スピーカー
新田 彩瑛(にった さえ)氏
株式会社カオナビ アカウント本部 部長
人材・広告系企業の会社に新卒入社。採用広告の新規セールスを経験。2016年カオナビに入社し、インサイドセールスとして潜在顧客へのナーチャリングノウハウを学んだのちフィールドセールスとして、幅広い顧客領域の新規営業を従事、現在はフィールドセールスグループで新規営業のマネジメントを担当。
高まる人材育成の重要性と課題
新田氏はまず、人的資本経営時代に求められる組織開発において重要な3点を挙げた。1つ目は「人材を資本と捉え育成への投資を重視すること」。2つ目は「組織とメンバーの価値観の共有を図ること」。3つ目は「1人ひとりの主体性やエンゲージメントを高めること」だ。
つまり、「人材の主体性を引き出して、人材育成を重点的に行っていくことが、組織開発への第一歩になる」と新田氏。人材中心の組織開発の重要性が高まっているのだ。
しかし、人材育成にまつわる課題は多い。個別最適な育成が求められるようになり、人材育成にかかる業務は増加・複雑化している。育成が業績や生産性の向上にまでつながっていない企業や、研修そのものが目的化してしまう企業も多い。
こうした「人材育成はしたいが、なかなか進められない」というジレンマを解決するため、多くの企業では人材育成の情報を一元化して効率的に活用できる環境整備を進めているという。
個人に最適化した育成を行うためには、多くの人材情報が必要になる。昨今注目の高まっている「Will(実現したいこと)」「Can(できること・強み)」「Must(やるべきこと・役割)」のフレームに沿って情報を整理すると、異動や役職の履歴、給料といった情報は「Must」を理解するために必要な情報である。一方で、人事評価や面談情報は「Can」「Will」にかかわる情報だ。
新田氏は「Must情報はデータで持っていても、WillやCanにまつわる情報は部門に任せて管理している企業や、担当者の頭の中だけで把握している企業が多いのでは」と指摘する。
研修の結果などは人事部が管理していて、従業員本人は把握できていないことも多い。また、キャリアプランの相談や異動希望の情報はExcelや紙だけにメモされているなど、人材情報は分散しがちだ。
こうした実情に対して、重要なのは「組織全体で人材情報を把握すること」だと新田氏は強調する。たとえば、研修のレポートや受講履歴を現場のマネージャーが見ることで、メンバーに新しい業務を割り振りやすくなるだろう。
「人材情報を人事や経営者だけではなく現場にも展開し、組織全体で活用することで、日々の業務を通じて人材育成を行える。これが組織開発の鍵になります」(新田氏)
そのために人材情報を点ではなく面で捉え、しかるべき人が適切な情報を活用できる環境をつくるのが、タレントマネジメントシステム「カオナビ」だ。
カオナビでどのように人材マネジメントを活性化し、組織開発を実現できるのか。新田氏はデモ画面も示しながら解説した。
カオナビで実現する個別最適な人材育成
一般的なカオナビ活用の第1ステップは「いまある情報の一元化」である。データを見える化し、活用するための土台を整えたうえで、最新の人材データを収集していく。そのうえでさらに重要なのが「システムの使い勝手の良さ」だと新田氏。どれだけ分かりやすく簡単にデータを活用できるかがポイントになる。
新田氏は、カオナビの画面を実際に表示しながら、分かりやすさにこだわったUIを紹介した。
カオナビという名のとおり、画面には従業員の顔写真が並ぶ。顔写真をクリックすると、その従業員のデータが集約されたページが表示される。育成の履歴やスキルの情報、これまで携わったプロジェクトなどを把握できる仕組みだ。
こうした従業員データはPDFやExcelといった既存のファイルで格納したり、テキストベースで更新したりできるほか、CSVで一括更新することも可能。また、画面のレイアウトは使いやすいようにカスタマイズできる。
また、従業員ごとの360度評価の結果をグラフィカルに表示できる機能も紹介された。次図のグラフの緑色が自己評価で、黄色と赤が他の評価者からの評価を表している。
「この例でいえば、課題解決のスキルに関して、自身では評価を低くつけているが、周囲からの評価は非常に高い。課題や伸びしろに従業員自身が気づいて、主体的に動く仕組みをつくれます」(新田氏)
