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2026年2月5日(木)@オンライン

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人的資本経営 Executive Deep Diveレポート | #3

生成AIとAgentic AI(エージェント型AI)がもたらす業務変革とEmbedded HR

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マッキンゼーの事例——“20日が2日”は何が変わったのか

松岡 支援活動が主活動の中に埋め込まれる事例として、マッキンゼー・アンド・カンパニーの案件受け入れプロセスが20日から2日へ短縮されたというお話を紹介されました。

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幸田氏 マイクロソフトの支援を受け、契約書チェックや社内人材プールからのアサイン検討など、受け入れプロセスをAIで半自動化した事例です。20日が2日に短縮されたというのは、単なる効率化を超えるインパクトです。従来は受けられなかったプロジェクトを受けられるようになる可能性もあります。

松岡 参加者から「何が省かれて20日が2日になったのか」という質問もいただきました。

幸田氏 補足すると、センセーショナルな数字なので“すべてが常時その効果か”は慎重に見るべきです。そのうえで大きいのは、人の待ち時間の削減と、情報がサイロ化していて確認できなかったものを一元的に確認できるようにした点です。AIだけでなく、情報の一元化・可視化といったデジタライゼーションの寄与も大きいと聞いています。

2030年の営業組織——AI営業副部長、マシンカスタマー、DSR、RevOpsシステム

松岡 最後に示された「2030年の営業組織像」は、人とAIの協業を具体的に想像できるスライドでした。

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幸田氏 フロントラインでは、AI SDR[1]で営業開拓が進み、営業担当には多様なAIツールが入ってきます。ただ、IT技術者ではない営業担当がそれを使いこなすのは難しいので、1対1で支援する「セールスアシスタントAIエージェント」がつき、適切なタイミングで適切な情報や手段を提示する形になるでしょう。

[1]: 営業の初期プロセス(リードの獲得、ナーチャリング、商談設定など)をAIで自動化する仕組み。

 相手側にも購買を支援するAIが付くので、AI同士のやり取りも起きる。さらに自律購買が進むと、マシンカスタマーが生まれ、対応するマシンセラーも出てきます。

 そして、マネジメント側も変わります。

 このような、AIと人間の協業するハイブリッド営業チームを支えるのは、AIと人間の協働を前提としたマネジメントです。つまり、人間に対してマネジメントするのは人間の営業部長になりますが、多様に動き、機械のスピードで回っていくAIエージェントを管理し、その定量的な状況を人間の営業部長に伝える存在が必要になります。これをAI営業副部長と書いています。こうしたAIと人間が協働するチームが、マネジメントの将来像だと考えています。

松岡 そして、「AIが稼働する場所」として、デジタルチャンネル化のお話もしていただきました。

幸田氏 AIエージェントが動くためには「場」が必要であり、それがデータをため込むチャネルになります。営業での訪問や電話でのやり取りが中心になると、AIが見えない世界に落ちてしまいます。したがって今後の業務は、できる限りデジタルチャンネル上で行うべき、という話になるはずです。

 ここに関連して「デジタルセールスルーム(DSR)」という別の技術領域があります。お客様とのやりとりを1つのプラットフォーム上で統一し、何かをお渡しした履歴を残したり、関係者が増えても情報を一元化しやすくしたりする領域です。これはもともと存在していましたが、AIの時代に改めて注目されると考えています。なぜなら、データがたまるからです。

 加えて、AIエージェントは電話もできますしメールも送れますが、稼働するための場所はデジタルの世界にあるほうがよいのは明らかです。AIエージェントがハイブリッドの営業チームの中で動くのであれば、お客様接点をデジタル空間に持っていったほうがよい、ということになります。そのため、デジタルセールスルームは「データをため込む」ことと「AIエージェントが稼働する」ことの2つの目的において使われていくと考えています。

[画像クリックで拡大表示]

 データがたまってくれば、ピープルアナリティクスと同じようにアナリティクスが必要になります。1つ前の図で「RevOps(レベニューオペレーションズ)システム」と書いているのが、利益を最大化するために最適化を計算していくシステムです。ここでは営業の世界だけで書いていますが、お客様接点は営業だけではなく、ブランディングを担当するマーケティングチームや、常にお客様に追随するカスタマーサクセス(お客様担当チーム)も担っています。

 これらのチームを横串でつなぎ、先ほどのバリューチェーン横断の世界で自律化・自動化が進んでいくことになります。複数の部署で最適を考えるには、「営業がうまくいったか」という基準ではなく、「利益が最大化できるか」という基準で考えるべきです。こういったRevOpsとして利益を最大化する検討ができるシステムが、デジタルセールスルームのようなデジタルチャンネルからのインプットを受けて、マネジメント層に改善案を提示していくことになります。

松岡 「2030年の営業組織のあり方」には、本当にいろいろな可能性を感じます。

 こうした人間とAIが協働する組織や業務プロセスを構築する場合、AIのセールスアシスタントについて「どういうエージェントを、いくつ必要か」を考えていくと、自動的に「人間は何人いるのが最適なのか」という点も含めて最適解を考えることになるのだと思います。ここに、人間とAIエージェントを含む新たな要員管理の可能性を感じます。

 また、幸田さんも触れてくださいましたが、AIエージェントが持つデータは、人間のパフォーマンスを測るうえで非常に貴重なデータになってくると思います。

 私自身、人事コンサルティングの仕事を長年やってきて、いろいろな会社に目標管理制度、コンピテンシー評価制度などを導入してきました。ただ、人間が主観に頼りながら、業務と切り離して行う人事評価にはどうしても限界があると感じてきました。しかし人間とAIの協働という世界観が見えると、現場が中心となりながら、AIエージェントが蓄積したオルタナティブデータを活用して丁寧に人間の評価を行うという、いい意味で少し違う世界に行ける可能性がある、と感じます。

 この意味で、要員管理と業績評価といった領域から、まず人事のあり方がエンベデッドの方向に変わっていくのではないか、というのが私の個人的な観測です。

次のページ
「AIで人が切られる」の実態——代替ではなく協働

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この記事の著者

松岡 佐知(マツオカ サチ)

ピープルアナリティクス&HRテクノロジー協会 上席研究員
野村総合研究所 コンサルティング事業本部 人的資本経営ドメイン シニアプリンシパル

京都大学法学部卒業、London School of Economics and Political Science修士課程修了(MSC in Internationa...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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