パネリスト
- 杉山秀樹氏(パナソニック株式会社 リクルート&キャリアクリエイトセンター 採用ブランディング・PeopleAnalytics課)
- 浅田靖隆氏(株式会社セールスフォース・ドットコム People Services & Operations Director, Employee Success)
- 河西敏章氏(双日株式会社 執行役員 人事、総務・IT業務担当本部長)
モデレーター
- 大湾秀雄氏(早稲田大学 政治経済学術院 教授)
ポイント① PDCAサイクルにつなげる《パナソニックの事例》
大湾秀雄氏(以下、大湾) パナソニックでは採用活動において、デジタルでの情報発信や接点づくりに注力されているそうですが、そんなエンプロイヤーブランディングでは、何を指標として成果を測っているのでしょうか。
杉山秀樹氏(以下、杉山) 昨年から「ブランディング」と「ピープルアナリティクス」を1つの組織で取り組むようになり、「パナソニックをいい会社だと思っていただくためには、どのような施策でPDCAサイクルを回すべきか」と考えるところからスタートしました。
PDCAサイクルを回すには、ゴールである“パナソニックをいい会社だと思ってもらえている状態”を定量的に設定する必要があります。その際、人事領域では、つい短期的な指標に目が行きがちですが、ブランド形成の推移を見ていくには、長期的な視点も欠かせません。とはいえ、ブランディングの効果測定は、極めて難しい。パナソニックでは、これまで3年ほどかけてエンプロイヤーブランドの向上に寄与する間接指標を模索してきました。
そんな中で一つ見えてきたのが、「ソーシャル上のエンゲージメント」です。キャリア採用や新卒採用など、さまざまなコンテクストに応じて、適切な情報発信を行わなければ、求職者のエンゲージメント向上にはつながりません。そこで、ソーシャルメディアに投稿する内容は、数字を細かく見ながら都度調整してPDCAサイクルを回しています。
大湾 一方で、「入社前にいいことばかりを伝えてエンゲージメントが上がったとしても、会社の実体が伴っていなければ入社後にエンゲージメントが下がってしまい、離職率の悪化につながりかねない」というお話もありました。採用プロセスで集めたデータは、入社後の配置や育成にどのように活かされていますか。
杉山 そこはまさにこれからですね。ただ、「ブランド、オンボーディング、カルチャーに一貫性を持たせたデータ活用を行っていきたい」と考えたときに、やはり重要なのはブランドとカルチャーをつなぐ「オンボーディング」の部分です。オンボーディングプロセスの各フェーズで、いろいろなギャップが生じたり、エンゲージメントが低下したりする場面があると思うので、そこをしっかりとデータで追いながら、きちんと立ち上がるかどうかを見ていこうとしています。
そのために最適なパルスサーベイの頻度はどれくらいなのかを探るために、2週間に1度のパターン、1か月に1度のパターン、2か月に1度のパターンを並行して運用しています。「どうすれば回答率が上がるのか」「どんなフィードバックをすればいいのか」など、さまざまなデータを集めつつトライアルを重ねているところです。
大湾 採用における求職者との接点は、人事だけではありませんよね。そういう意味では、外に対する発信だけでなく、社員とのコミュニケーションも重要ではないかと思うのですが、何か工夫されていることはありますか。
杉山 直近の取り組みとして、広報や広告宣伝といったコーポレートブランディングを担当しているチームと一緒にワークショップを開いています。外向けのブランディングで培ったノウハウを、社内のコミュニケーションに転用するなら、「何をデータとして活用すべきか」「どんな情報発信によってどれくらいの共感形成ができるのか」といったことを模索するためです。