こういった人材データの一元化・可視化の次に大事なのが「情報の集約」である。新田氏は、情報集約のための1つの機能として「パルスサーベイ機能」を紹介した。
「今の仕事に対してやりがいを感じているか」「能力が身に付くと感じているか」といった質問に定期的に回答してもらい、従業員のエンゲージメントがどのように移り変わっているのか把握する。
カオナビではパルスサーベイ機能で収集した結果を自動集計し、過去の調査結果からの推移を視覚的に把握することも可能だ。サーベイ項目は自由に設計できるが、カオナビが蓄積した知見をもとにしたテンプレートを用意。最初はこれを参考に設問をつくる企業も多いという。
続いて紹介されたのは「eラーニング機能」。人材データを集めて、従業員ごとの伸ばすべき能力が見えてきたら、何かしらの育成施策を打つ必要がある。その手段の1つとして、eラーニングの活用も効果的だ。
カオナビでは従業員に向け、受講の必須・任意を設定したうえで講座を配信可能。ラーニングライブラリには、スライドや動画を自由に貼り付けられるため、外部の動画やすでに使っているeラーニングシステムの教材も組み合わせて活用できる。
また、適切な人材配置のための「ポジションマッチング機能」も、組織開発においてポイントとなる。これは、単純に従業員を検索するだけでなく、ポジションに必要な条件を設定して検索すると、候補者の条件との合致度を可視化してくれる機能だ。すべての条件は満たしていないが一部にマッチしたというメンバーも表示されるため、伸びしろを見込んだ大抜擢を検討することも可能である。
さらに、特定の条件で絞り込むだけでなく、組織全体の人材をマッピングできる「クロス集計機能」も持つ。たとえば、横軸は「部署」、縦軸は「評価」と設定して、どのグループにどんなメンバーがいるのか把握することで、異動や育成の計画を効率的に立てることができる。
最後に、「集計機能」が紹介された。集めた統計データを活用するだけでなく、昨今では人的資本情報の開示も求められている。データの集計は「人的資本経営のサイクルを回していくうえで非常に重要」と新田氏は言う。
自社の人材データが整理されると、他社と比較したときの自社の現在地を把握できるようになる。カオナビでは、他社の人的資本の開示データをまとめたオープンサイト「人的資本データnavi β版」を開いている。同サイトではたとえば、女性の管理職の割合の平均を一目で把握できる。新田氏は、「自社のデータを可視化しながら、こうした市場の潮流を踏まえて向かうべき方向を定めてほしい」と提言した。
リーディングカンパニーとしてノウハウを提供
カオナビのこうした機能を活用して、実際に効果的な組織開発を行っている事例も紹介された。
紹介された事例企業では、もともと使っていたシステムで人材情報の活用が進まず、カオナビを導入した。スキルや研修の履歴といった人材情報を参照することで、適切なポジション抜擢やロールモデルの策定が可能になっているという。情報の分析にかかる時間・労力も大きく削減された。新田氏は「人材情報を管理するだけではなくしっかり活用して、積極的な組織開発を行っている事例」とたたえる。
カオナビの利用企業者数は現在3600社。日本を代表する大企業から、100名規模以下の中小企業にまで導入されている。業界や規模エリア問わず導入されているので、対応できるニーズや事例が幅広い。
また、人的資本経営において、必要な人材データの収集からグラフィカルな可視化までトータルで対応できるのもカオナビの強みだ。
最後に新田氏は、カオナビによるタレントマネジメント運用のポイントを、次の3点にまとめた。使いやすいシステムを前提としたうえで、タレントマネジメントのノウハウを伝えるサポートも提供。また、高い費用対効果で長く使えるような料金設定を目指しているという。
特にサポートに関して昨今力を入れており、タレントマネジメントの知見を集約した「カオナビキャンパス」をリリースした。人材育成や配置には正解がない。あらゆる選択肢がある中で、他の企業の事例や蓄積されたノウハウを提供することも、カオナビの重要な役割といえる。カオナビキャンパスでは、コミュニティやノウハウをまとめたコンテンツのほか、プロの専門家によるコンサルティング支援も提供する。
「ユーザー様向けにはもちろん、カオナビを導入されていない企業様にもノウハウを提供することに価値があると思っています。本日のセミナーもそうですが、積極的に講演や相談の場を設定しているので、ぜひご参考いただければと思います」(新田氏)