トリドールホールディングス(以下、トリドールHD)は9月17日、人の“心”を起点とする「心的資本経営」を始動すると発表した。
「従業員の幸せ」と「お客様の感動」の好循環づくりにより、永続的な人材確保や離職率の改善、求人や教育コストの削減、店舗のある地元への地域貢献など、さまざまな価値を長期的に生み出し、グループ全体で持続的な成長を目指す。
同日に行われたメディア説明会では、トリドールHD 代表取締役社長 兼 CEO 粟田貴也氏が登壇。「働き手不足や原材料費・光熱費の高騰といった厳しい環境の中で、飲食業界は機械化・省人化で対応する傾向にある。一方で、お客様の食の感動体験は人が生み出すものだと当社は考える。トリドールの経営では、従業員とお客様の心が重要であり、資本だ。そのため、心的資本経営という考えに至った」と想いを語った。

「心的資本経営では、従業員の幸せ(ハピネス)が起点となる。従業員が幸せに働ける職場環境が整うことで、自らが考えて行動するという内発的動機が育まれ、顧客に感動をもたらす体験の原動力になる。これが心的資本経営の実践モデルである“ハピカン繁盛サイクル”だ」(粟田氏)

同社では、24年6月から心的資本経営の社内浸透を進め、従業員の離職率が約12.9%減少するなどポジティブな効果が見られはじめたという。
さらに粟田氏は、心的資本経営を推進するための新しい制度を発表。「ハピカンオフィサー制度」では、従来の店長制度を刷新し、店長が担っていたオペレーション業務の一部を他のメンバーへ移管することで、店舗で働く従業員1人ひとりの内発的動機を引き出し、店舗独自の感動体験の創造をリードする役割へとシフトするという。
さらに、店舗で働く従業員の心の満足度を計る独自指標「ハピネススコア」を設計・導入した。24年4月に丸亀製麺で導入した顧客の「感動スコア」とともに、従業員と顧客双方の心の状態を可視化。業績との相関・因果関係を複数の統計手法を用いて明らかにする。
初期分析では、ハピネススコアが高い店舗ほど感動スコアが高く、業績への貢献が明確に現れる傾向が確認されているという。
最後に粟田氏は「時代に逆行するような方法だが、心的資本経営を実践しながらグローバルカンパニーを目指していきたい」と述べ、発表会を締めくくった。
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