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HRzine Day 2025 Winter セッションレポート | #12

味の素社のキャリア採用奮闘記!「人も組織も不幸にしない採用」を掲げ、現場を巻き込みながら進んだ2年半


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 企業における即戦力人材のニーズが高まる昨今、専門性の高い人材の採用は大企業であっても容易ではない。そんな中、味の素株式会社は「部門協働型」のキャリア採用改革に挑み、2021年度の年間採用数40名弱から2024年度は127名へと急増させた。2月6日開催の「HRzine Day 2025 Winter」で登壇した同社 人事部 人事グループ 採用チーム長の井上泰輔氏は、「人も組織も不幸にしない採用」をスローガンに進めてきた取り組みを紹介。キャリア採用の面接に関わる社員が373人に達するなど、全社を巻き込む改革の内幕を明かした。

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キャリア採用者が急増、1年で373人もの社員が面接に参加

 味の素社におけるキャリア採用は、2021年度以降、大きな変革を遂げてきた。井上氏が2021年に着任した当時、年間のキャリア採用者は40名弱。人事部が主導する形で進められていた。

 「以前は、各部門から『キャリア採用をやりたい』と依頼があれば、その都度『では募集しましょう』と対応していました。しかし、社内で即戦力人材のニーズが急速に高まり、新卒採用と兼任では対応が難しくなっていきました」(井上氏)

井上 泰輔氏

井上 泰輔(いのうえ たいすけ)氏

味の素株式会社 人事部 人事グループ 採用チーム長

2006年に新卒で同社に入社。15年ほど営業部門に在籍し、2021年7月人事部に異動。以来、採用チーム長を務め、新卒採用、キャリア採用を管掌する。

 そこで、2022年に初めてキャリア採用の専任担当を配置し、組織と人事部が共同で採用を進める「部門協働型」採用体制へと移行。仕組みづくりや考え方の整理を進めた結果、2023年度にはキャリア採用数が100名を超え、2024年度は127名を採用し、年々拡大している。

[画像クリックで拡大表示]

 「キャリア採用を本格化させたこの2年半で、選考に関わった候補者は約1万人、面接数は約3000件に上ります。また2024年度は、373人の社員が面接官を務めており、けっして数名の人事部員だけで進めているわけではないことが分かります」(井上氏)

 こうした改革を支えたのは、従来の採用プロセスを抜本的に見直したことだった。

 「当時、社内にはキャリア採用のノウハウがありませんでした。そこで、社外のプロフェッショナルの力を借りることを決断し、キャリア採用の専任者として中澤美紅氏[1]を迎えました。社外から来た人材は、社内のパワーバランスに左右されず、味の素社になかったスピード感で仕事を前に進められる。それが大きな強みでした。

 中澤さんに徹底的に権限を移譲し、細かい判断はすべて任せました。私が関与するのは最終的な決断だけ。前例のない取り組みだからこそ、これまでの社内の常識にとらわれないために、思い切った権限移譲が必要だったのです」(井上氏)

 こうして中澤氏が中心となり、「仕組みの整備」と「考え方の整理」 という2つの柱を軸に、キャリア採用の改革が本格的に始まった。次章では、この2つの視点から、具体的にどのような改革が進められたのか詳しく見ていく。

【仕組みの整備】データベース導入、チーム強化で効率的な採用へ

 井上氏と中澤氏が最初に直面した課題は、キャリア採用を支える基盤の脆弱さだった。

 「私が着任した当時、キャリア採用の面接評価シートはExcelで管理されていました。1次面接官が記入したシートを2次面接官にメールで送る形で、データの管理はOutlookと個人のフォルダ頼み。これは個人情報の管理上も課題があり、また情報が可視化されておらず、適切な選考が難しい状況でした」(井上氏)

 このような状態だったため、誰が面接官でどのような評価を行っていたのかを正確に追えずにいた。たとえば、ある募集職種で不合格になった候補者が別の職種に応募した際、適切な情報管理がなされていなかったため、面接官が過去の選考状況を把握できないケースもあった。また、候補者対応の進捗状況がOutlook上でしか確認できず、採用プロセス全体の可視化が不十分だった。

 これらの課題を解決するために、まず候補者情報データベースを導入した。

 「候補者情報データベースには『HRMOS採用』を導入しました。これにより、情報の一元化が進み、コンプライアンス上のリスクを低減できました。選考プロセスが可視化され、誰がいつどのような面接を行い、どのような評価をしたのかを記録し、管理できるようになりました」(井上氏)

 さらに、候補者とのやり取りもデータベース上に記録されるため、社員から候補者への不適切な対応の防止にもつながった。加えて、業務委託先やエージェントともシームレスに情報を共有できるようになり、採用プロセスの効率化が実現。2022年7月に中澤氏が着任した後、約2ヵ月で導入を完了したという。

 次に取り組んだのが、採用チームの増強だ。

 2021年度当時の採用チームはわずか4人体制。キャリア採用は、「技術系の新卒採用」担当が新卒の繁忙期以外の時期だけ兼任する状態だった。しかし、キャリア採用を企業の成長戦略の一環として本格的に推進するためには、より専門的な体制が必要だった。そのため、採用チームの規模を拡大し、2024年度には11人体制へと強化。このうち4.5人がキャリア採用専任となった。

 また、社外リソースの活用も進めた。現在は業務委託先に、常時5〜6人体制でキャリア採用のオペレーションを支援するチームを組成。候補者とのやり取り、選考日程の調整、書類回収、入社手続き、履歴書の回収など、採用に関する一連の業務を社外に委託することで採用チームの負担を軽減し、スムーズな運用を実現している。

【仕組みの整備】新たな方針「募集要項は採用チームがつくらない」

 もう1つの大きな改革が、「募集要項は採用チームでつくらない」という方針だ。従来は採用チームが主導して募集要項を作成していたが、これを「人材を必要とする部署が、求める要件を明確に言語化する」という方式に変更した。

 「採用チームにはさまざまなバックグラウンドを持つメンバーがいますが、味の素社のすべての事業や専門性を網羅できるわけではありません。たとえば、私の経験は営業部門に限られており、研究開発や財務経理、法務、知的財産などの専門知識は持ち合わせていない。そんな中で、採用チームの目線で募集要項をつくるのは適切ではないと判断しました」(井上氏)

 この方針により、各部署が採用要件を言語化することで、よりマッチ度の高い採用が可能となった。また、採用チームは「伴走役」としてオペレーションを組み、募集部門と連携しながら採用を進める形にシフト。これにより、募集部署の責任感を高めつつ、採用チームは支援に専念する体制が整った。

 次章では、もう1つの重要な柱である「考え方の整理」について詳しく見ていく。

次のページ
【考え方の整理】新卒とキャリア採用の定義を明確化

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この記事の著者

山田 優子(ヤマダ ユウコ)

神奈川出身。新卒で百貨店内の旅行会社に就職。その後、大阪に拠点を移しさまざまな業界・職種を経験してきたが、プロジェクトベースの働き方に魅力を感じて2018年にフリーライターに転向。現在はビジネス系取材記事制作を軸に活動しながら、チームで商品企画・開発にも挑戦中。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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