(6)不服申し立て
「社会と産業」コースの教員一同は、同年5月15日、Y社総務部総務課に対し、「労働契約法改正への対応に関する『不適切な取扱いについての不服申立て』について」と題する書面を提出しました。主な内容は次のとおりです。
- 再雇用の5年上限に例外がないこと
- 教育研究の継続性を図るうえで、5年を超えた再雇用の必要性があること
- 時間雇用職員に更新上限につき署名させることが、良い慣行を乱し、モチベーションを悪化させて、教育研究業務の遂行に支障が出る可能性があること
本件決定のころから、本件上限規定に対する疑問を持っていたY社の教授であるF(以下「F教授」)は、平成29年3月ごろ、教職員過半数代表に選任され、同月23日ごろ、Y社の総務課人事係に対して、本件上限規定を理由とする雇止めの合理的な理由を問い合わせ、同月28日、Y社からその説明を受けました。
(7)平成29年度におけるX・Y社間の労働契約の締結
Xは、平成29年4月1日、Y社との間で、時給を870円、期間を同日から同30年3月31日までとして、本件労働契約を締結しました。
その際、Y社は、Xに対し、次の記載(以下「不更新条項」)がある雇入通知書を交付し、次年度の更新がない旨を伝えました。
- 雇用の更新:無
- 雇用の更新は、労働者の勤務成績・態度・能力および業務上の必要性により判断する
- 雇用の更新の回数については、学園期間業務職員および時間雇用職員の再雇用の取り扱いについて定めるところによる
Xは、平成29年9月14日ごろ、F教授からのメールを受信し、本件上限規定に対する反対運動のいきさつを知るに至りました。
(8)平成30年1月10日の面談
Xは、平成30年1月10日、C事務長と面談し、本件労働契約を更新したい旨の希望を述べ、C事務長から、本件上限規定を理由に、これを断られました(本件雇止め)。
その際、F教授による時間雇用職員の再雇用に関する運動が広まると思ったと告げられました。
(9)本件訴えに至る経緯等
Xは、平成30年1月ごろ、その所属する労働組合を通して、Y社に対し団体交渉を申し込み、同年2月23日、徳島学習センター内で、Y社との間で団体交渉が行われました。
Y社は、Xの後任者の募集をしており、C事務長は、同年2月中旬ごろ、Xに「Xの雇止めが撤回されたら、3人体制になる」と述べました。
Xは、同年3月20日、Y社との間で、2回目の団体交渉において協議をしたものの、Y社は、同月31日限りで、Xを含む全国の時間雇用職員48名を雇止めにしました。
Y社は、4月1日、徳島学習センターの時間雇用職員1名を新たに雇い入れました。
(10)無期転換権の行使
Xは、本件第1回口頭弁論期日(平成30年10月2日)で陳述した訴状により、本件雇止めが無効であることを前提に、Y社に対し、労契法18条1項に基づく無期転換権を行使しました。