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インタビュー | SE統合組織の設立

「専門領域だけに強みでは顧客価値のあるシステムを提供できない」危機感から分野別に分かれていたSEを束ねた組織で目指すもの――内田洋行 白方昭夫氏、河合剛史氏

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 今年7月、内田洋行が分野別に分かれていたSEたちを1か所に集めた新組織を立ち上げた。ねらいはSEが持つナレッジやスキルの共有だ。同社にはなぜその必要があったか。また、ナレッジやスキルの共有はどのように行っているのか。同社の白方昭夫氏(上席執行役員 システムズエンジニアリング事業部長 兼 SE企画管理部長)、河合剛史氏(システムズエンジニアリング事業部 技術サポート&サービスビジネス推進部 AP技術推進課長)に聞いた。

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専門特化した領域だけではお客様のニーズに応えられない

――今年の7月に、御社のSEを集約した新組織を設立したとうかがいました。その理由を教えていただけますか。

白方昭夫氏(以下、白方):当社は規模の割に幅広い分野を手掛けており、多様なSEがいます。その力を有効に生かすためです。これまでにも、社内のSEを集約してきたのですが、民間企業向けにERPパッケージソフトの導入をサポートするSEが営業事業部に所属していたのです。今回の改変では彼ら・彼女らの組織も統合しました。また、SE企画管理部という部署も新設しました。単にSEを集めるだけでなく、有効に結合してさらに力を発揮するための仕組みを構築し、グループも含め拡大を図る役割を持った組織です。

内田洋行のSE組織の統合
内田洋行のSE組織の統合

――以前はSEは集まっていなかったのですか。

白方:かつては所属する事業部門が異なっていました。それぞれの営業部門の中にSEが所属する形をとっていました。営業部門単位で事業を推進する上では、一緒にいるほうが効率が良かったからです。また、SEのサポートサービスが今ほど重要な位置づけになっていなかった分野では、ハードウェアなどのモノを収めることの付随作業に近い形でやっていたからかもしれません。そういう生い立ちでSEが分散していたのです。

――ロッカーやデスクを納める[1]のと同じようにコンピューターを納め、必要な設定をその部門に所属するSEがしていたということなのですね。いつくらいから今の形に集約する方向になったのですか。

白方:平成26年です。この時、いったん民間企業向けERPサポート部門以外の自治体、文教分野の業務システムSEと自治体、文教、民間分野のネットワークSEが集結しました。

白方 昭夫氏
白方 昭夫(しらかた・あきお)氏
株式会社内田洋行 上席執行役員 システムズエンジニアリング事業部長 兼 SE企画管理部長。
1981年4月 株式会社内田洋行入社。2018年7月より現職。グループ企業のウチダエスコ株式会社 取締役および株式会社内田洋行ITソリューションズ 取締役、株式会社ハンドレッドシステム 代表取締役社長も兼務。

――どんな効果を狙って統合を進めたのでしょうか。

白方:SEの視野を拡大し活躍の場を広げたいと考えました。これまでは、それぞれのSEを最初から分野に特化した形で育成し、営業部門の下で活動したほうが、効率が良かったのだと思います。

 しかし、今ではお客様に納めるものは必ずしも単一のものではありません。また、一からモノを作るというよりは、色々な製品を組み合わせて提供することが増えています。そうなると、多様なシステム同士で連携が必要になりますし、他の取引先との間でも様々な連携が必要になります。そうなった時に、専門特化した領域だけでは、お客様の望む全体の目的を達成するためのエンジニアリングは難しくなる。

 SEが事業部ごとにバラバラに存在していると、確かに深く知っていることについては強い。ただ一方で、全体を俯瞰しながら仕事を進めていくことに関しては、成長が阻害され視野が狭くなっていると感じていました。そこで、さまざまな専門分野のSEが集まり、周囲にいる他の専門分野の人たちが、少なくとも何をしているのか情報を共有することにしたのです。

