オンボーディングはなぜブラックボックスになるのか
新入社員が一定以上の成果を出せるようになるまでには、ある程度の期間がかかります。そのため、オンボーディングも一定期間見ていく必要があるものの、配属現場任せで人事は中身をよく分かっていないまま進んでいるということも少なくありません。いわゆる「ブラックボックス」状態です。
なぜこうなるのか、いくつかの理由が思い当たる方もいらっしゃるでしょう。これには大きく3つの理由があると感じています。
1. 配属後のオンボーディングが配属現場任せになってしまう
入社直後の研修は共通の社内ルールや施策を伝えるため、人事が関わることが多いでしょう。一方で、その後の立ち上がり支援は配属現場の上司やチームに委ねられることがほとんどです。そのため、業務の進め方や任せ方、サポート体制はチームごとにばらつきが出ます。うまく回るチームもあれば、手探りでつまずきながら進むチームもあります。その違いが可視化され、共有されることはほとんどありません。
2. 判断基準が暗黙知になりがち
新入社員が「もう一人前である」かどうか、判断する基準が言葉になっていないといったケースも少なくありません。「どんな動き方が期待されているのか、評価されているのか」が分からないと、新しく入った人は周囲の様子や上司の反応を見ながら探っていくしかありません。こうした試行錯誤している様子は外部からは見えづらく、仮にどこかでつまずいていたとしても、すぐには気づきにくいでしょう。
3. オンボーディングプロセスのデータが乏しい
研修直後に理解度や満足度のアンケートを取ることはよくありますが、その後のオンボーディング状況まで継続的に追いかけているケースはあまり多くありません。そのため、オンボーディングプロセスで何が起こっているのかを分析するためのデータが不足します。どういったタイミングで、何に困っているのか、といった情報が蓄積されないため、早期離職や不活性化が起こったとき、振り返りが「うまくいったかいかなかったか」の結果だけに終始してしまうことがあります。
こうした要因が重なり、オンボーディングは「ブラックボックス化」しやすい領域になっています。
オンボーディングで何をモニタリングするか
このようにオンボーディングは「ブラックボックス化」しやすいものの、個人的には「見えにくいこと」そのものよりも、「何を見ればいいのかが決まっていないこと」のほうが課題なのではないかと感じています。
人事ではこれまで、退職率や評価、エンゲージメントといった指標に注目することが多かったと思います。もちろんどれも重要ですが、これらはあくまで結果として現れているものです。そこだけでは、「なぜそうなったのか」まではなかなか見えてきません。
少し視点を変えて、プロセスのほうに目を向けてみます。入社してからの一定期間の中で、どのように業務を理解していくのか、いつ頃から役割に腹落ちしてくるのか、周囲との関係性がどう変わっていくのか。こうした流れを追っていくことで、結果の背景にあるものが少しずつ見えてきます。
そういった意味では、オンボーディングは「施策」というよりも、むしろ継続的に観察していく対象であると捉えたほうがしっくりきます。しかし、すべてを細かく追いかける必要があるわけではありません。ある程度の期間の中で、状態の変化が分かるくらいの粒度で見ていく、という考え方でも十分です。
こうしたプロセスとして意識して見ていくと、「どのあたりでつまずきやすいのか」「どこで認識のズレが起きていそうか」といったポイントが見えてきます。結果だけを見ていたときには気づけない部分です。
では、実際にどういったポイントを見ていけばいいのでしょうか。オンボーディングのプロセスをどう切り分けて、どんなデータで捉えていくのか。次回は、その具体的な考え方について整理していきます。

