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人事労務事件簿 | #28

コロナ禍の整理解雇を無効と判断(東京地裁 令和3年12月21日)

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 経営悪化でこのままでは破産しかねないとき、企業は従業員の整理解雇を進めざるを得ない場合があります。しかし、整理解雇を行うに満たすべき条件や踏むべき手続きがあります。今回紹介するのは、コロナ禍で店を営業できず追い込まれた企業が行った整理解雇において、手続きに不備があるとして解雇無効の判決が出た事案です。万が一のケースですが、どの点が無効の理由になったのかは押さえておくとよいでしょう。

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1. 事件の概要

 本件は、被告(以下「Y社」)との間で期間の定めのない労働契約を締結していた原告(以下「X」)が、令和2年7月20日付の解雇(以下「本件解雇」)は、解雇権を濫用したもので無効であるとし、Y社に対し労働契約に基づき、労働契約上の権利を有する地位にあることの確認を求める等の事案です。

(1)当事者

 Y社は、飲食店の経営等を目的とする株式会社で、令和元年12月当時、全国に約300件の居酒屋をチェーン展開していました。

 これらの居酒屋は、宴会等の多人数のグループを主要顧客として想定していました。

 Xは、平成30年6月1日にY社との間で期間の定めのない労働契約を締結し(以下「本件労働契約」)、Y社経営の「A1有楽町店」「A2有楽町店」および「A3有楽町店」の店長として就労していました。

(2)緊急事態宣言の発出

 令和2年初め頃から国内外で新型コロナウイルス感染症の感染が拡大し、内閣総理大臣は同年4月7日、新型インフルエンザ等対策特別措置法32条1項に墓づき、東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県、大阪府、兵庫県および福岡県の7都府県を対象として緊急事態宣言を発出し、同月16日には対象が全国に拡大されました。

(3)Y社の経営状況および財務状況等

 Y社の令和元年9月1日から令和2年2月29日までの間の合計残高試算表では、この間の売上高は約89億8300万円、売上総利益は約72億2700万円であり、ここから販売費および一般管理費合計約68億8000万円を控除した営業利益は、約3億4700万円でした。

 しかし、新型コロナウイルス感染症の感染拡大による外食自粛の影響を大きく受けたほか、緊急事態宣言の発出もあり、来客が激減して売上が大きく落ち込み、回復の見通しが立たなくなりました。

 Y社の令和元年9月1日から令和2年7月31日までの合計残高試算表では、この間の売上高は約96億4300万円でしたが、令和2年3月1日から同年7月31日までの5ヵ月間に限ると、売上は約6億6000万円でした。一方、販売費および一般管理費は合計約87億800万円であり、上記5ヵ月間に限っても、約18億2800万円かかっています。その結果、約3億4700万円あった営業利益は、その5ヵ月後の同年7月31日の時点ではマイナス約8億8900万円に落ち込みました。

 Y社の第15期(会計年度:令和元年9月1日から令和2年8月31日まで)の決算報告書では、令和2年8月31日時点で、繰越利益剰余金がマイナス約51億1400万円に達し、債務超過状態に陥っていました。また、Y社の第15期の純損失は、大部分の店舗を閉鎖し、特別損失が巨額に上ったこともあり、約53億7400万円にまで膨れ上がりました。

(4)事業の停止

 前記のとおり急速に損失が膨らんだ上、令和2年3月当時、新型コロナウイルス感染症の感染状況がいつ頃落ち着き、飲食店に客足が戻ってくるまでにどれくらいの時間がかかるのかを見通せず、先行きが不透明でした。

 Y社は、「早急に固定費を削減しないと、近い将来にキャッシュがショートするおそれがある」と判断し、同年3月頃、収益性の高い店舗を30店舗程度残し、それ以外の店舗経営から撤退する方針を固めました。

 Y社は、上記方針の下、令和2年4月上旬頃、Xが店長として勤務していた「A1有楽町店」等の営業を停止し、Xら従業員に対し、休業を命じました。

 また、Y社は、その後も営業を停止する対象店舗を拡大していき、同月24日頃には、全国展開していた全ての居酒屋チェーン店の営業を停止しました。さらにその間、各店舗の損益分岐点比率を調べ、これを重要な考慮要素として、存続させる店舗を選別していきました。

 同年5月26日の緊急事態宣言解除後も、新型コロナウイルス感染症の感染拡大への懸念等から飲食店への客足が十分に戻らず、Y社は、このような状態がいつ頃まで続くのかを見通すことができませんでした。そこで、最終的に存続させる店舗を約10店舗にまで絞り込みましたが、その中にXが勤務していた3つの店舗は含まれていませんでした。

(5)本件解雇

 大部分の店舗経営からの撤退に伴い、撤退予定店舗で勤務していた従業員の多くが余剰人員となりました。

 Y社は、これらの従業員の雇用を維持する体力がないと判断し、本部運営のための従業員を除く各店舗で就労中の従業員(正社員)については、存続させる店舗の運営等に必要な最小限の人数を残して解雇することとしました。

 そして、Xを含む解雇対象となった従業員らに対し、令和2年6月18日、下記の解雇予告通知書(以下「本件解雇予告通知書」)を送付しました。Xは、これを受領しました。

解雇事由 整理解雇

根拠規程 就業規則第46条第5号

第46条(解雇)

従業員が下記の各号の一に該当した場合は、解雇する。

⑤事業の縮小または廃止、その他事業の運営上やむを得ない事情により、従業員の減員が必要になった時

解雇日  2020年7月20日付

 Xは、本件解雇前にY社の本社スタッフから電話で「近日中に重要な書類が届くので確認しなさい」という趣旨のことを言われただけで、Y社から本件解雇についてそれ以上の説明を受けることはありませんでした。

(6)その他の経費削減措置等

 Y社は、令和2年7月以降の役員報酬を全額カットし、また、同月までに代表取締役を除く全ての役員が辞任しました。

(7)受任通知

 Y社は、令和2年4月に全店舗の営業を停止した後、店舗を絞って事業再開の機会をうかがっていました。

 しかし、新型コロナウイルス感染症の流行が十分に収まらず、緊急事態宣言やまん延防止等重点措置の発令が繰り返されるなどしたことから、残された店舗の営業を再開するタイミングを見出すことができず、その間に負債が次第に増加していきました。

 Y社は、令和3年11月4日頃、負債総額が80億円以上に達しており、令和4年1月に破産を申し立てる予定である旨が記載された受任通知書を、債権者に送付しました。

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この記事の著者

坂本 直紀(サカモト ナオキ)

人事コンサルタント、特定社会保険労務士、中小企業診断士、坂本直紀社会保険労務士代表社員。就業規則作成・改訂、賃金制度構築、メンタルヘルス・ハラスメント対策社内研修などを実施し、会社および社員の活力と安心のサポートを理念として、コンサルティングを行う。 ホームページに多数の人事労務管理に関する情報、規定例、...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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