キャリアSNSへ変貌、スカウトの仕方も大きく変化
昨年3月、岩崎氏にYOUTRUSTのビジネス状況を尋ねたときには、コロナ禍によるリモートワークの広まりをきっかけとして、副業したい人たちのユーザー登録が増えているとのことだった。それから1年。今やYOUTRUSTは副業・転職マッチングサービスから、働く人たちのつながり・コミュニティをつくるキャリアSNSへとすっかり変貌を遂げている。
キャリアSNSを目指すことを表明したのは2020年7月。それからのビジネスは絶好調だ。ユーザー数は5倍で10万人を突破、売上は10倍にもなった。
ユーザーも変化してきた。副業先や転職先を探すために登録する人は少なからずいるが、日々の気づきや学びを見に行けるSNSとして登録する人が増えている。また、副業・転職意欲があるユーザーは8割に上る中、大手転職サイトを全く利用していないユーザーが4割もいる。そのため、他では接触できない「いずれ副業・転職」層に接触できる魅力的なサービスという認知が、採用担当者の間で形成されてきているという。ビジネス好調の裏側にはこうした状況があるようだ。
ただし、副業・転職潜在層が多く、キャリアSNSとしてのユーザーも増えているYOUTRUSTでは、採用担当者の利用意識も変わってきている。
「以前は、スカウトを(送信可能数めいっぱいまで)送り切らなくてはという感じでしたが、最近では『YOUTRUSTさんはそういう世界観ではないですよね』とご理解くださる企業ユーザーさんのお声もいただくようになりました。また、自分のキャリアを考えているユーザーさんに向けて丁寧にメッセージングを行うとともに、来月から来てほしいというだけでなく、2〜3年後を考えたタレントプールとして捉える採用担当者の方もいらっしゃいます」(岩崎氏)
もちろん、YOUTRUST内で副業・転職してほしい人に採用担当者から積極的に声をかけることは差し支えない(むしろそれが企業向けサービスである)。とはいえ、YOUTRUSTはあくまでキャリアSNSであり、副業・転職潜在層も多いことから、声のかけ方には注意したい。いきなり副業・転職を迫ったりするのではなく、まずお互いを知り合い、関係を構築することから入るほうがよい。岩崎氏はこれを「文脈づくり」と表現する。
「特に今は引く手あまたの人たちほど売り手市場なので、『はじめまして。弊社に来てください』というアプローチより、以前から何となく知っていたとか、友人がいるとか、以前から代表から誘ってもらっていましたとか、何かしらの文脈があるほうが、採用成功につながります」(岩崎氏)
また、岩崎氏は、採用が顕在層に対して大きく網を広げる方法から、潜在層も含めて一人ひとりに丁寧にアプローチする方法へと変わってきていることが、文脈づくりの場を提供しているYOUTRUSTをより成長させていると分析した。
「起業直後は、転職潜在層向けのSNSをつくるといっても首をかしげられ、『今すぐ転職してきてほしいのですけど』『転職したい人だけ紹介してください』という感じでした。想定していた未来がようやくやってきた、というのが今の状況ですね」(岩崎氏)