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HRzine Day(エイチアールジン・デイ)は、人が活き会社が成長する人事のWebマガジン「HRzine」が主催するイベントです。毎回、人事の重要課題を1つテーマに設定し、識者やエキスパードが持つ知見・経験を、参加者のみなさんと共有しています。

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HRzine Day 2024 Winter

2024年2月1日(木)12:00~17:40

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人事業務の効率・確度・精度を高めるために欠かせないHRテクノロジー。その主な製品の機能を分野ごとに比較できる資料群です。製品検討の参考資料としてご活用ください。

人事労務管理システム<br>主要製品スペック一覧 2023

人事労務管理システム
主要製品スペック一覧 2023

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タレントマネジメントシステム<br>主要製品スペック一覧 2023

タレントマネジメントシステム
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採用管理システム
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人材マネジメントと人事データ活用 事例ファイル | #1(AD)

採用や組織活性化でテクノロジーやデータを活用する場合に妥協してはいけない2つのこと

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 VUCA(不確実性)の時代といわれる中、自社にマッチした人材を採用し、活躍へと導く「人材マネジメント」がますます重視されるようになっています。ただし、これまでの経験と勘だけに頼った人材マネジメントではその最適解を出せません。そのため注目されているのが「人事データ活用」です。そこで本連載では、人材マネジメントに人事データを活用している企業を取材。その取り組みを皆さんにお伝えしていきます。今回の取材先は、1940年に煉炭・石炭などの固形燃料の製造販売業で三ッ輪産業株式会社としてスタート後、80余年にわたり一貫して地域社会のニーズに寄り添い、事業の転換と拡大を重ねてきた三ッ輪ホールディングス株式会社。同社 代表取締役社長の尾日向竹信氏と、社長室企画担当マネージャーの塩﨑智氏に話を伺いました。

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三ッ輪ホールディングスの人材マネジメントの定義

――自己紹介、会社の紹介をお願いします。

尾日向竹信氏(以下、尾日向) 三ッ輪ホールディングスグループの社長を務めている尾日向と申します。私は大学院まで進んだ後、野村総合研究所で2年勤務し、エネルギー業界に入りました。まずは長野県の同業者で修行として2年ほど経験させていただき、29歳のときに正式に三ッ輪産業に入社しました。3代目として、当グループ全体を統括する現在の立場に就いたのは今から6年前の2015年です。

 当グループは、三ッ輪産業として1940年に煉炭、豆炭、石炭などの製造販売業で神奈川の地で創業しました。現在は、事業転換した三ッ輪産業で関東一円にてLPガスの供給販売を、また2016年の電力自由化に際しては新会社にて電力の供給販売に全国にて参入するなど、エネルギー全般の供給販売事業を展開しています。加えて、近年ではエネルギー供給にとどまらず、「防災」「省エネ」「環境価値」などに関するソリューションの開発と社会実装にも各地で取り組んでいます。こうした時代ごとに社会に求められる「価値」を提供するグループとしての事業ドメインの転換と拡大を加速させていくため、2019年にホールディングス化を行いました。

塩﨑智氏(以下、塩﨑) 私は三ッ輪ホールディングスに入社して4年目になります。以前は別会社で研修営業をしていました。現在はグループ全体の教育専門担当として従事しています。

尾日向 三ッ輪ホールディングスは単なる持ち株会社ではなく、各事業会社に経理、総務、人事、広報などのコーポレート機能を横軸で提供している点が特徴です。その他に事業開発も担っており、事業戦略を考える部分からハンズオンで各会社と協業しています。

尾日向 竹信氏
尾日向 竹信(おびなた たけのぶ)氏
三ッ輪ホールディングス株式会社 代表取締役社長
1980年生まれ。慶應義塾大学 大学院理工学研究科修了。その後入社した野村総合研究所ではコンサルタントとして活躍し、2007年に三ッ輪産業株式会社に入社、2015年に代表取締役社長就任。2019年に、三ッ輪産業とそのグループ企業のホールディングスカンパニーとして、三ッ輪ホールディングス株式会社を設立。

――貴社では「人材マネジメント」をどう定義づけていますか?

