スピーカー
●サイボウズ株式会社 代表取締役社長 青野慶久氏
●さくらインターネット株式会社 代表取締役社長 田中邦裕氏
●株式会社コードタクト 代表取締役社長 後藤正樹氏
モデレーター
●株式会社KDDIウェブコミュニケーションズ 代表取締役社長 山崎雅人氏
それぞれが社長として進めてきた働き方の制度化
●山崎雅人氏(以下、山崎):登壇者の皆さんと私は、本質行動学が専門の西條剛央氏(Essential Management School代表、株式会社本質行動学アカデメイア 代表取締役社長、元 早稲田大学大学院(MBA)客員准教授)が立ち上げたエッセンシャル・マネジメント・スクール(EMS)の受講生という共通点があります。お互いをよく知っているとは思いますが、最初にそれぞれの自己紹介からお願いします。
●青野慶久氏(以下、青野):今日のキーワード「エンジニア」と「最幸」の2つにちなんで自己紹介をすると、工学部情報システム工学科出身でエンジニアを目指していました。とはいえ、社内システムの開発を除くと、実は自分で製品のコードを書いた経験はありません。
現在のサイボウズの開発拠点はあちこちに散らばっているので、リモートでのモブプログラミングという手法を積極的に実践しています。みんなでやれば気づきが得られるし、どうせコードレビューをやるなら最初からみんなでやろうという発想で始めたそうです。技術的には、フロントエンドからバックエンド、インフラからアプリケーションまで多くのエンジニアがいるので、エンジニアとしてのキャリアパスは描きやすい職場だと思います。
今でこそ、時間や場所を選ばずに働ける人事制度で知られるサイボウズですが、きっかけは2005年に離職率が28%にまで上昇したことにありました。以来、全社的に働き方を変える取り組みを続けてきたわけですが、離職率の改善だけで済むほど経営は単純ではありません。エンジニアが気持ちよく働くには、ビジネスが成長し、経済的な余裕ができることも幸せの要素だと思います。
比較的最近の組織改革の目玉は、開発本部から部をなくして、仕事をする場としての「チーム」と、学びの場としての「コミュニティ」で働いてもらう体制に変えたことです。成功するかどうかはまだわかりませんが、新しい体制となり約1年が経ちました。
●田中邦裕氏(以下、田中):さくらインターネット(以降、さくら)は1996年、私が18歳のときにいわゆる「学生ベンチャー」として起業した会社です。2005年10月には東証マザーズへの上場を果たしました。ただ、その後のビジネスは順風満帆ではありません。2007年には、最速債務超過ランキング4位という不名誉な事態に陥りましたし、2008年にはリーマンショックの波をかぶりました。
経営が持ち直したのはクラウドシフトに成功してからです。公益資本主義の提唱者として知られる原丈人氏との出会いをきっかけに、「社員、お客様、社会に報いなければならない。成長しよう」と強く思うようになり、今から3年前に「『やりたいこと』を『できる』に変える」という企業理念を定めました。
並行して働き方も見直しました。さくらでは、働き方の多様性を尊重する取り組みを「さぶりこ(Sakura Business and Life Co-Creation)」と呼んでいます。この中には、業務を早く片付けたら、定時30分前に退社を認める「ショート30」、20時間分の残業代を先払い支給する「タイムマネジメント」など、様々な制度が含まれます。「全員平等」で損する人もいなければ、得する人もいない。これを原則に制度を運用しています。
●後藤正樹氏(以下、後藤):コードタクトは2015年1月に創業したEdTech企業で、「schoolTakt(スクールタクト)」というプロダクトを提供しています。これは教材をタブレットにアップロードし、教師が生徒の学習状況を把握したり、お互いの答えを共有したりすることで、協働的(みんなで学び合う)な学習環境の構築を促すことができるものです。
政府はタブレット端末による学習環境の整備を推奨しており、全国の小中学校の児童および生徒に学習用PCかタブレットを1人1台配布する方針を固めています。実現に向けての問題はありますが、コードタクトとしてはEdTechで公教育をよくしていきたいと考えています。
社員数はまだ20名程度ですが、多様なバックグラウンドを持つメンバーが多いのが特徴で、僕を含めて全員がリモートワークで仕事をしています。その他の制度の整備についてはこれからになりますが、お客様の教育現場だけでなく自分たちも協働学習にこだわっています。例えば、週に一度のグループでのリフレクションミーティングを通して、組織のミッションと個人のミッションをリンクさせるワークショップや、schoolTaktを活用した読書会などに取り組んでいます。