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インタビュー《人材育成》| リスキリングの必要性

リスキリング推進は手遅れになる前、事業が順調なうちに——General Assembly マイヤー氏

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 多くの日本企業でデジタル人材育成のためのリスキリングが求められる中、デジタル人材の育成プログラムを提供するGeneral Assembly(以下、GA)は、日本市場への参入を本格化しようとしている。今年2月には森ビルと戦略的パートナーシップ契約の締結を発表。森ビル社員や森ビルに入居する企業の社員向けにGAのデジタル人材育成支援を提供する。今回、そのGAでアジア・パシフィック担当マネージングディレクターを務めるライアン・マイヤー氏に、日本国内のリスキリング事情をどう見ているか、またリスキリングを成功させるにはどうすればよいかを尋ねた。

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ライアン・マイヤー氏

ライアン・マイヤー(Ryan Meyer)氏

General Assembly Managing Director, Asia Pacific

GAのアジア太平洋地域の事業を統括。アジアのキャンパスや、各国の戦略的パートナーシップをリード。GA以前は、研究型大学コミュニティ内の学生や卒業生の起業家のためのクラウドファンディングプラットフォームであるAlumniFunderを設立。また、全米の子ども向け認知能力開発企業、Minds-in-Motionを共同設立。大日本印刷で10年近く営業部長を務めた経験もあり、日本の大ファン。ジョージタウン大学で外交の学士号を取得。

定期異動でもモダンなアプローチによるリスキリングが必要

——日本国内におけるリスキリングの取り組みをどう見ていらっしゃいますか。

 大きな課題として、日本国内ではまだリスキリングに対する理解が足りていないように感じています。そのため、まずリスキリングについて正しく理解することがチャレンジだと思います。

 海外でもそうですが、日本では大学で学んだことを仕事でもやり続けるという考えがとても多い。当社が日本国内で展開することでその考えを改め、実は短期間で新しいスキルを身に付けられるということをより理解してもらうことが重要だと考えています。

 最大の敵は、実は「何もしないこと」だと考えています。短時間でリスキリングができるとか、自社の社員が新しいポジションに短時間の研修で就けるということは信じがたいと、とくに役員の方に思われている節があります。

 ただ、日本は1つの会社に務める期間が海外に比べて長いですし、新しいポジションができたときに外から人を取るより社員を育てようと考えます。だからこそ、総合職という形で採用してジェネラリストを育成しており、海外よりも社内異動が多い。このように従業員との関係性構築を重視している日本において、GAのリスキリングサービスをずっと展開したいと思っていました。

——定期的に異動がある総合職は、そのつどリスキリングを求められているともいえるかと思うのですが、先ほど日本国内ではリスキリングの理解が不足しているとおっしゃいました。GAが考えるリスキリングとはどのようなものでしょうか。

 たしかに、ジェネラリストとして働く中ではリスキリングが定期的に発生していると思います。しかし、現代社会はテクノロジーの変革やAIの利用など、変化が大きくなっています。以前なら、営業からマーケティングに異動するときにも自分で勉強できたり、OJTで身に付けたりできたと思うのですが、いまはセールスであればデータ分析ができなければならないですし、あらゆる新しいツールを使えなければなりません。

 ですので、新しい部署に移る・新しいポジションに就くためには、モダンなアプローチによるリスキリングが必要だと考えています。社員に「勉強してね」と任せるよりは、専門家を連れてきていっしょに学んでいくことが大切になのです。リスキリングを進めることによって、競合他社に勝てるようになったり、競争力を高めたりできます。

 こういうとGAでは研修のみを重視しているようですが、OJTも大切にしています。たとえばデータ分析力の習得が課題である場合、GAでは実際の業務データを使って実践的に学ぶことが多いです。これで研修とOJTをいっしょに実施できます。

会社が安全なうちにこそリスクを取ってリスキリングの推進を

——リスキリングを実施するうえで大切なことは何でしょう?

 一番重要なのは、学ぶモチベーションを持っている人を選ぶということです。それに加えて、人事評価が高い人を選抜すること、上長や企業として異動を想定したリスキリングの必要性を理解していることが欠かせません。

——最近では、リスキリングと並行してアンラーン(学習棄却)も必要といわれることがあります。この点はどのようにお考えですか。

 私個人の考えですが、アンラーンはかなり経験を積んできた人に必要なものであって、まだ若い方はアンラーンすることがあまりないでしょう。新しいものへの抵抗感もあまりないでしょうし。どちらかというと、高いポジションの方々にリスキリングをしてもらうに当たっては、アンラーンも重要になってくるかと思います。もちろん、そうした方々がこれまで学んできた知見なども多いので、物事の進め方としてアジャイルなマインドセットを持つことがとても重要だと思っています。とくにデジタルの時代において成功するためには、柔軟なアプローチ、アジャイルなアプローチに抵抗がないことが重要ですから。

——リスキリングを行ったら、スキルを身に付けた従業員が離職してしまうのではないか、という懸念もよくあります。

 離職されるリスクはもちろんあるわけですが、リスキリングされないまま会社に居続けられるのもまたリスクだと考えられます。また、GAが提供するプログラムを受講したあとの離職率を調べたところ、2~3年のうちに離職するのは5~10%でした。どちらかというと、会社が学ばせてくれたということからロイヤルティが高まるケースが非常に多いです。

 人事部の方々が離職を心配される気持ちも理解できますが、研修を受けた後に新しいポジションが見つからないにしても、今いるポジションの中で学んだことを活かす環境があればモチベーションは上がると思います。

——最後に、リスキリングに取り組む人事部に向けてメッセージをお願いします。

 リスキリングを実施しようとしている企業において一番大切にしていただきたいのは、新しいことにチャレンジしようという思いです。そして、その思いに基づいて実際に行動に移すことが重要です。

 人事部は会社経営の核となる重要な組織であると同時に、リスクが取りづらい部署になっているかと思います。しかし、安全な状態の中でリスクを取っていかないと、長期的にみたときには自社に大きな影響を及ぼすリスクになりかねません。まずはパイロットプロジェクトという形で試してみてほしいです。ただし、そのときには必ず効果測定を行ってください。なかなかそこまでできないことも多いと思いますが、利益や営業あるいはダイバーシティなど、何に貢献したかを確認していただきたいと思います。

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この記事の著者

市古 明典(HRzine編集長)(イチゴ アキノリ)

1972年愛知県生まれ。宝飾品会社の社員、辞書専門編集プロダクションの編集者を経て、2000年に株式会社翔泳社に入社。月刊DBマガジン(休刊)、IT系技術書・資格学習書の編集を担当後、2014年4月より開発者向けWebメディア「CodeZine」の編集に参加。その後、2017年7月にエンジニアの人事...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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