JTBコミュニケーションデザインのワーク・モチベーション研究所は、「DX時代の課長調査」の報告書を公開した。
調査の概要と結果は以下のとおり。
- 調査方法:インターネットリサーチ
- 調査地域:全国
- 調査対象:全国在住の男女で従業員数100人以上の企業に勤務し、「課長」または同等の職位にある人(部下のいない人は対象外) ※30歳代20%、40歳代40%、50歳代40%の割合で抽出
- 有効回答数:1000件
- 調査期間:2022年3月3日~4日
課長の4人に1人「自分の仕事の性質上、DXは関係がない」
自分の仕事とDXとの関わりを聞いたところ、「自分の仕事の性質上、DXは関係がない」という回答が25.4%となり、約4分の1を占めた。具体的にどのような仕事に携わっているかを尋ねると、営業、人事、総務、教育、医療などの回答があった。
DXとの関わりでは「業務の中でDXを推進している」が60.7%と最も多く、「DX推進のための部門やプロジェクト・委員会などに、自分が所属している」という回答も13.9%あった。
65%が「管理職として、DXにはしっかり取り組むべき」と回答
全体の65.0%が、「管理職の役割として、DXにはしっかり取り組むべきと思う」と回答。ただし従業員規模による差が見られ、100~499人規模の会社では56.2%にとどまったほか、4割以上の課長は取り組むべきと思っていないことも分かった。
課長の困りごと「DXの知識がない」「どう進めればいいかがわからない」など
DXに関する困りごととして、最も多かったのは「DXに関する知識やスキルを身につけていない」(38.1%)であった。次いで「DX推進を、具体的にどう進めればいいかがわからない」(25.2%)が続き、1位・2位ともに「わからない」ことに困っている状況を示している。「自分の仕事の性質上、DXは関係がない」という回答が25.4%あったのも、こうした「わからない」ことが背景にある可能性があるという。
そのほかの困りごととしては、「DXの知識やスキルを持った人材が不足している」(24.6%)、「本来の業務で忙しく、DXまで手がまわらない」(24.1%)、「部門によって温度差があり、足並みがそろわない」(16.2%)などが挙げられた。
自由記述においては、「DXとは何?というレベルで、ついていけない」(男性50代/新潟/100~499人)や「若手に置いて行かれそうで怖い」(男性50代/大阪/500~2999人)といった本音を吐露するコメントのほか、「決裁者の認識が古く、結局システム化しても運用姿勢がオールドスタイルのまま変わらなく、費用対効果に乏しい」(男性30代/東京/500~2999人)や「どこの部署で何が行われていて、全社戦略としてどうなっているのか打ち出されていない」(男性40代/大阪/3000人以上)など、社内の決裁者や情報共有の課題を嘆くコメントが見られた。
課長のDXの困りごと対処法、結局「ネット検索」
困りごとへの対処法としては、「インターネットで検索して、解決策を見つける」(44.6%)が最も多く、次いで「社内のDXやデジタル関連の部門に聞く」(30.3%)、「DXやデジタルに詳しい部下や同僚に聞く」(22.6%)が挙げられた。社内の専門部門や同僚よりも、自分でネット検索する割合が多い現状が明らかとなった。
なお、若い課長ほど「本や専門雑誌などを読む」「上司に相談する」などが多く、解決策の間口が広いことが分かる。
「全社戦略」「トップメッセージ」が、課長のDX推進への取り組み意欲と相関
「管理職の役割として、DXにはしっかり取り組むべきと思う」の回答と相関が高かったのは、「全社戦略に基づき、持続的に実施されている」や「社長や経営層がDX推進の必要性を訴えている」の回答であった。いずれも従業員規模との関連も認められるものの、会社としての姿勢が課長のDX推進意欲を高める可能性は指摘できるという。
会社の業績につながるDXは「業務の効率化」「ビジネスモデルの変革」「部門間交流」
「会社の売上や業績は全体に伸びている」という項目への回答と、DXの様々な施策に関する回答の相関を見たところ、最も相関が高かったのは「データやデジタル技術によって業務の効率化が進んでいる」「部門間の交流がデジタル技術によって盛んに行われている」「データやデジタル技術によって、製品やサービス、ビジネスモデルの変革ができている」であった。
DXを象徴する業務の効率化やビジネスモデル変革とともに、部門間の交流も業績向上に結びついている可能性があるとしている。
変化の激しい現代に課長職であることに「責任を感じる」が46.0%
DXをはじめ変化の激しい現代に課長職にいることをどう思うか尋ねたところ、46.0%が「責任を感じる」と回答。この割合は、前回の2019年調査の回答(34.2%)と比べて10%以上増加しており、自身の役割に大きな責任を感じている様子がうかがえる。
そのほか、「チャンスである」(23.4%)、「もっと昇進していたかった」(16.3%)という前向きな考えや、「自信がない、不安である」(17.5%)といった弱気な意識も見える。なお、若い課長ほど「チャンスである」という意識は強くなっている。
DX時代の課長が人生をやり直すとしたら「家庭や趣味を大切にマイペースの人生」がトップ
DX時代の課長に、「新入社員として人生をやり直すとしたら」と尋ねると、「家庭や趣味を大切に、マイペースな人生を送りたい」(42.3%)が2位以下を10%以上引き離し、トップとなった。次いで「知識や技術を身につけ、専門家として高みを目指す人生を送りたい」(31.8%)、「安定した組織で、安心して仕事をしたい」(26.8%)、「新しい事業や商品で社会を変えるような、革新的な仕事がしてみたい」(18.0%)など、人生のやり直しに多様な希望があると分かった。
なお、前回の2019年調査結果と比べ、「知識や技術を身につけた専門家」は10ポイント近く低下しており、「家庭や趣味を大切にマイペースの人生」の突出傾向が強まっている。また、若い課長ほど「様々な会社でのキャリア」「昇進」「独立や起業」などの割合も多い傾向にあった。
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