尾日向 人材マネジメントは一般的に、「企業の目標達成のために人材を有効活用する」といった解釈がなされると思います。当社では、この定義に加えて「人材マネジメントを行うには、人材そのものが輝かなければならない」と考えています。人材の有効活用をする前提条件として、社員の「働く場とプライベートの環境が公私ともに満たされている状態」が人材マネジメントをする上で必須だと考えています。

塩﨑 当社は「新しい価値の創造」の実現手段として、「ヒトのちから」×「テクノロジーのちから」を掲げています。「ヒトのちから」というのは、多様な考え方の人材を採用して、さまざまな価値観をぶつけ合うことで素早く、多く、事業の種を創出することを期待しています。一方、「テクノロジーのちから」は、人力で行うと時間的コストがかかる部分をITに置き換え、省力化することを意味しています。

 人材マネジメントにおいても、今まで経験や勘に頼って行ってきた採用や人材教育などを、データドリブンな組織運営に切り替えるよう試みています。例えば、採用においては、人事アセスメントツールを用いてデータを起点に人材を評価する。教育においては、組織内の誰と誰がコミュニケーションをとれているかを、データを用いて可視化するなどの取り組みを始めています。

塩﨑 智氏
塩﨑 智(しおさき さとる)氏
三ッ輪ホールディングス株式会社 社長室企画担当マネージャー
ウィルソン・ラーニングワールドワイド株式会社、EYS-STYLE株式会社を経て、2018年に三ッ輪産業に参画。現在は三ッ輪ホールディングスに所属し、グループ全体の研修や人材モデル策定、データドリブン組織への変革まで様々な取り組みを行う。

――どのような事業課題や経緯で、「ヒトのちから」×「テクノロジーのちから」をテーマに掲げたのでしょうか。

尾日向 「ヒトのちから」×「テクノロジーのちから」という2軸を明確にしたのは、2020年10月、ちょうど創立80周年の節目のときでした。

 背景には、エネルギー業界は差別化が非常に難しいことがあります。エネルギーそのものの質はどの会社が提供しても変わりません。また、安定供給は当たり前と考えられる商品のため、ただ提供するだけで価値を感じてもらえるものでもありません。

 人口増加とともに市場が拡大している時代には、差別化にこだわる必要はありませんでしたが、昨今の市場は飽和しています。今後は省エネの流れもあり、市場がシュリンクし続ける中で、いかに新しい価値を生んでいくかという視点が重要になります。

 市場が求める新たな価値を生み出さなくてはならない。これが我々の直面した課題でした。その実現手段を考えたときに、「ヒトのちから」×「テクノロジーのちから」というテーマを中期経営計画で掲げるに至りました。

――市場が求める新たな価値を生み出すために、テクノロジーのちからはなぜ必要だと?

尾日向 エネルギーとともに新たなサービスを合わせ売りしようとしても、そう簡単に売れるものは出てきません。新たなものを考えて提供するためには、それを支える仕組み(土台)から作っていく必要がある。テクノロジーによる事業効率化やデータ活用による組織の仕組み化は、そのために欠かせないものと感じました。

 ただし、そのためには社内に高度専門人材を置くことが必須だと考えていました。もちろん、そうした人材の確保や教育は、決して容易なことではありません。しかし、テクノロジーを活用した「新しい仕組みの導入効果の最大化」「市場や顧客との対話に基づく改修の繰り返しによる新商品の開発」の実現から見れば、結果的に外注に頼りきりにならない体制構築が合理的だと判断したのです。

採用でアセスメントツールを導入

――ヒトとテクノロジーのちからの掛け算の例として、まず採用シーンからお聞かせください。

尾日向 従来はSPIを使用していましたが、SPIの結果を活かしきれていなかったため、新たにアセスメントツール(マルコポーロ[1])を導入しました。「どんな人材が欲しいのか」「どんな人材がマッチングしやすいのか」という客観的なデータで見て、採用活動を振り返っていったほうが意味があると考えたためです。候補者個別のSPIを見るのではなく、一歩手前の要件整理(採用の基盤作り)からやり直しをしたイメージですね。

