データ活用で押さえるべき5つのポイント
データが集まると「いろいろやりたい!」となりがちですが、集めるまでが大変で「集めて終わり」となってしまうこともあります。そうならないために、次の5点を意識して実務に落とし込みましょう。
1データ取得は必要最低限に
データは「何のために」を決めてから収集を開始します。たとえば「退職率を下げたい」と考えたとき、勤怠データ・コミュニケーションデータ・生産管理データなど思いつく限り闇雲に集めると沼にはまります。まずは仮説(例:残業時間が多いのでは? コミュニケーション不足では?)を立て、それに関連するデータだけを収集しましょう。取得頻度(毎日か月1回か)も目的に応じて決めます。
2透明性を高める
従業員に「監視されているのでは?」と疑念を抱かせないことが大前提です。データ利用の目的・手段・保存期間を説明し、活用後はどのような効果があったかを共有すると信頼を得やすく、次回以降のデータ収集もスムーズになります。
3データリテラシーとガバナンスも高く
人事データはセンシティブです。データ基盤を構築する部門と活用する部門が分かれることが多いため、セキュリティレベルを定義し、権限設計を行う必要があります。仕組みだけでなく、関係者全員のデータリテラシーを高めることも不可欠です。
4データ品質を保持する
人事・労務・採用・育成などファンクションごとに異なるシステムを用いている場合、更新漏れや項目変更によるフィールドずれが発生しがちです。定期的なデータ更新と欠損チェックを実施し、品質を保ちましょう。これは1で述べた目的を確実に遂行するための土台です。
5AI活用でも意思決定は人
AIによる示唆はあくまで補助です。「退職確率90%」と表示された従業員に即面談を設定するのは早計です。ブラックボックスのままでは適切な手を打てません。最終判断は人が行い、AI結果の背景を検証して活用しましょう。
人事で扱うデータは「意外と少ないのでは」と感じるかもしれませんが、ピープルアナリティクスで扱うデータは実は多種多様です。組織課題の早期発見や施策の最適化を実現するうえで、データをどう駆使し改善サイクルを回すかがポイントになります。量も大切ですが、何より大事なのは目的です。目的に沿った必要十分なデータを、透明性を持って扱うことが、人事への信頼と施策の精度を高めるカギになるでしょう。
また、今回は4種類のデータを紹介しましたが、まずはオペレーショナルデータとセンチメントデータの活用から着手し、段階的にパーソナリティデータやアクティビティデータの活用を検討するのがおすすめです。
次回は、センチメントデータの代表例である「組織サーベイ」について解説します。