その(1)は、こちらから。
全社を挙げていっしょに働きたい人をみんなで探す
――YJCプロジェクトとは「Y(良い人を)J(自分たちで)C(ちゃんと採用する)」の略だと聞きました。小澤さんはその総責任者ですが、実際にどんな内容なのか教えてもらえますか。
その名のとおり、「現場の社員が自分たちと働きたい人を自分たちの手で採用する」という施策です。当社では年に2回、役員も参加する「あした会議[1]」という合宿を行っているのですが、そこから新しい試みとして生まれました。背景には、当社の人事戦略における「21世紀を代表する人材を採用する」というビジョンがあります。YJCプロジェクトではその理念の下で、現場と人事が1つのチームになって採用に取り組みます[2]。
これまでの採用では、まず人事が採用戦略を立ててインターンシップを設計し、すべて決まってから現場に依頼していました。一方、YJCでは現場と人事がチームを組んで、ゼロから採用設計をしていく点がこれまでと大きく異なります。人事からは毎月の予算と採用人数を伝えるのみで、採用戦略や母集団形成まで実際の採用活動は各チームで考えてもらいます。
2017年11月にプロジェクトが立ち上がり、翌12月から本格的に動き出しました。この第1期の陣容は9チーム、250名で、各チームには25~30名程度の人数がいます。チームのトップには戦略や方向性を決める「総監督」がいて、その実践に向けた旗振り役の「キャプテン」、そして残りのメンバーで構成されています。
――第1期は12月スタートと、新卒採用としては押し詰まってからでしたが、手応えはどうでしたか。
かなり手応えは大きかったです。例年より採用のスピードが上がったのはもちろんですが、内定者一人ひとりの人となりを人事だけでなく、現場社員もよくわかった状態になりました。最も大きな成果の一つは、学生との接点(タッチポイント)が数的にもシチュエーション的にも大きく増えたことです。9チームが、それぞれ採用戦略を立てて自分たちの目当ての学生にアプローチしていきますので。
今まで私たち人事担当者が学生と接して、「この人なら一緒に働きたい」と思った学生を現場に紹介してきましたが、YJCではそうしたコンタクトの段階から現場の社員も一緒に動いてくれます。それがタッチポイントの大幅な増加につながったのは、大きな収穫です。
ただし、スタートが12月だったので、第1期(〜2018年6月)だけはそれ以前からコンタクトのあった学生は人事から各チームに引き継ぎました。第2期(2018年5月~)では、9チームを5チームに減らしたり、よりフットワーク軽く採用に取り組める形に改善し、チームで計画を立てて大学の後輩に会いに行ったりなど、原則の則ったアクションを始めてもらいました。
社内総出で考えると人材獲得のためのアイデアも次々に湧いてくる
――YJCで現場の人たちが新卒採用に関わるようになって、どんな変化がありましたか。
いろいろな採用アイデアを試す機会が増えましたね。9チームごとにそれぞれ独自の計画や戦略があるので、どれにするか迷う前にとにかくやってみると、思いもかけなかった成果や発見が生まれてきます。これは人事が単独で考えていた時にはできなかったことです。
その延長で、現場からいろいろなアイデアが出てくるようになりました。例えば、インターン募集を進めるうち、人事だけだとどうしてもネタ切れになってきます。そこに各チームからどんどん採用企画が上がってくる。「こんな方法もあったのか!」という新しい気づきをもらえることが少なくありません。
メンバーはみんな現場の第一線の社員です。マーケティングの専門家やAbemaTVの現場スタッフが、私たちの思いつかないユニークなアイデアを出してくるのを見ると、やはり現場を知らないと出てこない企画があると痛感します。YJCでは良い企画が出てくる以上に、多種多様な企画が出てくることの大切さを気づかされました。
注
[1]: 役員がチームリーダーとなり社員とチームを組んで、サイバーエージェントの“あした”をつくる新規事業案や課題解決案などを提案する1泊2日の合宿。