“体験”を設計する役割を担うことがこれからの人事の付加価値
人的資本経営における重要指標の1つに「従業員エンゲージメント」がある。従業員エンゲージメントの向上が企業の業績に良い影響を及ぼし、離職率の低下につながることが、さまざまな調査によって明らかとなっているからだ。以下にその一例を挙げる。
- 従業員エンゲージメントが高い企業と低い企業の営業利益率の差……1.5倍[1]
- 従業員エンゲージメントと労働生産性の相関関係……正の相関[2]
- エンゲージメントの“低い”従業員と“高い”従業員の離職率の差……後者のほうが87%低い[3]
米ギャラップの調査(2017年)によると、日本は熱意あふれる社員の割合が6%で、調査対象139ヵ国中132位という結果が出ている。「これは少し古いデータだが、いまもこの傾向は大きく変わらない。従業員エンゲージメントの向上に向けて、すでに何かしらの取り組みを始めている企業は多いと聞くが、日本の従業員エンゲージメントは依然として低い水準にあるようだ」と熊谷氏は語る。
注
[1]: TOWERS WATSON「Global Workforce Study」
[2]: リンクアンドモチベーション「エンゲージメントと企業業績に関する研究」
[3]: Caliper「Enhancing Driver Retention Through Employee Engagement and Job Matching」
熊谷 優作(くまがい ゆうさく)氏
株式会社ギフティ Gift Distribution Corporate Gift Director
北海道大学経済学部を卒業後、2021年度にギフティに新卒入社。デジタルギフトを活用した法人・自治体向けサービス「giftee for Business」で、事業のグロースをミッションに新規プロダクト企画に携わる。2023年1月からは「Corporate Gift」の領域において、ユースケースの探索からプロダクト企画までをリード。現在は、福利厚生プログラムの基盤「giftee Benefit」の推進に注力している。
従業員エンゲージメントを構成する要素には諸説あるが、熊谷氏は「理解と共感」「帰属意識」「貢献意欲」の3つとして整理する。これらを念頭に置きながら、働く中でのあらゆる“体験”を通して継続的に従業員がエンゲージメントを向上させていくことが重要だ。
AIをはじめとするテクノロジーの進展により、人事の定型業務の自動化が進むいまだからこそ、従業員の感情や文脈を捉え、“関係性”や“体験”を設計する役割を担うことが、これからの人事の付加価値となっていくのだ。
とはいえ、「表彰制度や1on1、福利厚生やサーベイ、社内イベントなど、一般的なエンゲージメント向上施策はすでに打ってきた。それにもかかわらず、あまり手応えがない」という場合は、どうすればよいのだろうか。
「問題は施策の“数”ではなく“設計”の不在にある」と指摘する熊谷氏は、「新しい施策を追加し続けることが解決策だと思い込んでいないだろうか。設計のないままPlanとDoを繰り返しているだけでは、現場と人事担当者、双方の疲弊につながる。施策を通じて、『従業員とどのような関係を築きたいのか』『どのような体験を設計して、何を感じてほしいのか』をしっかりと考えることが重要だ」と説いた。
エンゲージメント向上に効果的な従業員体験の3つのポイント
では、エンゲージメントを高めるような従業員体験(Employee Experience。以下、EX)を設計するにあたり、何に気をつけるべきなのだろうか。
EXは、従業員が働く中で得られる、あらゆる“体験”を指す。スキルや報酬のみならず、福利厚生や報酬制度など、さまざまな要素から構成される。したがって、従業員が在籍期間を通じて高い意欲で働き、顧客への提供価値と会社への貢献を最大化できるよう、人事は良質なEXを設計する必要がある。
具体的なEXを設計するうえでは、従業員エンゲージメントの構成要素である「理解と共感」「帰属意識」「貢献意欲」を念頭に置いて、「会社の思いが反映されている」「もらってうれしい、使いたくなる」「パーソナライズ」の3つのポイントを押さえることが重要だ。そうすることで、従業員1人ひとりにパーソナライズされた体験をつくることができ、「会社は自分のことをきちんと見てくれている」という感情を引き出すことにつながる。
