帝国データバンク(以下、TDB)は、2021年7月15日~31日の期間に、女性登用に関する調査を実施した。調査対象は全国2万4,285社で、有効回答企業数は1万992社(回答率45.3%)。
女性管理職の平均割合は8.9%で過去最高、「女性管理職30%」達成企業は8.6%となった。
また、規模が小さい企業ほど女性管理職の割合は高かった。業界別では「製造」「建設」「運輸・倉庫」で全体(8.9%)を下回った。こうした企業からは、女性の採用に苦心しているという声が多くみられた。
さらに、女性管理職30%を超えている企業を細かくみると、女性管理職割合の平均と同様の傾向がみられた。
今後、女性管理職の割合が増えると見込んでいる企業は22.6%となり、前年より0.9ポイント増加したが、「変わらない」と見込んでいる企業は58.9%と6割近くにのぼった。
また、女性管理職割合が今後「増加する」と見込む割合を規模別にみると、大企業では33.9%となったが、中小・小規模企業ではそれぞれ19.1%、11.4%にとどまった。
女性活躍を進めている企業の割合は46.9%となった。大きく落ち込んだ2020年(42.6%)から4.3ポイント増加している。しかし約4割の企業では女性登用を「進めていない」結果となった。
自社における男性の育児休業取得に関する推進状況を尋ねたところ、「積極的に取得を推進している」企業は9.5%だった。「今後推進する」は41.1%となり、合わせて約半数の企業が男性の育休取得に対して前向きに考えていた。
しかし、中小・小規模企業では大企業を大きく下回っており、育休により生じる人員不足への対応が難しいとの課題が浮き彫りとなった。
TDBは同調査の結果について、次のように述べている。
「女性管理職(課長相当職以上)の平均割合は、前年からの増加幅とともに過去最高を更新した。政府目標である『女性管理職30%』を超えている企業の割合も増加し、女性役員や従業員も同様の傾向となるなど、総じて低水準ながらも上向いている結果となった。しかし、女性活躍を進めていない企業は約4割、女性管理職割合が今後も変わらないとする企業は約6割にのぼる。特に建設業、運輸・倉庫業からは、取り組みに前向きな意見もみられる一方で、採用面などにおいて難しさを感じているという声が多くみられた。
また、男性の育休取得に関する推進状況では、積極的に推進している企業は約1割となり、今後推進する企業を含めると約半数が前向きに考えている結果となった。しかし、企業規模による差は大きく、中小・小規模企業では男性の育休取得推進に積極的ではない様子が色濃く表れている。
近年では管理職や役員への女性登用は企業価値の向上において重要な要素になりつつある。男性の育休推進など制度面の改善に加えて、女性登用を進めるためには経営の幹部候補となり得る女性を育成し、輩出することが欠かせない。しかし、次世代の幹部候補が控えていない場合に急な管理職への登用は対応が難しいという側面がある。そのため、女性管理職の輩出に向けて、将来を見据えて現段階からリーダーシップ教育や職業訓練などを通じた人材育成に取り組む必要があろう」