日立製作所は、日立独自の計算技術CMOSアニーリング[1]を活用し、数十人や数百人規模の勤務シフトを作成する「勤務シフト最適化ソリューション」を、10月19日から提供開始した。
同ソリューションは、量子コンピュータを疑似的に再現し、大規模で複雑な組み合わせ最適化問題を高速に解くことができる日立のCMOSアニーリングを活用して、時間ごとの必要人数やタスク(職務)、休暇希望、勤務頻度、通勤時間などの複雑な条件に対応した勤務シフトの作成を可能にする。サービスセンターやコールセンターなどの大規模な勤務シフトにおいて、画一的なローテーションによるシフト組みではなく、細かな制約を複合的に考慮した最適な要員配置を実現する。
また、同ソリューションは、CMOSアニーリングの利用環境をクラウドサービス形態で提供するため、マシン購入や専用回線の設置は不要。ユーザーの使い勝手や実際の運用を考慮しながら、シフトを決定する上で必要な条件を個別にカスタマイズする、セミオーダーメイドタイプのソリューションであるため、導入後、ユーザーはWebブラウザなどから必要項目を入力するだけで手軽に最適なシフトを作成できる。
なお、本ソリューションの提供開始に先立ち、三井住友フィナンシャルグループのコールセンター数か所で活用し、共同で実務上の評価観点を検討・実証したところ、従来の勤務シフトと比較して余剰配置の発生を約80%削減するなど、要員配置の適正化に対する高い有効性が確認できたという。
勤務シフト最適化ソリューションの特徴
- 同ソリューションでの勤務シフト作成により、職場ごとの需要に合った最適な人員配置が可能となる。従来のシフトで過剰に割り当てていた人員が適正化されることで、コスト最適化や業務効率化を実現。また、人員が不足していた時間帯に適正な人員が割り当てられることにより、勤務者の負担が軽減でき、サービスレベルの向上につながるほか、コールセンターなどでは対応受付までのお客様の待ち時間が短縮され、オペレーターに繋がりやすくなるなどのメリットが期待できる。
- シフトを決定する上で必要な条件を個別にカスタマイズして追加し、各条件に即した設定方法や、設定した場合の効果検証なども含め、使い勝手や実際の運用を考慮しながら対応。これにより、シフト作成者がシステムに日付・時間とそれぞれの必要人数、勤務者の勤務希望などを入力するだけで勤務シフトが作成される。そのためシフト作成にかかる負担を大幅に軽減し、その時間を別の業務に充てることが可能となる。計算自体は数十分程度で完了し、シフト作成後に勤務者の休暇希望などの条件に変更が発生した場合にも、即時に再作成される。
注
[1]: 磁性体の性質を説明するために考案されたイジングモデルを用いて、組み合わせ最適化問題を解くために日立が開発している新型コンピュータ。