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インタビュー | リモートワーク/テレワーク

「全社員リモートワーク」をなぜ実施したのか、会社の運営がうまくいく理由とは――シックス・アパート 平田大治氏

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 働き方改革の一環として着手する企業が増えてきたリモートワークの導入。ただし、原則として出社しなくてもよいというフルリモートワークを導入している企業はかなり少数だ。背景にはもちろん、従来とは大きく異なる企業・組織運営が必要になることがある。そもそも、フルリモートワークを実施する理由やメリットは何だろうか。また、業務が滞りなく進むポイントとは。先駆的にフルリモートワークを導入したシックス・アパート株式会社の平田大治氏(取締役CTO)にうかがった。

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自然発生的に始まったリモートワーク

――まずは御社がリモートワークを導入した経緯を教えてください。

 半ば自然発生的に始まりました。弊社はブログサービスやCMSサービスを提供する会社です。サービスを提供する上で、24時間365日いつでも対応できる体制を持っているほうが何かと便利でした。ですので、どこでも仕事ができる体制というのはもともと持っていたのです。また、弊社は2003年、米シックス・アパートの日本法人という形でスタートしました。米国本社と連携して業務を進めるため、マルチロケーションで仕事をする必要もありました。

 とはいえ、リモートワークを意識して行うようになったきっかけは東日本大震災です。震災後、節電が求められる中、「週5日の出勤を週4日にすれば20%節電できるのでは」という安直な発想で始めたのです 。そうして水曜日は全社員強制的にリモートワークということになりました。節電の要請がなくなった後も、なんとなくそのルールが定着していったのです。

平田 大治氏
平田 大治(ひらた・だいじ)氏
シックス・アパート株式会社 取締役CTO。
シックス・アパートの取締役CTO。日本におけるブログの啓蒙活動への貢献で知られる。技術開発から経営まで幅広い経歴を有する。

――週1日のリモートワークから始まったのですね。ただ、そこからフルリモートワークに行きつくまでには、ずいぶん道のりがあると思うのですが。

 週1日のリモートワークは夏期限定で行っていたのですが、オフィスの状況を見ていると、いつも半分くらいは空いていたのです。営業の人は外回りをしますので常にオフィスにいる必要はないですし、エンジニアも出社時間を厳密には決めず、裁量に任せる形でやっていました。ですので、そんなにみんながきっちりオフィスに詰めて仕事をする雰囲気はありませんでした。「(フルリモートワークも)できるんじゃないかな」と半分くらいは思っていました。

 それにみんな通勤ラッシュは嫌ですし、何より時間がもったいない。会社は通勤時間中の給料を払わないので、何時間かけてくれてもかまわないのですが、私はもったいない時間だと思っています。子育てや介護など、いろいろと時間が必要な30代、40代も増えてきていました。

 また、2016年7月に当時の親会社からEBO(エンプロイーバイアウト:従業員による企業買収)で独立した際、8割の社員が株式の買取に参加しました。つまり、みんなが株主みたいな会社になったわけで、「不正を防止するルールというのはあまり意味がないんじゃないのかな。全員を信じていいんじゃないのかな」と。だから、EBOの翌月にそれまでの3分の1サイズのオフィスに移転するとき、削減できたコストをリモートワーク手当としてみんなに還元することに決めました。オフィスではなく人に投資しようということです。リモートワーク手当は全社員一律で、毎月1万5000円です。この手当は自宅の仕事環境を整えるのに使ったり自由に使うことができます。

 ただ、オフィスで仕事をしたい人や、業務上オフィスに来る必要がある人もいます。そういう人には通勤費を支給しています。それから、フルリモートワークの人もまったく会社に来なくなるわけではなく、定期的なミーティングなどで出社します。そういう時には交通費を支給します。

――フルリモートワークを導入しようというとき、どういう声が出ましたか。

 不安視する声もありました。でも、リモートワークにはすでに慣れていたので、できるんじゃないかなという声が多かったと思います。ただ、家に仕事環境が整っていない人は当然いて、毎月支給される1万5000円を使って徐々に仕事環境を整えていく形になりました。

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この記事の著者

市古 明典(IT人材ラボ ラボ長)(イチゴ アキノリ)

1972年愛知県生まれ。宝飾店の売り子、辞書専門編集プロダクションの編集者(兼MS Access担当)を経て、2000年に株式会社翔泳社に入社。月刊DBマガジン(休刊)、IT系技術書・資格学習書の編集を担当後、2014年4月より開発者向けWebメディア「CodeZine」の編集に参加。その後、資格学...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

八鍬 悟志(ヤクワ サトシ)

都内の出版社に12年勤めたのちフリーランス・ライターへ。得意ジャンルは労働者の実像に迫るルポルタージュと国内外の紀行文。特にヒンドゥ教の修行僧であるサドゥを追いかけたルポルタージュと、八重山諸島を描いた紀行文には定評がある。20年かけて日本百名山の制覇を目指しているほか、国内外を走るサイクリストとし...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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