従業員が主体的に働きやすさと働きがいをつくる「ERGs」
上原 人事部門と従業員の関わり方も、主体性を重視されている印象を受けました。貴社には、従業員主体の活動である「従業員リソースグループ(ERGs)」がありますよね。これはどのような経緯でスタートしたのでしょうか。
木下 ERGsは、「BETTER TOGETHER(ジェンダー平等)」「MULTI-CULTURAL(多文化)」「ABILITY(障がい)」「WORKING PARENTS & CAREGIVERS(働く親や介護者)」「LGBTQ+」という5つのグループとして2021年に正式に立ち上がりました。その前も、違う名前で各トピックのコミュニティはあったのですが、オフィシャルな仕組みへ再編成した形です。いずれも従業員が自ら手を挙げて参加するグループで、業務時間内の活動として正式に位置付けています。
木下 有理(きのした ゆり)氏
株式会社LIXIL Human Resources 部門 Global D&I D&I Japan リーダー
カナダとフランスでの大学生活を経て、UAEドバイを拠点とするエミレーツ航空に勤務、在シドニー日本国総領事館勤務を経て帰国。その後、2014年にLIXILに外国人役員秘書として入社。広報部門でのPMO業務からチームビルディングや組織開発の経験を積む。2025年には自ら異動を志願し、HR部門のD&I Japanリーダーに就任。国際的なバックグラウンドと社内での多様な経験を掛け合わせ、インクルーシブな企業文化の醸成に努めている。
たとえば、障がい者雇用について、日本では法定雇用率など法律との関係が強く意識されますが、大切なのは数字の達成よりも、入社した方々が安心して活躍できる文化をつくることです。そこで、ABILITYグループのみなさんが企画やイベントなどを行い、障がいを持つ仲間にはどのような困り事があるのかなどを全従業員に共有する機会を設けるなどしています。
上原 現場が主体的に参加する仕組みの中で、人事部門はどのような立ち位置なのでしょうか。
木下 ERGsの活動は、HRから「これをやってください」と指示することはありません。メンバー自身が「何を伝えたいか」「何を実現したいか」を考え、主体的に企画・実行してもらっています。私たちの役割はサポートですね。各ERGには役員スポンサーがついていますので、「役員にこういうメッセージを発信してほしい」といった場合の橋渡しを行っています。
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これもABILITYグループの話なのですが、聴覚障がいのある従業員の声が役員スポンサーに届き、LIXILオンラインショールームで新しい接客サービスを開始した事例もあります。提案から約半年でサービス化につながりました。
現場のリーダー層がD&I推進の中心に 人事の役割も変化
上原 D&Iの重要性が組織に浸透し、従業員が主体的に活動できている中で、あらためていま、貴社が取り組んでいることについて教えてください。
中井 組織の成熟度によって最適なアプローチは変わります。これまでは、CEOをはじめとする経営陣が「D&Iは重要な経営課題である」というメッセージを発信し続けました。そのトップダウンの段階を経たからこそ、今は現場の実態に即したアクションを進めるフェーズへ移行できています。
たとえば、当社は2024年にD&Iガバナンス体制をD&I委員会からD&I審議会へ移行しました。以前のD&I委員会は基盤づくりのフェーズで、経営層が中心となってD&Iの重要性を組織全体へ浸透させる役割を担っていました。現在はインパクト戦略委員会の傘下にD&I審議会が位置付けられています。
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大きな変化はメンバー構成で、経営層が中心だった委員会から、経営層が推薦した現場に近いリーダー層が参加する新体制へと移行したことです。これにより、現場の実態を理解したメンバーが議論し、各部門へ展開できるようになりました。
また、前任CPOの退任後に新たにチーフ・インパクト・オフィサー(CIO)という役職を設置[1]したことも、D&Iというテーマから会社として逃げないという強いメッセージです。
上原 CIOという役職は御社のような規模の企業では非常に珍しい印象です。D&I推進のフェーズが変化する中で、人事部門の役割も変わってきたのでしょうか。
中井 大きく変わってきています。これまでは、なぜD&Iが必要なのかを現場へ伝えるコミュニケーターとしての役割が主でした。これからはそれだけでは不十分で、部門や職種ごとの課題に向き合う必要があります。
本社勤務の社員はフルリモートやスーパーフレックスなど柔軟な働き方ができますが、工場や営業現場はまったく状況が異なります。それぞれの現場の課題をていねいに把握し、最適な解決策を考えることが、これからのHRに求められると思っています。

