ガートナー ジャパンは、日本のテレワークに関する2021年の展望を発表した。同展望では、日本企業のIT部門が2021年以降のテレワーク戦略を策定する際に注目すべき今後3~5年のトレンドを解説している。
①2024年まで、テレワークを推進する企業の65%は、ツール導入やインフラ整備にとどまり、従業員満足度の向上を含むベネフィットを達成できない
働き方改革などをベースにテレワークを導入してきた企業では、その目的を明確化した上で、主に人事、総務、IT部門がテレワークを主導している。一方で、COVID-19を契機にテレワークを緊急的に導入した企業は、それを今後も継続する意思を示しており、その比率は企業全体の8割に上ると考えられる。テレワークに関するすべてをIT部門に依存しているケースも多く、このような企業では、テレワークの取り組みを単なるツールやインフラ整備と捉え、経営層から一般社員までの意識や企業文化を変える取り組みとして認識していない状況が見られる。
同社が2020年9月に実施した調査では、テレワークにおける効果を移動時間の節約など、個人の時間の効率化に見いだしている企業が多いことが分かった。一方で、無駄な仕事の削減や生産性の向上など、根本的な働き方そのものに踏み込んだ効果については限定的であり、今後の取り組みであることが明らかになっている。
②2024年までに、テレワークを実施する大手企業の80%は、従業員エンゲージメントを確保するために、社内ソーシャルネットワークを再評価する
テレワークが普及したことで、従業員同士が直接会う機会が減少し、従業員同士の雑談や歓談などから得られる思いがけない知見やアイデア、さらには人脈の拡大などの非公式な知的生産活動が低下している。また、部下とのコミュニケーションが減少し、業績評価が難しくなったと考える上長が増えている。
そうした状況の下、テレワークを実施している一部の企業では、従業員同士や上長と部下との定期的なコミュニケーションを推奨するケースが見られるようになっている。ソーシャルネットワークのような公開型コミュニケーションは、出社の機会の減少で不足しがちな従業員間のコミュニケーションを補強し、従業員エンゲージメントを補強できる。現在、Microsoft TeamsやSlackなど、ソーシャルネットワークから進化したワークストリームコラボレーションアプリケーションが普及。これらは組織内のコミュニケーション・コラボレーション環境を提供するものだが、雑談や歓談といったチャネルを推奨することで、従業員同士の交流を促進し、テレワークで失われがちなエンゲージメントを補完できる。
③2025年までに、企業の30%が「リモートファースト」企業へと転換する
日本企業において、従業員はオフィスに行くのが当たり前という固定概念に変化が見られ、オフィスは直接的なコラボレーションの場として位置付けられるなど、再定義されるようになっている。働く場所に関する考え方を根本的に見直し、通勤手当を廃止するなど、自宅をオフィスのデフォルトにするリモートファーストの考え方が一部の企業で取り組まれるようになった。今後も続く働き方改革や事業継続計画 (BCP)、人材確保、オフィススペースの見直しなどのさまざまな理由から、リモートファーストへの転換を試みる企業は少しずつ増加し、2025年までに、企業の30%がリモートファースト企業へと転換すると、同社は予測している。
働く場所はもはやオフィスだけではなく、自宅、サテライトオフィスやカフェ、場合によっては車など、あらゆる場所がオフィスになり得る。企業は今後、こうした環境について検討していく必要がある。それには、テレワークやハイブリッドワークを前提としたデバイスやツールの選定、セキュリティ対策に加え、リモートでも働ける自律した社員の育成や、従業員エンゲージメントの強化などの取り組みを進めることが重要だと、同社は述べている。