ルートの情報源の優先度(アドミニストレーティブディスタンス)
あるネットワークのルートをスタティックルートで設定しつつ、ルーティングプロトコルで学習することもできます。ルーティングプロトコルも1つだけではなく複数動作させて、あるネットワークのルート情報を複数のルーティングプロトコルで学習することもできます。すなわち、あるネットワークのルート情報を複数の情報源から学習することがあります。
ここでは次図のように、R1で192.168.10.0/24のルート情報をスタティックルートで設定するだけではなく、RIP、OSPFでも学習した場合を考えてみます[4]。
注
[4]: この図は分かりやすさを優先していて、実際の動作とは異なるところがあります。OSPFルートは、必ずしも上図のような「ネットワークアドレス/サブネットマスク+メトリック」になるわけではありません。また、R1でのOSPFルートのメトリックは、受信したルート情報のメトリックから増加します。
あるネットワークへの最適なルートを決定する基準としてメトリックが挙げられます。メトリックは宛先ネットワークまでの距離です。ただし、スタティックルートで設定したルート情報では、メトリックに意味はありません。Ciscoルータでは、スタティックルートのメトリックは「0」です。また、OSPFとRIPではメトリックの考え方がまったく異なり、単純にメトリックの数値を比較できません。メトリックの値を単純に比較することは、現実世界の距離で、1「メートル」と1「フィート」を1という数字だけで比較しようとするのと同じです。
単位の違う距離を比較するときには、単位をそろえなければいけません。メトリックを比較するときに単位を合わせるためのパラメータがアドミニストレーティブディスタンスです。アドミニストレーティブディスタンスとメトリックを組み合わせて、宛先ネットワークまでの距離とすることで、スタティックルート、RIPルート、OSPFルートといった情報源の異なるルートの距離を比較できるようにします。
宛先ネットワークへの距離 = アドミニストレーティブディスタンス/メトリック
距離は短いほうがよいので、アドミニストレーティブディスタンスもメトリックも、値の小さいほうが優先されます。アドミニストレーティブディスタンスを前につけるため、アドミニストレーティブディスタンスの値が小さいほど距離が短くなります。アドミニストレーティブディスタンスのデフォルトは、次表のように決められています。
情報源 | アドミニストレーティブディスタンス値 |
---|---|
直接接続 | 0 |
スタティックルート | 1 |
BGP | 20 |
EIGRP | 90 |
OSPF | 110 |
RIP | 120 |
外部EIGRP | 170 |
IBGP | 200 |
前述の構成例で192.168.10.0/24のルート情報の距離を考えると、次のようになります。
- 192.168.10.0/24への距離
- スタティックルート:[1/0]
- RIPルート:[120/3]
- OSPFルート:[110/10]
スタティックルートが最も距離が短くなるので、192.168.10.0/24の最適ルートとしてルーティングテーブルにはスタティックルートのルート情報が登録されます。
アドミニストレーティブディスタンスの値はデフォルトから変更することもできます。アドミニストレーティブディスタンスを変更すれば、あるネットワークのルート情報を複数の情報源で学習している場合、ルーティングテーブルにどの情報源のルート情報として登録するかを選択できます。
なお、アドミニストレーティブディスタンスは「ルート情報の情報源の優先度」と説明されることも多くなっています。