 採用アセスメントの導入の際は、各事業部長を集めて「どんな人材が良いか」など一からヒアリングを重ね、テストアセスメントを複数名に実施し、いくつかのグループを比較しながら検証を進めました。

――アセスメントツールを導入してどのような変化がありましたか。

尾日向 アセスメントツールを活用することで、データ起点の会話ができるようになりました。今まで肌感覚で行っていた人材に対する評価と、アセスメントからあぶり出された評価データには、何かしらの差が出てきます。それぞれが感覚や経験に頼って行った評価と、データ上の差分が出ること自体は問題ありませんが、この差が常に起きてしまうのであればチューニングが必要になります。自分たちの目で見た評価とデータが異なる際に、「客観的に見てこの人はどうなんだっけ」と、ディスカッションできるようになったのは良い変化です。

 実際、私も含めて「良い人材」と評価したにもかかわらず、アセスメントでの評価が一致しないケースもありました。自分の目とスコアのどちらを信じるのかは難しいですが、これは「決め」の問題だと思います。

 アセスメントを機能させるためには、「アセスメントツールを自社にとって意味のあるツールにする」という姿勢が重要です。つまり、データを100%信じて結果に従うのではなく、三ッ輪ホールディングスとしての目線をどう持つべきなのか決めていくことが大事なのです。

 それに、私たちはまだアセスメントツールを導入したばかりで、データの蓄積が不十分です。そのため、面接官の見たものを信じるのか、スコアを基準とするのかについて答えがなく、出てきたものに対して、Aとするのか、Bと判断するかは私たちが決めていく必要があります。データドリブンといえども、データを蓄積をしながら「三ッ輪ホールディングスの判断基準」を作り続けていくしかありません。

――データ活用を実践されている中で、難しいと感じた局面はありますか。

尾日向 先ほどお話ししたとおり、データの蓄積やチューニングが一番難しいと感じていますが、それに加えて活用シーンとして、面接官の目線合わせも目下の課題ととらえています。例えば、営業パーソンの1次面接は各営業所で実施していますが、そこではどうしても面接官によってばらつきが出てしまう。そこのズレを合わせにいく作業は取り組んでいる最中です。

 アセスメントツールを使い込んでいけば、この面接官がどういった傾向の人を評価し、採用するのかというデータも蓄積することが可能です。繰り返しになりますが、データ蓄積さえ続けていけば、候補者や既存社員、面接官を見極めたり、目線合わせする際に大いに役立つと思っています。多角的に使いこなすために、どんどん蓄積と活用を続けていきたいと考えています。

[1]: 現在はアセスメントツールとして「アッテル」を使用。

組織活性化にチャットツールを積極活用

――組織活性化にもテクノロジーを積極活用されているそうですね。特にチャットツールの導入には力を入れられたとか。

尾日向 はい。ただ、営業所ではオフラインの会話が多く、拠点間の会話の必要性はそこまで高くなかったため、最初はとても苦戦しました。メールからチャットツール(Slack)へ移行する作業そのものも大変でしたし、チャットツールを通して組織をどう客観視すればよいか、非常に難しいテーマだったと感じています。

 具体的には、チャットツールで誰がどのくらい発言やリアクションをしているか数値化したり、外部機関のアドバイスをもらったりしながら心理的安全性について観察してきました。施策を進めていく中で、コミュニケーション量云々よりも、「発言すること自体が認められるかどうか」という心理的安全性の有無が、大きなハードルだと気づきました。つまりは、チャットと対面、どちらのシーンにおいても、肩書きにとらわれず発言すべき場であれば、誰でも発言すべきという風土の醸成です。そこで、チャットツールにオープンチャンネルを作り、誰でも(肩書き問わず)発信してよいのだと後押しをして、自由な発言を促進する風土作りに取り組んでいきました。

――誰もが発信できる風土作りをするために、どのような仕掛けを行いましたか。

尾日向 弊社広報の加藤(絵理子氏)と私の雑談をきっかけに、スピード感を持って新サービスをリリースしたことがあるのですが、発案からリリースまでの一連の動きをリアルタイムにチャットツール上で見せました。

