エンゲージメントとタレントマネジメントの考え方
ここで、本稿で重要な要素となるエンゲージメントとタレントマネジメントについて確認しておこう。
エンゲージメントは「会社からの提供価値」と「個人の会社への期待」からなり、2つの重なりが大きくなるほどエンゲージメントが高くなる。一般的に入社時は、会社からの提供価値と個人の会社への期待はまだうまくかみ合ってない。しかし、時間を経て、配置やローテーションなどで個人の期待に会社が応えることができると、エンゲージメントが高まり好循環が生まれていく。
しかし、コロナ禍をきっかけにテレワークが普及し、社員が毎日のように顔を合わせることがなくなってきた。これまでは、出勤するだけで社員同士にエンゲージポイント(接点)があったのに、それがなくなってしまったわけだ。そのため、企業は社員に伝わりやすいような形や言語を通じて、リテンションバインディング(離職を防止するつなぎ止め)を続けていく必要がある。代表が社員に語りかける機会は特別な場所で年に1度だったとしたら、これからはオンラインで月次にするなど、より頻繁にするほうがよいかもしれない。また、より個人にフォーカスし、会社と個人の意向のすりあわせがうまく行くようにするのがポイントだ。
タレントマネジメントとは、組織に眠っている人材情報をオープンにして、人事だけではなく経営や現場と共有し、組織の潜在能力を最大化する施策だ。かつての人事業務と大きく異なるのが、人材情報を人事部門だけが抱えるのではなく、経営や現場とも共有するところである。
タレントマネジメントで共有する人材情報(データ)では、スキルやモチベーションの情報も包括的にとらえることが重要になる。佐藤氏はそこで[MUST][CAN][WILL]の3つの要素を挙げた。[MUST:これまで何を期待されてきたか]は異動履歴や役職履歴など、[CAN:今何ができるか]は人事評価、学歴や職歴、研修、アセスメント、語学、表彰、資格など、[WILL:これからどうなりたいか]は自己申告、新規事業提案、面談、家庭の事情を踏まえた意向などになる。
[MUST]や[CAN]は履歴の蓄積になる一方、[WILL]は本人の意向なので変化していく性質がある。これらを立体的にとらえられる状況をシステムで実現するものがタレントマネジメントシステムだ。また、佐藤氏はタレントマネジメントの成功の秘訣として、「あらゆる立場の人が使えるような仕組みを持ち、人材データの鮮度と解像度を保ち続けることが大切です」と強調する。タレントマネジメントシステムはそのための機能を備えていなければならない。
「カオナビ」は、まさにそうしたタレントマネジメントシステムだという。タレントマネジメントに関わる多種多様な情報を集約し、戦略的人事を実現する。経営陣なら(経営人材など)優秀な人材の把握ができて、管理職なら部下の人となりを熟知でき、人事なら業務の効率化、一般社員なら社内コミュニケーションの活性化につなげることができる。もちろんそれぞれ役割や目的が異なるため、開示する情報は立場により権限設定をする。
あらゆる立場の人が利用するため、カオナビは直感的なインターフェイスになっている。顔写真をクリックすれば該当者の情報を見ることができる。情報は個人単位だけでなく、部署単位でも見られる。また、異動のシミュレーションや配置抜擢の検討も可能。カオナビはクラウドのプラットフォームであるため、どこからでもアクセスできる(制限可能)ほか、セキュリティも強固に施されている。