職人が“勝手にいい感じで作っておく”では回らなくなってきて
――まずは改めてAnycaのサービスについて教えていただけますか?
馬場 光氏(以下、馬場):Anycaは個人が所有する車を、利用したい個人とシェアするという、個人間のカーシェアリングサービスです。リリースして2年7か月が経ちましたが、2018年4月時点で登録者が13万人以上、車の登録台数が5000台以上、車種数が650以上、累積シェア数が約5万5000日分となっています。他社のカーシェアリングサービスに比べて、登録されている車種数がとても多いので、“いろんな車に乗ってみたい”という車好きの方に楽しんでいただけるサービスになっています。
――現在のAnycaチームの体制について教えてください。
馬場:アプリを開発して運用するエンジニア系の「アプリ内チーム」5〜6人と、サービス利用者を増やすビジネス系の「アプリ外チーム」5~6人をコアメンバーとして、法務やカスタマーサポートといったバックオフィス系も合わせると30〜40人ほどのチームになっています。
――サービス開始当初からこのようなチームに分かれていたのですか?
馬場:いえ、今はプロジェクトごとにエンジニアとビジネスががっつり組んでやっていますが、Anycaの立ち上げの時期には、そもそもCtoCのカーシェアリングの文化が日本になかったので、まずはビジネスモデルを作るフェーズがありました。
畑中陽介氏(以下、畑中):僕は2015年12月、サービスインして3か月経ったころ、Anycaにジョインしたのですが、当時はエンジニアの数も3人でしたし、ビジネスもまだ3〜4人しかいませんでした。エンジニアのチームというよりも、僕がiPhoneアプリ開発、馬場がAndroidアプリ開発、もう1人がサーバー担当という形で、それぞれが独立して動いていました。
馬場:そこから1年くらい経って、エンジニアとして新卒のメンバーが入ってきたり、それぞれのチームが大きくなってきたりしたんです。すると、それぞれの職人が独立して“勝手にいい感じで作っておく”というやり方ではどんどん回らなくなってきて。
畑中:前のプロダクトオーナーは、スプリント[1]ごとに実装する機能の優先順位付けを行っていたんですよね。
――前任者の方から引き継いだのはいつですか?
馬場:半年前くらいです。Anycaはミニマムな機能だけでサービスインしたので、リリース時点でサービスが完成したわけではありませんでした。それから必要な機能を作っていくだけで、リリースから1年くらいはかかっていました。成功形は見えていたので、そこに向かって動いている感覚はあったのですが、チームが大きくなるにつれて細部まで手が回らなくなってきたのも、ちょうどそのころでしたね。
畑中:また、必須機能がそろってきて、プロダクトオーナーが1人で指揮するフェーズから、チームで利用者に喜んでもらえそうな機能を加えていくフェーズに入ってきたんですよね。同時に、ビジネス的な提携の案件も増えてきた。そこで現在のように、プロダクトのKPIを伸ばしていく「アプリ内チーム」と、ビジネスに集中して利用者を増やす施策を考える「アプリ外チーム」に分けることにしました。結果的にエンジニアの多数は「アプリ内チーム」にいますが、エンジニアのチームを作ろうとしたわけではなく、あくまでも役割によってチームを分けただけというイメージです。
注
[1]: スクラムというソフトウェア開発手法の用語。スクラムでは2~3週間を1つのタームとして開発を進めていくが、その1タームのことをスプリントという。