 コロナ初期の頃、加藤から「コロナで在宅期間が長くなりエネルギー使用量が増えた顧客へ、割引などの形で還元できる施策はないか」という投げかけがありました。私はすぐにそのアイデアを承認し、オープンな発信のモデルケースとしてプロジェクトの進行を見てもらうため、連携が必要な各部署とのやり取りをオープンに行い、翌日にはそのサービスのプレスリリースを発表しました。

塩﨑 しかし、そのようなモデルケースがあっても、オープンに見られる場であるチャットツールでの積極的な発信はなかなか進みませんでした。対面ではよく話すタイプの人でも、チャットはどうしても別物ととらえてしまうようです。

 そこで、発信することを一定ルール化したほうがよいのではと考え、新人日報に対するフィードバックの担当者を、指名制のリレー形式で行う取り組みをしてみました。

 この取り組みはうまくいきました。隣の席の社員など、普段接していて顔の見えるメンバーにお願いされることで答えやすくなったようです。あまり乗り気に見えなかった社員も、案外熱いコメントを書いてくれるケースもありました。そのコメントに刺激を受けて、他の社員も徐々に中身の濃いコメントを書くようになり、組織活性化が進んでいきましたね。

――どのくらいで発言量が増加しましたか?

塩﨑 最初の2ヵ月は、説明に時間がかかり少し停滞気味でしたが、コロナ禍を経て急速に発言量は増加していきました。日報や社内報告を全てメールからチャットに移し、会議が物理的に集まれないときには代わりにチャットで報告するようルールを整えたことで、使用が加速していきました。尾日向が自ら動いていったことも奏功したと思います。

同社ではチャットツールを2019年10月31日から導入。2ヵ月を経た2021年1月より発言量が増えた
同社ではチャットツールを2019年10月31日から導入。2ヵ月を経た2021年1月より発言量が増えた
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自分で調べ、基準を作ることがテクノロジー・データ活用の必須事項

――改めて、御社の人材マネジメントにおいて、テクノロジーやデータの活用が成果を上げた点を教えてください。

尾日向 組織にオープンな環境を実現していく上で、データ活用が重要だったと思います。冒頭で申し上げたとおり、社員が公私ともに満たされている環境を作らなければ、真の意味で人材マネジメントは達成できません。どこにいても、何をしていても、同じ目線で仕事に参加できる環境を作るには、チャットツールを用いたオープンコミュニケーションは欠かせないものだったと感じています。

 評価においても、自分の目で見て感覚で判断するのではなく、データドリブンで適切な評価を進めていくことが重要です。公私の「私(プライベート)」を尊重するには、社員のライフスタイルにフィットした働き方が必要になりますし、非対面で働く中で適正な評価を行うのであれば、データを通して社員の働きぶりを可視化することは必須となります。

 データ蓄積を続ければ、社員と組織のマッチング度合いを判断する基準となり、スムーズな人事配置にもつながります。あらゆる面で、テクノロジーおよびデータ活用は必須であり、採用・組織・評価などの状況を客観視する点で役立つと感じています。

――今後、人材マネジメントやテクノロジー活用にどう取り組みたいですか。

尾日向 今後も方向性としては変わらず、新しい価値を「ヒトのちから」×「テクノロジーのちから」によって生み出していきたいと考えています。新体制で走り出したばかりなので、データはまだ蓄積途中であり、多様な価値観もぶつけている最中です。少しづつ新たな芽が伸びてきていますが、明確な成果が出るまで引き続き継続し、社員の可能性を引き出していきたいと思います。

 人材マネジメントにデータ活用を取り込むためには、出てきたスコアの解釈や受け止め方、その先の運用が重要だと思います。データドリブンといっても、必ずしも数値だけで全てを判断すべきではありません。自分たちの目で見て感じたことと、数値ではじき出したものを突き合わせ、チューニングを続けていく中で「自社ならではの判断基準」を明確化していくものだからです。

 あくまでも「自分たちの掲げた目的」が最重要であり、それに照らし合わせて、どのようにデータを活用していくかという視点で検証をしていきます。そして、テクノロジー活用に限らず、新たな取り組みを進める際には大前提として自分たちで相当調べてから進めること。専門的な人材を内部に抱え、コントローラブルな範疇で取り組むことが重要だと思っています。

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【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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