装まで、ディープラーニング人材の育成には特に注力するという。本稿では、発足の背景やこれからの取り組みなどについて、同協会の事務局長を務める岡田隆太朗氏に聞いた。

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東大・松尾豊先生が「危機感」から発足を呼びかけ

――発足のきっかけは何だったのでしょうか。

 人工知能分野で著名な松尾 豊先生[1]がディープラーニング業界に対して課題意識をお持ちだったことが、日本ディープラーニング協会(以下、JDLA)設立のきっかけになっています。言い出しっぺは完全に松尾先生ですね。

 資料「日本ディープラーニング協会<入会のご案内> ver.7.3」の「協会会員」にある※印の付いた会員(コラムの左図参照)が、松尾先生が昨年の春ごろから声をかけ始めた、つまり課題を最初に共有した企業です。これらの企業に昨年6月に集合がかかり、「ディープラーニング懇談会」といった名前で集まったんです。このときの参加企業が協会の理事になっています。仕事を終えた22時や仕事前の朝7時に集まって、どうしたらディープラーニングを取り巻く現状を変えられるだろうかと話し合った結果、今年の6月に協会を設立するに至りました。

一般社団法人日本ディープラーニング協会 事務局長 岡田隆太朗氏
一般社団法人日本ディープラーニング協会 事務局長 岡田隆太朗氏

 懇談会の席上で松尾先生が口にされたことは、現在、人工知能の第3次ブームと言われていますが、これがブームで終わってしまってはまずいという危機感でした。これまで第1次、第2次ブームとあったけれども、期待感ばかりが膨らんでしまい、「何だこんなもんか」と夢から覚めてまた冬の時代に突入するというパターンだったことが背景にあります。ディープラーニングという革新的な進化が訪れた2012年から起こっているこの変化、動きをしっかり捉えて産業につなげていかないと、またブームで終わってしまうと。

 また、ディープラーニングを大きく「人工知能」とくくってしまっては、産業にとって重要なところがぼやけてしまう。“ディープラーニング”に注目をしてもらい、厳しい目で見てもらった上で、産業界でどのように活用してもらうかを判断してもらう。これは使える/使えないを冷徹に判断してもらっていいと思います。

 正直、ディープラーニングは絶対使わなければいけないものではありせん。ディープラーニングではなく、統計解析や機械学習を使うのが適切なケースだって、当然あるわけです。その判断を産業界ができるようになるほど、産業実装のスピードが高まってくることになりますし、変な期待感を煽ることもないと考えています。

――つまり、ディープラーニングを万能の道具ではなく手法の1つとして見てもらい、他の手法とも比較して、産業として一番良い方法を選んでもらうことが、協会の活動趣旨なのですね。

 アルファ碁が1つの象徴でしょうが、「AIって人間よりすごいんでしょ」という人もいますからね。仕事が人工知能に置き換えられてしまうといった世論ができ始めると、社会との対話を我々からしていかなければならない。松尾先生は人工知能学会倫理委員会の委員長も務めていらっしゃるのですが、人工知能の社会的インパクトのことを考える場所は、これまでそこしかありませんでした。産業界にそこにリーチできているところがない点も、先生が心配している点でした。だから、産業界寄りのところに声をかけた、というのが同協会の始まりとなりました。

 ただ、「協会の立ち上げ・運営は大変だよ」との助言もいただきました。6月にご相談した企業の1つで、データサイエンティスト協会の理事長でいらっしゃるブレインパッドの草野会長です。データサイエンティスト協会内にディープラーニング部会を立ててやったらいいじゃないと、アドバイスされたんです。当初はそれがいいなと皆で思ったのですが、「いま革新が進行中でもっと認知や理解を広めていく必要があるのは、データ関連人材やAI人材といった漠然とした領域ではなく“ディープラーニング”だ。だから、無理をしてでも、ディープラーニングという名前の協会を作ったほうがいい」――そういう判断になったんです。草野会長には、データサイエンティスト協会での経験を活かして助力をお願いしたく、理事に就任していただきました。

 JDLAのベースとなった懇談会は、こうした経緯でできあがっていきました。松尾先生だけでなく、参加企業側にももちろん、ディープラーニングに関してはいろいろな課題意識がありました。

一般社団法人日本ディープラーニング協会とは

 設立目的として「本協会は、ディープラーニングを中心とする技術による日本の産業競争力の向上を目指します」を掲げ、ディープラーニングを事業の核とする企業、およびディープラーニングの有識者が中心となって、産業活用促進、人材育成、公的機関や産業への提言、国際連携、社会との対話など、産業の健全な発展のために必要な活動を行っていく業界団体。2017年6月に設立。理事長を東京大学大学院工学系研究科 松尾豊 特任教授が務める。

 人材育成策として、ディープラーニングの検定・資格も運営する。検定・資格には、事業活用する人材(ジェネラリスト)を対象とする「G検定」と、ディープラーニングを実装する人材(エンジニア)を対象とする「E資格」の2種類がある。

協会概要(JDLAの入会案内 ver.7.3より) 協会会員(JDLAの入会案内 ver.7.3より)
(左)協会概要、(右)協会会員(ともにJDLAの<入会のご案内> ver.7.3より)[各画像クリックで拡大表示]

[1]: 東京大学大学院工学系研究科 技術経営戦略学専攻 グルーバル消費インテリジェンス寄付講座 共同代表・特任准教授。人工知能とWeb、ビジネスモデルに関する研究を行う。特にソーシャルメディアのデータ分析や知の構造化、Webが社会や経済に与える影響といったテーマを研究している。著書に『人工知能は人間を超えるか ディープラーニングの先にあるもの』(KADOKAWA 刊)。

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この記事の著者

市古 明典(IT人材ラボ ラボ長)(イチゴ アキノリ)

1972年愛知県生まれ。宝飾店の売り子、辞書専門編集プロダクションの編集者(兼MS Access担当)を経て、2000年に株式会社翔泳社に入社。月刊DBマガジン(休刊)、IT系技術書・資格学習書の編集を担当後、2014年4月より開発者向けWebメディア「CodeZine」の編集に参加。その後、資格学...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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