船中八策を構成するユニークな取り組み「部長三権分立」「スキルベース」「パーパスジャーニー」
花田氏 船中八策とは、坂本龍馬が新しい国家のあり方について記したとされる8つの基本方針です。8つの方針の中には「大政奉還」や、二院制議会設置、憲法制定などが含まれており、明治政府の基本方針に大きな影響を与えました。
重点プログラムを船中八策と名づけた意味はいくつかあります。
- 人事部門において、明治維新的な大きな変革を進める必要があるという覚悟
- 人事部門や社員に当事者意識を持って取り組んでもらうための親しみやすさ
といったところでしょうか。
松岡 船中八策に含まれる主な施策について教えていただけますか。
花田氏 船中八策の中で最も重要な育成戦略の1つ「部長職の三権分立」の取り組みは、日本経済新聞にも取り上げていただきました。従来の部長職が多忙を極め、部長になりたい人材が減少していたこともあり、部長職を「育成(キャリアデベロップメントマネジャー)」「プロジェクトへのアサインメント(プロジェクトコーディネーションマネジャー)」「部門マネジメント(部長)」の3つに分ける三権分立にチャレンジしています。それぞれの役割の専門性を高め、部長職の魅力を向上させることを目指しています。
松岡 部長職の三権分立を取り上げた記事は、私も大変興味深く拝見しました。また、船中八策の中で、スキルベース組織にも取り組んでおられるとのことですが、どのような内容でしょうか。
花田氏 そうですね、ジョブ型を採用する企業は増えていると思います。当社も管理職ではジョブ型に切り替えました。しかし私は、その先のスキルベース型マネジメントを意識しておく必要があると考えています。
ジョブというのはタスクの積み重ねです。ジョブを構成するタスクの一部は、デジタライゼーションやBPR、BPOなどによってなくなっていきます。このなくなったタスクを考慮せずに、少なくなったジョブのままで人材とマッチングしてしまうと、当然生産効率が落ちてしまう。
ジョブをタスクに分解する一方で、人材もスキルに分解し、スキルベースでタスクとマッチングしなければならない。そういう意味で、スキルベースが重要だと思っています。
将来はジョブ×人材ではなく、タスク×スキルの時代になるでしょう。タスクがしっかりと定義され、それに対応するスキルが明確になることで、人材の価値も変化していくと考えています。
松岡 エンゲージメントなど、社員の意識に働きかける施策についても教えてください。
花田氏 エンゲージメント向上のための取り組みとして、企業のパーパスと自分のパーパスをマッチングさせる「パーパスジャーニー」があります。これは社員1人ひとりが自身のパーパスをタグラインとしてメールの署名欄に記載するなどの活動を通じ、企業と個人の目的意識をつなぐ試みです。企業と個人のパーパスはともに、それぞれの歴史が積み重なったn次方程式のようなもので、それらを因数分解して共通の因数を見いだすとマッチングすることができます。
また、社内の「偉人」と呼ばれるエンジニア・経営陣に対して私がインタビューを行い、その思いを社員全員に発信する「はなさくにっき」という取り組みも行っています。社員が互いの価値観や専門性を理解し、エンゲージメントを高めることを目的としています。

