幸福度が高い人は生産性が30%向上、創造性は3倍
──「幸福度」の調査とは、具体的に何を調べるものなのでしょうか。
太田雄介氏(以下、太田) 正式名称は「幸福度診断Well-BeingCircle」といい、アンケート形式でウェルビーイングを測定するものです。
幸せには大きく分けて、お金・物・社会的地位といった地位財と、健康、心、環境といった非地位財があります。前者は、瞬間的に幸福度が上がりますが、幸せは何ヵ月も持続しません。一方、ウェルビーイング領域と呼ばれる後者は、幸せが持続することが分かっています。
幸福度診断では、このウェルビーイング領域である心身の健康、幸せな心(幸せの4因子[1])、社会や職場の環境の3つと地位財に対し、11項目・34要素のアンケートを行って、幸福度を多角的に視覚化します。
──幸福度を高めていくと、どんな良いことがあるのでしょうか。
太田 最も顕著に現れるのがパフォーマンスですね。幸福度の高い人は、そうではない人と比べて生産性が30%向上し、創造性においては3倍近く向上することが、さまざまな研究から明らかになっています。他にもお客さんから高い評価を受けたり、欠勤が減ったりといった効果も期待できますね。
──従業員満足度やエンゲージメントとはどのような違いがありますか。
太田 従業員満足度が高ければ、離職率は当然下がります。しかし、会社に不満がないからといって、個人のパフォーマンスが必ずしも上がるわけではありません。また、エンゲージメントが高くても、帰属意識の強さと個人の幸せはイコールではありませんよね。その点、幸福度は、一人ひとりが会社や生活でどれくらい幸せを感じているかが指標になるため、「自分事化」がしやすい。つまり、幸福度が高ければ当事者意識で動けるようになり、それが高いパフォーマンスを生み出しているのだと思います。
──なるほど。それでは、ニットさんが幸福度調査をしている理由を教えていただけますか。
西出裕貴氏(以下、西出) 弊社では現在、約400人のフリーランスメンバーが日本をはじめ、海外33ヵ国からオンラインで業務を行っています。我々はそのメンバー一人ひとりが幸せに向かって自分らしい人生を選択してほしいと考えています。
2021年7月に「『働く』を通じて、みんなを幸せに」と新たに企業理念を定めた際に、組織として我々が重視したのが、「働く人自身が幸せかどうか」という視点でした。しかし、従業員満足度やエンゲージメントについて調べてみると、自社の制度や職場環境に重きを置いている調査が多く、フルリモートが前提の我々に合う内容ではなかったのです。そこで幸福度を計測することに決定し、2021年10月にはぴテックの幸福度診断の第1回の計測をスタートしました。同年12月に第2回の計測、2022年6月に第3回の計測を実施しました。今後は半年に1回のペースで進めていきたいと思っています。
注
[1]: 「やってみよう因子(自己実現と成長)」「ありがとう因子(つながりと感謝)」「なんとかなる(前向きと楽観)」の4因子。