ポジションが人を育てる——SmartHRのタレント育成の取り組み
——続いて、「SmartHR Talent Program」(以下、STP)の概要を教えてください。
STPは一言でいうとタレント育成のための研修です。「タレントを開発して将来の経営を担う人をつくる」ことと、「タレント人材の可能性を最大限に引き上げる」ことの2つを目的として、タレント会議で候補に挙がった人材の中から選抜し実施しています。
STPも、VP/Director候補編とManager候補編に分かれています。
VP/Director候補編では6ヵ月間で、経営候補者として必要なスキルやマインドを身に付けてもらいます。複数回のトレーニングでは、各回、予習と復習の課題があるほか、最終的には受講者4〜6名でチームをつくり、テーマに沿ったアウトプットを提出してもらいます。今年のテーマは「ARR(年間経常収益)100億円になる事業の提案」です。また狙いの1つとして、未来の経営陣に横のつながりをつくってもらうことがあり、最後はで1泊2日の合宿をして、最終プレゼンテーションをしてもらう予定です。
他方、Manager候補編では、管理職候補の基礎スキルやマインドの取得・強化をしてもらいます。そのためにリーダーシップ開発、論理的思考、職場活性などのトレーニングクラスを受講しつつ、最後は「自分の職場をどう変えられるか」のアウトプットを個人ごとに提出してもらう予定です。このプログラムに関しては、社内のManager候補のタレントにハードルを上げすぎずに受けてもらえるコンテンツにしたく、今後年数回実施をしていけたらと考えています。
——マネジメント人材としてOSになるようなものを鍛えていくイメージですね。
まさに。スキルは後からいくらでもアドオンできるでしょう。マネジメント人材には、チームで成果を上げられることだけではなく、メンバーの育成ができるところまで求めていきたいのです。
——先ほど、未来の経営陣の横のつながりをつくりたいというお話がありましたが、経営陣のポストには限りがあるので、悪い意味での競争が始まってしまう懸念はありませんでしたか。
前提として、弊社には他人を蹴落としてやろうという文化がありません。ただ、良い意味での競争はあってよいと思っています。それに、会社の規模がいま以上にスケールしない状態であれば競争意識が芽生えるかもしれませんが、弊社の場合はこれからまだまだ大きくなっていきますので、必然的にポジションの数も増えていく。まだその心配をするフェーズではないかなと思っています。
——最後に、タレント育成に関する展望をお聞かせください。
実は、弊社には“心理的安全性”という言葉に対する誤った解釈が蔓延していて、相手の良くない行動に対して正しく指摘できない時期がありました。要するに、「フィードバックができない」というのが弊社の弱みの1つだったんです。しかし、育成にフィードバックは不可欠ですよね。そこで、経営陣も含めた全員を対象としたフィードバック研修を始めていて、今年中に1000名に受けてもらう予定です。伝え手にも受け手にもフィードバックのスキルと心構えが備わった状態をつくり、文化として根付かせたいと考えています。
タレントマネジメントでフォーカスする領域では、今回お話ししたタレント会議やSTPのほかにも、キャリア開発面談や社内公募・異動を掲げており、成長機会をどんどん提供する環境を築きたいと思っています。