実践で培ったエンジニア育成の考え方
皆さん、こんにちは。及川といいます。以前は、米国企業であるマイクロソフト、グーグルにしばらく勤務しておりました。グーグル退職後はQiitaを運営するIncrementsという日本の小さなスタートアップにいて、昨年の6月に独立しました。
私は、ずっと技術のほうで日本のソフトウェア開発を良くしようと努力してきたのですけれども、グーグルやマイクロソフトでエンジニアのマネジメントを行う中で、日本が力を付けるためには、やはり組織力強化が必須であり、それには人材の育成なども関わってくるということが分かってきました。そこで、独立してからは、スタートアップを中心にいろいろな会社で組織作りもお手伝いさせていただいております。
ただし、私は人事畑ではなく、あくまで開発側の人間です。今日も開発側として、エンジニアの育成や採用といわれているものをどう考えればよいのか、実践で経験してきた部分を皆様と共有したいと思います。
組織力の強化に必要な採用のプロセス
いきなりですが、結構重要なところからスタートします。皆様の会社はスタートアップではなくそれなりの規模だと思いますが、もしも皆様がこれから企業を興し、大きくしていくのであれば、最初の開発者・エンジニアを採用することになります。開発者と一緒に創業した場合には、2人目、3人目のエンジニアを育てたり、増やしたりしていく必要があると思います。
この「人を成長させていく (育成)」という軸と「人を増やしていく(採用)」という軸が、組織力の成長につながっていきます。実に当たり前のことなんですけれども、この部分が基本となり、開発組織の強化につながっていきます。この部分すべてを今日は網羅したいと考えているんですが、まずはこの「増員」の採用面から話を始めましょう。
「採用プロセス」というのは、1つのパイプラインとして考えることができます。パイプラインに応募者が流入してきたら、まず書類選考を行い、それからスクリーニング(ふるい掛け)――必要なら電話でフォンスクリーニング――をして面接に進んでもらうことになります。面接は会社によって回数などが決まっていることもあると思いますが、その結果で採用もしくは不採用が決まる。入社後にはトレーニングやオリエンテーションなどのオンボーディング(迎え入れ)プロセスがあり、そして配属されるという流れになると思います。
この書類選考からスクリーニング、面接、採用決定というプロセスで企業は、応募者の評価をずっと行っていることになります。中途採用の場合はOJTという形かもしれませんが、入社後はいわゆるトレーニングで育成するという形になります。
この採用で発生する評価・育成・活用の3つのフローは、実は、採用後の社員に対しても同じように行われます。起点がそれぞれ違うだけです。
先ほど申し上げたように、中途採用で即戦力として期待できる人材であれば、さっそく「活用」から入ることが多いでしょう。その後、活用後の実績をもとに「評価」を行い、どこに成長の余地が残されているのかを見て、その部分を「育成」していく。
何度も言いますが、フローのスタート地点はそれぞれの組織、人材によって異なると思います。しかし、この評価・育成・活用の3つが「サイクル」になった形で、人材育成や活用が回っていくことにはなります。次図を見ていただくと分かるんですけれども、採用プロセスの場合は、サイクルが「評価」からスタートし、オンボーディングの段階に入ると、入社時での「育成」や配属での「活用」というところに回っていくだけ――そう考えることができます。
ということで、まずは採用に一番大事な「評価」から考えてみたいと思います。