そんなEXの設計に有効なのが、ギフティが提供する「Corporate Gift」だ。これは企業が従業員や取引先、顧客などの相手との、関係性の構築や強化を目的として感謝の気持ちを表すために贈るギフトである。ギフティではこの「Corporate Gift」サービスを2022年にリリース。コンビニやカフェなどの実店舗やECサイトなどで利用できる「デジタルギフト」だけでなく、良質なモノや体験のほか、ロゴや社名などを施した企業のオリジナルグッズ「Swag(スワッグ)」などを取り扱っており、さまざまな用途に合わせた幅広いギフト体験を提供している。
では、従業員向けギフトの活用シーンには、どのようなものがあるのか。
人材の流動性の高まりやリモートワークの普及などに伴って、企業が従業員とのつながりを持ち続けることが難しくなってきている昨今。次のようなシーンで補助・インセンティブなどを提供する機会をうまく活用し、パーソナライズされた体験を通じて、「もっとあなたと関係性を深めたい」と意思表示することが重要だ。
- 採用活動/入社……インターン向け・面談謝礼・交通費補助・内定オファー・内定祝い・懇親会・内定式・ウェルカムギフト
- イベント……社員総会・ファミリーデー・懇親会・事業部イベント・食事補助・参加謝礼・組合活動
- 健康経営……ウォーキングイベント・禁煙成功・早期受診・ポイント交換
- 表彰/永年勤続……永年勤続表彰・営業報奨・プロジェクト達成・代理店向けインセンティブ・アルバイト表彰・スタッフ表彰
- お祝い……本人誕生日・家族誕生日・結婚記念日・出産祝い・入学祝い・社長就任・本社移転/建て替え
- 慰労……慰労・福利厚生・ホリデーギフト
- 周年記念……設立記念・創立記念・製品/サービス・上場記念・リブランディング
- 中途/再雇用……リファラル・アルムナイ・内定辞退者・ウェルカムバックギフト
3社の事例+αで見る従業員向けギフト施策
ここからはギフティのプロダクトを活用した、従業員向けギフト施策の事例を3つ紹介する。
株式会社三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)
MUFG発足20周年記念企画の一環として、社内限定ECサイトにて、社員が日頃支えてくれている家族や大切な人への感謝を伝える機会の創出を目的に、全国のコンビニで利用できるコーヒーのドリンクチケット付きメッセージカード「コーヒーギフト付きe感謝状」を販売・配布した。ここで採用された「giftee Thanks Card」は、メッセージ入りのカードにデジタルギフトを添えて贈ることができるソリューションだ。また、MUFGの一部のグループ会社では1人あたり1回分の無料クーポンを配布しており、家族や同僚に感謝の気持ちを贈る動きが広がったという。
株式会社出前館
出前館では年に2回、配達員向けに「giftee Box」300~1000円分を配布した。「giftee Box」とは、付与された金額分のポイント内で、ユーザーが好きな商品を自由に選べるデジタルギフトだ。SNSでは配達員からの好意的な投稿が多数見られたほか、ギフトのラインナップを出前館の加盟店を中心にしたことで、配達員による加盟店の利用促進にもつながった。
大和証券株式会社
永年勤続表彰のギフトとして、毎年400名ほどいるという勤続20年目と30年目の従業員に対し、「giftee Box」8万8000円分を贈っている。従来採用していたカタログギフトの場合、付属のハガキで従業員が申し込んだ情報を、事務局側が手作業で突合する必要があった。しかし、「giftee Box」に切り替えたことで事務効率化やペーパーレス化が進んだと同時に、メッセージ入りのカードに社長の直筆サインを添えられ、手触り感のあるギフト体験を提供できるようになった。
ギフティの「Corporate Gift」サービスでは、福利厚生に特化した福利厚生プログラム基盤「giftee Benefit」も提供している。こちらは従業員ごとにマイページが発行され、デジタルギフトを従業員限定の割引価格で購入したり、各種施設のクーポンを利用したりすることができる。また、誕生日や目標達成時など、何かしらのタイミングに応じたポイント付与もできる機能(オプション)もあるため、企業独自の福利厚生プログラムとしてカスタマイズすることも可能だ。
「人事はEXのデザイナー。記憶に残る体験を生み出すために、ギフティの『Corporate Gift』サービスをご活用いただけたら」と語り、熊谷氏はセッションを締めくくった。

