タナベコンサルティングは、全国の企業経営者、役員、経営幹部、経営企画部責任者・担当者などを対象に実施した「2024年度 中堅・中小企業の成長戦略に関するアンケート」の結果を発表した。
投資対象は「人材育成・採用活動」が最多
計画・検討している投資対象について、最も高い割合を占めたのは「人材育成・採用活動」で、中堅企業は71.8%、中小企業は64.4%となった。また、「設備投資(機械・建物など)」も中堅企業で41.7%、中小企業で28.9%となり、関心の高さが見てとれる。これに対し、「研究開発(R&D)」「グリーントランスフォーメーション(GX)投資」「海外進出・国際化」などの項目は比較的低い割合にとどまっている。これらの結果から、中堅・中小企業が自社の成長のために、人材と設備の強化を重視していることが分かった。
DX投資に対する施策、1位は「システム基盤の構築」
DX投資に対する具体的な施策を見ると、「システム基盤の構築」が両者ともに最多で、中堅企業は46件、中小企業は34件となった。
また、中堅企業は「DXビジョンの明確化」(33件)を優先しているのに対し、中小企業は「AIの活用」(30件)に注力しているという違いが明らかとなった。
中堅・中小企業ともに「人材確保・育成」が経営課題
直面している経営課題について、最も顕著な課題は「人材確保・育成」であり、中堅企業で83.5%、中小企業で75.6%が回答した。次いで「売上や利益の向上」(中堅企業65.0%、中小企業54.4%)、「新規事業開拓・市場拡大」(中堅企業53.4%、中小企業45.6%)と続いた。
6割が「人材戦略」が今後の重点成長戦略と回答
今後の成長戦略として重点を置いているテーマについて、「人材戦略(獲得と育成)」が最多となり、中堅企業で65.0%、中小企業で60.0%という結果になった。また、「ビジョン・中期経営計画の策定」(中堅企業33.0%、中小企業33.3%)も上位に位置し、長期的視点の重要性が認識されていることが分かる。
中堅企業の半数以上が「新入社員研修の強化」に注力
取り組んでいる育成施策では、いくつかの項目において顕著な差が見られた。中堅企業では55.3%が「新入社員研修の強化」に注力しており、若手人材の育成に積極的な姿勢が見てとれる。一方、中小企業では同項目が28.9%にとどまっていた。この差は、中堅企業が新卒採用に成功し、若手育成に力を入れている一方で、中小企業が新卒採用に苦戦している現状を示しているという。
「シニア活躍の推進」においては、中小企業(25.6%)が中堅企業(19.4%)を上回っている。中小企業は新卒の人材不足を補うため、経験豊富なシニア層の活用に活路を見いだしていることがうかがえる。
海外市場への参入意向は両者ともに約1割
海外展開やグローバル市場参入などの販路開拓を今後の成長戦略の重点としている企業は、中堅企業で10.7%、中小企業で10.0%にとどまった。同様に、海外進出・国際化への投資を計画・検討している企業も中堅企業で9.7%、中小企業で6.7%と少数派であることが分かった。これらの結果から、多くの中堅・中小企業が外需獲得や海外展開に対して消極的な姿勢を示しており、グローバル市場での成長機会を十分に活用できていない現状がうかがえる。
約4割が「新規事業の展開」で新たなビジネスチャンスを追求
経営基盤の強化を図る中堅・中小企業における投資意向では、新規事業展開とM&Aへのアプローチの差が顕著となった。「新規事業に対する投資」で中堅企業は37.9%、中小企業は40.0%が検討していることが明らかとなった。これは、イノベーションを通じて競争力を向上させようとする意志を反映しているという。
一方、M&Aへの関心は低く、投資対象としているのは中堅企業で16.5%、中小企業で14.4%にとどまった。これらの結果から、企業は自社の持つ資源や能力を重視し、内部成長を優先する傾向が強いことがうかがえる。新たな市場の開拓を求める一方で、外部資源の活用には慎重であり、自前主義的な考え方が強く残っているという。
なお、調査の概要は次のとおり。
- 調査対象:全国の企業経営者、役員、経営幹部、経営企画部責任者・担当者など
- 調査期間:2024年7月1日~12日
- 調査エリア:全国
- 有効回答数:193件
- 従業員規模が100~2000人以下の企業を「中堅企業」、100人未満の企業を「中小企業」として分類
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