リファラル採用とは
日本国内では人口動態から、生産年齢人口の減少が明らかになっています。当然、就職・転職人口もどんどん減っていきます。人事担当の皆様は足元の採用でも苦労されていると思いますが、今後ますますその度合いがひどくなっていく状況です。
数字で見てみると、厚生労働省発表の全職種での有効求人倍率は、2018年7月末現在で1.63倍。転職メディア「DODA」を運営するパーソルキャリアが発表した2018年8月の転職求人倍率も、全体平均で2.47倍を示しています。こうした高い求人倍率の中でも、ITエンジニアはとりわけ高く、ITコンサルタントなどは17倍にも達しているといいます。
IT業界でいうと、コンサルティングファームは5~6年前まで一定の経験がある方でないと推薦ができない状況だったのですが、今はそれこそ開発経験が1年未満とか、場合によっては開発経験がなくてもいいので推薦してください、というような構図になっています。それくらい受け入れ窓口が増えているのです。
こうした状況を受け、多くの企業で就職・転職エージェントやメディアといった外部チャネルに依存しない自社採用力の強化が今、マクロ・ミクロの双方から見たときに必要になってきています。同時に、個人の求職トレンドも変化してきています。特にデジタルネイティブと言われる若手世代は、情報過多な世の中に生まれてきているので、よりリアルな情報を求めます。
企業側の自社採用というトレンドと、求職者のリアルな情報を求めるトレンド。これら双方を背景に、その効果を発揮しつつあるのが「リファラル採用」です。
リファラル採用は「社内外の信頼できる人脈を介した採用活動」と定義されていますが、一般的には従業員の紹介(リファラル)による採用活動を指すことが多いです。
例えば、企業の人事部がリファラル採用の実施を決めた場合、社内の求人情報を社員に対して公開(アクセス可能)にします。社員は求人情報を見て、適した人・推薦したい人がいれば、その旨を人事部に知らせます。知らせを受けた人事部は、推薦された人にアプローチを行い、うまくいけば選考プロセスがそこから始まります。
リファラル採用の場合、いわばリクルーター役となる社員が人材を推薦してくれるかどうかが最大のポイントです。ここをどうするかは、本連載の中で説明していきます[1]。
リファラル採用の先進国アメリカ
実を言うと、リファラル採用は、海外では主要な採用手法としてすでに確立されてきています。例えば米国では、企業の85%がリファラル採用をやっていて、個人も就職・転職に関してリファラルで情報収集をしています。求職者の採用経路で最も多いのは、ダイレクトソーシングでもエージェントでもなく、リファラルなのです。
アメリカでリファラルが多いのは、人の流動性が高いという背景もあるからでしょう。米国での生涯転職回数は平均10社といいます。大勢の人が転職を繰り返す中で、人と人とのつながりが膨大になっていることが、リファラル採用を増やしている形です。
近年、日本においてもリファラル採用は広まりつつあります。日本では2014年の段階で10%ほどの企業しか実施をしていなかったのですが、現状では3倍以上の33%になっています。また、去年行った我々の調査によると「制度を検討している」「準備中」あるいは「実施している」を合わせると、すでに73%になっています[2]。
また、日本国内では新入社員の3割が3年で辞めるというデータがあります。就職活動が終わった途端に転職のことを考える人もいるといいます。若い人を中心に日本でも流動性が高くなったことが、リファラルが注目されている一因なのだと思います。
注
[1]: とりわけ、リファラル採用にかかる手間(特に社員の手間)を省くことがキーになります。そのために、MyReferなどのリファラル採用支援サービスが提供されています。
[2]: 2015年に私たちがリファラル採用のビジネスを立ち上げたとき、「リファラル採用」という言葉自体が知られていませんでした。知っていても、ネガティブな印象に取られることが多かったと思います。「うちはリファラルはやらない」とか「インセンティブでつりあげるのは違う」とか「そもそも縁故ってどうなんだ?」といった感じです。最近になってその概念はもう変わってきたと感じています。つまりリファラル採用は定着しつつあるのです。