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人的資本経営の本質はKPIマネジメント | 第1回

人的資本経営のKPIは4つのステークホルダーの視点で考える

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 当たり前のことではありますが、人的資本経営の核心は「KPIマネジメント」です。しかし、汎用的なKPIをただ運用しているだけだったり、従前の取り組みの中で指標化しやすいものをピックアップして「人的資本経営のKPI」(以下、HR-KPI)として運用したりするだけでは効果は出ません。そこで本連載では、楠本和矢氏(HR Design Lab.代表 兼 博報堂コンサルティング執行役員)がHR-KPIにフォーカスし、コンサルタントの視点で、各企業の人材戦略策定のヒントになる見解を述べていきます。その第1回として今回は、HR-KPIとは何かを改めて理解した上で、その設定・運用で意識するべきステークホルダーの視点を紹介します。

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人的資本経営を進める上であるべき目的とは

 HR-KPIについて語る前に、念のため人的資本経営とは何かを確認し、取り組む目的を考えてみましょう。

 人的資本経営とは、「人材を資本として捉え、その価値を最大限に引き出すことで、中長期的な企業価値向上につなげる経営のあり方」(経済産業省)を指します。これに異を唱える人はいないと思いますが、漠然としているので、各社がその本質的な意味合いを解釈し、実効性のある取り組みにつなげる必要があります。そうしないと、人的資本経営というキーワードが上滑りし、「世の中みんながやるようなので、何となくやっている」という状態となって、成果が出ぬままいつしか消える……という、よくあるパターンに高い確率で陥ってしまいます。

 そもそも、人的資本経営は何のために、誰のためにやるのでしょうか? そこから考えるのが普通ですが、キーワードがここまで先行してしまうと、焦りの中で知らず知らず後回しになってもおかしくありません。すでに人的資本経営の活動を進めていらっしゃる企業も、今一度冷静な視点で振り返ってみましょう。

 株価に少しでも良い影響を与えるため、ESG投資の対象銘柄になればOKでしょうか? また、誰か偉い方からの覚えがめでたければ、それでOKでしょうか? もちろん、それらは副次的なものでしかないに決まっています。その意味合いを捉え、正しく取り組む「目的」を設定しないと、前述のパターンに陥るでしょう。

 伊藤レポートをはじめとして、人的資本経営に取り組む企業の事例がさまざまなところで紹介されていますが、目的がいまいち不明確ということもあり、何となく横並び的です。「ISO30414」の各項目をベースに、文言もほとんどそのまま、網羅的に情報開示しているような例も散見されます。それがその企業固有の課題に即している可能性もありますが、あまりに多くの企業が同じようなテーマを掲げており、疑問に思うことも正直あります。

 例えば、「女性管理職比率」というKPIを設定している企業が多いようですが、どの企業でも共通の目的かというと、どうでしょうか。しかも、ISO30414で例示されているものについて、レベル感が異なるものが並列に並んでおり、愚直に反映しようとすると、自社のKPIの全体像が崩れる恐れもあります。ガイドラインありき、政府筋のレポートで示されている例ありきではなく、貴社のビジネスにとって、何を開示すれば具体的なメリットにつながるのか。こんな状況だからこそ、「目的志向」で考えるべきでしょう

HR-KPIは将来性を評価してもらうための「先行指標」

 単なる義務として「HR-KPIの開示」を捉えるのではなくて、自社にとってメリットを生み出すツールとして位置付けるならば、各ステークホルダーに対して、自社を選んでもらうための「先行指標」 として機能させることが然るべき──といいますか、それしかないと思います。

 企業を前に動かし、将来につなげる原動力は、間違いなく「人」です。もしあなたが、投資家の立場だったら、投資先候補の1社について調べたときに、その企業に優秀な人材が続々と入り、しっかりと定着が図られ、然るべき育成が施され、新しい価値がボトムアップ的に生み出されているとしたらどうでしょう。投資先として魅力を感じますよね。また、転職先として検討している場合でも、それらの情報は貴重でしょう。

【著者】楠本和矢氏(HR Design Lab.代表 兼 博報堂コンサルティング 執行役員)
【著者】楠本和矢氏(HR Design Lab.代表 兼 博報堂コンサルティング 執行役員)
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この記事の著者

楠本 和矢(クスモト カズヤ)

HR Design Lab. 代表 兼 博報堂コンサルティング 執行役員。「マーケティングとHR領域の融合」をテーマに、現場での実践に基づいた様々なHRソリューションを開発提供している。現在は、組織の創発力強化・生産性向上を目的とした取組みに注力。また博報堂グループ内での実績No.1ビジネス研修講師でもある...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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