 「社内のここにはこういうメンバーがいる」ということがわかると、人的リソースをうまく使えて目的を達成できます。今までは事業体ごとにSEが分散していたので、どの部署のSEがどんなスキルを持っているのか、すぐにはわかりませんでした。1つになってみて、「あなたのところは、こんなことをやっているのですか」という具合にみんなが感動しています。「頼めばよかったね」とか「今度やる時はここと組んだらうまく行くね」といった言葉も出ています。そうした効果は狙い通りです。

ナレッジ共有は相互支援やエンジニアのキャリアパス形成の場に

――とはいえ、やはりグループ全体で1000人のエンジニアは大人数です。御社は自治体、学校、民間企業に向けて事業を展開されていますが、領域が異なれば関心も持ちづらく、情報共有がなされるのは難しいと思います。成功の要因は何でしょう。

白方:分野ごとに異なる標準工程を整理し見える化を図ることで、事業部員全員が共通の言葉を用いて分野ごとの違いを認識できるようにしたことですね。次に、マネージャーの間では狭い範囲ではなく、全社のことを知ろうということを徹底してやっていること。その一環として、例えば「SEトピックス」という形で特徴のある案件、技術、経験などの情報を整理し、マネージャーが発表しています。これは自分たちがどんな仕事をしているのかを他部署の人にわかりやすく伝えるための資料です。これを使った情報発信を続けてきた結果、最初のうちは使っている用語すら理解できなかった人同士が、1年もすると用語が耳に馴染んできました。

――SEトピックスを発表するマネージャーは全員で何人いるのですか。また、SEトピックスの発表を始めたことでどんな効果が得られましたか。

白方:44人です。部署ごとに独自の技術もありますが、共通する技術や考え方もあることに気づきました。すると、以前は物事を自分たちだけで解決しようとしていたところが、「大変な時には互いに助け合えるね」ということがわかるようになったのです。

 もう少し長いスパンで見ると、「彼は次にこちらの部署でこういうことをやらせるともっと伸びるよね」みたいなこともわかるようになります。定期的にマネージャーが集まって評価をする際に、「この人をどういうふうに成長させていけばよいのか」ということについても分野を超えた情報共有が始まっています。

――SEがプロジェクトを掛け持ちしたり、プロジェクト横断的な活動をしたりすることはありますか。

白方:あります。プロジェクトを組む時に、単一の技術だけでは必ずしも解決できない案件の場合、例えばネットワークの技術も必要だし、業務の知識も必要だし、セキュリティの知識も必要だったりすると、1つの組織だけでは賄えないので組織横断的にアサインしてプロジェクトを組んでやることもあります。

――マネージャーはメンバーのスキルをどのように把握しているのですか。

白方:ITSS(ITスキル標準)に準拠した形でのスキルの棚卸しは以前から行ってきていますし、若手SEに対しては個人カルテを作成して、きめ細やかな成長の状況を記録として残しており、誰がどういう経歴を持っているかという情報をマネージャー間で共有しています。

[1]: 内田洋行は、売上の6割をICT関連事業、4割をオフィスや学校設備の環境構築事業としてきた商社である。

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この記事の著者

市古 明典(IT人材ラボ ラボ長)(イチゴ アキノリ)

1972年愛知県生まれ。宝飾店の売り子、辞書専門編集プロダクションの編集者(兼MS Access担当)を経て、2000年に株式会社翔泳社に入社。月刊DBマガジン(休刊)、IT系技術書・資格学習書の編集を担当後、2014年4月より開発者向けWebメディア「CodeZine」の編集に参加。その後、資格学...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

八鍬 悟志(ヤクワ サトシ)

都内の出版社に12年勤めたのちフリーランス・ライターへ。得意ジャンルは労働者の実像に迫るルポルタージュと国内外の紀行文。特にヒンドゥ教の修行僧であるサドゥを追いかけたルポルタージュと、八重山諸島を描いた紀行文には定評がある。20年かけて日本百名山の制覇を目指しているほか、国内外を走るサイクリストとし...

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