いつものように研修・育成ができない
まずは、多店舗ビジネスにおける人材育成の基本構造を整理してみます。なお、本記事での多店舗ビジネスとは、接客を伴うサービス業のことを指すものとします。
新人への業務OJTは社員・アルバイト問わず店舗に委ねている企業が多く、店長の業務の一つとなっています。その流れは次図のとおりです。
多店舗ビジネスにおける最大の課題点は、新人を育成する時間を十分に確保できないことです。現状はいわゆる「OJT」を行うトレーナーポジションの人材がいない店舗が多く、基礎研修から業務内容まで店長が教えることが少なくありません。しかし、ただでさえ人手不足が問題視される中、店舗の営業管理、シフト調整、採用管理など多くの業務を抱える店長は、新人育成にまで手が回らないことも多くあります。それは新人が「放置されている」「なかなか仕事が覚えられない」と感じる要因となり、離職に繋がる可能性があります。
さらに、今年は新型コロナウイルスの国内感染拡大で4月7日に緊急事態宣言が発令され、店長はこれまで当たり前だった「対面での新人育成トレーニング」ができない状況に陥りました。4月といえば、新卒が入社し初期研修に忙しい時期です。そのようなタイミングで緊急事態宣言発令となり、企業としては「密」となる入社式や集合研修を中止せざるを得ない状況となりました。そのため、人事部や教育部門では研修やOJTを補う方法を考え、実行する必要がありました。