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インタビュー《オンボーディング》| 3年以内の新卒離職率が0%のハーゲンダッツ ジャパンに採用~研修の工夫を聞く

「新卒定着率100%」のハーゲンダッツ ジャパン 採用・配属からオンボーディングまで定着の秘訣を探る

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 「新卒社員がすぐに辞めてしまう」──。多くの企業が直面するこの課題に対し、ハーゲンダッツ ジャパン株式会社は例外的な存在だ。同社はここ数年、新卒社員の3年以内の離職率0%という数字を維持している。なぜ、ハーゲンダッツ ジャパンの若手たちは定着し、活躍し続けているのか。本稿では、採用から配属、育成、制度設計に至るまで、高定着率の背景を探るべく、コーポレート本部 部長の倉本亜紀氏に話を伺った。

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平均勤続年数は16.6年、顔が見える少数精鋭組織

——まず、ハーゲンダッツ ジャパンの新卒社員の採用状況や離職率について教えてください。

 新卒採用は毎年1桁台で、2023年度が8名、2024年度が9名、2025年度が9名となっています。3年以内の離職率は、2021年度入社以降は0%です。また、平均勤続年数は新卒入社者で16.6年、全社員でも16.5年と、ほとんど差はありません。

倉本 亜紀氏

倉本 亜紀(くらもと あき)氏

ハーゲンダッツ ジャパン株式会社 コーポレート本部 部長

新卒入社から32年、6部署を歴任し多岐にわたる業務を経験。自身も育休を経験し、会社の変化とともに誰もが働きやすい環境づくりに尽力。会社として初めてのプロパー女性社員で部長職に就任し、現在は人事部長として全員が長く働けるような制度改定に取り組む。

——最近の従業員は、1社で長く働くことを前提にしていない傾向があります。そうした中で、貴社で長く働き続ける社員が多い背景には、どんな理由があるとお考えですか。

 一言でいえば、「全員の顔が見える会社」であることが大きいと思います。社員数が278名(2025年11月時点)と多くないため、部署を越えてほとんどの社員の顔を知っている環境があります。困ったことがあれば、「これ聞いてもよい?」と気軽に相談できる。そういう距離の近さは働くうえでの安心感につながっていると思います。

 また、少数精鋭ゆえに、若手のうちから責任ある仕事を任せる機会も多いです。早い段階で成果を出したり、チームを動かす経験を積んだりすることで、自信ややりがいを感じてもらえるのではないでしょうか。

——若手に裁量を持たせる風土があるのですね。

 ええ。加えて、ジョブローテーションを積極的に行っていることも特徴です。当社には、経営戦略やマーケティング、営業、品質保証、SCM、IT、お客様相談室、コーポレート部門など、300名規模とは思えないほど多様な職種があります。そのため、専門職として1つの領域を極めるだけでなく、部門を横断してさまざまな仕事を経験できる仕組みを整えています。

 転職しなくても社内で新しい業務に挑戦し、異なる視点やスキルを身に付けられる。そんな「社内キャリアの多様性」が、若手社員にとって大きな魅力になっているのではないでしょうか。いろんなことに挑戦したいという気持ちに応えられる環境が、結果として定着につながっていると思います。

新人を全社で支えるオンボーディング体制

——若手が定着する理由として、①顔が見える関係、②若手に裁量を与える文化、③ジョブローテーションによる多様な経験、この3つが見えてきました。次に、これらの風土や制度を支える仕組みについて伺います。まずは、入社後の育成体制から教えてください。

 入社後はまず1〜2週間の新入社員研修を行い、会社の歴史やブランドへの理解、ビジネスマナー、業務の基本を学びます。研修終了後は各部署へ配属され、OJTを中心にフォロー体制を整えています。

 さらに半年後にはフォローアップ研修を実施しています。ここでは、業務知識の共有に加え、各部署のマネージャーが自部署の仕事を紹介する時間を設けています。入社直後には見えづらかった“会社全体のつながり”を知る機会になっており、若手社員が自分のキャリアを考えるきっかけにもなっているのです。

 このフォローアップ研修は、同期が久しぶりに顔を合わせる場でもあり、「またがんばろう」とお互いを励まし合う時間にもなっています。そうしたつながりが、孤立を防ぎ、前向きに働き続ける支えになっていると感じます。

——入社後のフォローアップに加えて、今年(2025年)からは新たなオンボーディング支援を始められたそうですね。

 はい。入社した4月から翌年3月までの1年間を対象に、人事と配属部署が連携しながら新入社員を支援する仕組みを整えました。これまでも部署ごとに育成は行っていましたが、人事との連携が十分でなく、同じような研修が重複してしまうなどの課題があったためです。

 特に地方拠点に配属された社員は、本社や他部署との接点が少なくなりがちです。そこで、人事・配属先・近隣拠点が協力し、意識的に他部署とのコミュニケーションの機会を設けるようにしています。

 この取り組みは、「配属部署だけでなく、会社全体で新人を育てる」という風土を根づかせるための第一歩です。一方で、オンボーディングの支援は基本的に入社1年目を対象としているため、2年目以降をどう継続的に支えるかは今後のテーマです。人事のリソースにも限りがある中で、長期的にフォローできる仕組みづくりを模索しています。

次のページ
“顔が見えるコミュニケーション”は採用段階から始まっている

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この記事の著者

丸毛 透(マルモ トオル)

インタビュー(人物)、ポートレート、商品撮影、料理写真をWeb雑誌中心に活動。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

山田 優子(ヤマダ ユウコ)

神奈川出身。新卒で百貨店内の旅行会社に就職。その後、大阪に拠点を移しさまざまな業界・職種を経験してきたが、プロジェクトベースの働き方に魅力を感じて2018年にフリーライターに転向。現在はビジネス系取材記事制作を軸に活動しながら、チームで商品企画・開発にも挑戦中。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

井上奈美香(HRzine編集部)(イノウエ ナミカ)

1994年宮崎県生まれ。京都女子大学文学部国文学科を2017年に卒業し、株式会社翔泳社に新卒として入社。メディア事業部の広告課に配属される。2020年8月に人事向けWebメディア「HRzine」の立ち上げに参画し、HRzineの営業責任者に従事。2023年4月よりHRzine編集部に所属。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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